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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ

背景と目的

 切除不能進行・再発大腸癌治療における無治療期間 (Chemotherapy-free intervals) の評価はOPTIMOX2、COIN、GISCAD試験で検討されたが、未だ検討の余地は残る1-3)。一方、Capecitabine + L-OHP (CAPOX) + Bevacizumab (BV) 療法の適切な治療期間は定まっていない。 本研究では、導入療法としてCAPOX + BV療法を行った後の、維持療法としてのCapecitabine + BV療法の有効性を、経過観察と比較して検討した。

対象と方法

 対象は、初回導入治療としてCAPOX + BV療法 (Capecitabine 1,000mg 1日2回day1-14内服、L-OHP 130mg/m2 iv、BV 7.5mg/kg iv q3w) 6サイクル後にCR、PRもしくはSDと評価され、その後CAPOX+BV療法の再開が可能と考えられる、PS 0-1の切除不能進行・再発大腸癌患者である。その他の適格規準、除外規準は進行癌に対する臨床試験として標準的内容であった。

 対象患者は、経過観察群 (A群) と維持療法群 (B群 : Capecitabine 625mg 1日2回連日内服 + BV 7.5mg/kg iv q3w) に無作為割付され (割付調整因子 : 術後補助化学療法の有無、LDH値、導入療法に対する効果 : CR/PR or SD、PS、施設)、初回増悪時にはCAPOX + BV療法を再開し (無作為化から初回増悪までの期間 : PFS1)、さらに増悪するまで続行することとした (無作為化からの2回目の増悪までの期間 : PFS2)。なお、初回増悪時にCAPOX + BV療法を再開できなかった場合は、PFS1=PFS2となる。

図1

 主要評価項目はPFS2であり、B群のA群に対するHRを0.78 (PFS2 : A群9ヵ月、B群11.5ヵ月に相当) としB群の優越性を検証した。両側α5%、検出力80%により、必要症例数は525例であった。

結果

 558例が登録され、2群間の患者背景はバランスがとれていた。A群では76%、B群では47%の患者でCAPOX + BV療法が再導入されていた。

図2

 PFS1はB群で有意に良好であり (HR=0.44, 95% CI: 0.36-0.53, p<0.00001)、中央値はA群4.1ヵ月、B群8.5ヵ月であった。

図3

 B群での維持療法中止理由は、増悪が77%、毒性が10%、患者拒否が2%、その他が5%であり、維持療法投与サイクル数中央値は9サイクル (範囲 : 1-54サイクル) であった。

 主要評価項目であるPFS2もB群で有意に良好であり (HR=0.81, 95% CI: 0.67-0.98, p=0.028)、中央値はA群10.5ヵ月、B群11.8ヵ月であった。

図4

 CAPOX + BV再導入後の治療中止理由は、A群では増悪65%、毒性14%、患者拒否5%、その他10%であり、B群では増悪74%、毒性14%、患者拒否1%、その他5%であった。

 CAPOX + BV療法を再導入できなかった症例をイベントとせず、初回増悪後のすべての治療における増悪をイベントとした場合の増悪までの期間 (time to second progression of disease: TT2PD) はB群で有意に良好であり (HR=0.67, 95% CI: 0.55-0.81, p<0.00001)、中央値はA群15.0ヵ月、B群19.8ヵ月であった。CAPOX + BV療法を再導入しなかった症例のPFS1以後の治療は、A群では無治療54%、CPT-11投与33%であり、B群では無治療37%、CPT-11投与42%であった。

 両群間で無作為化からのOSに有意な差は認められず (HR=0.87, 95% CI: 0.71-1.06, p=0.156)、中央値はA群18.2ヵ月、B群21.7ヵ月であった。

図5

 全治療期間における4剤の化学療法剤を使用した割合 (49% vs. 49%) および5剤使用割合は同等であった (12% vs. 11%)。

 Grade 3以上の血液毒性は両群間でほぼ同等であり、非血液毒性では高血圧 (18% vs. 24%)、手足症候群 (0% vs. 22%)、神経毒性 (5% vs. 10%) がB群で高い傾向がみられた。

結論

 CAPOX + BV療法6サイクル後のCapecitabine + BV療法による維持療法は、経過観察に比し有意にPFS2を延長した。

コメント

 CAPOX + BV療法後の経過観察に対する維持治療としてのCapecitabine + BV療法の有用性が検証された。OPTIMOX1試験より維持治療の意義は受け入れられ4)、OPTIMOX2試験より無治療期間の設定は否定されている1)。ただし、実臨床ではdrug holiday (投薬しない期間を設ける) が有益であることを時に経験し、一方では維持療法の内容の吟味は十分にされていない。NO16966試験における同レジメのPFSは、早期PD症例を除くと9.3ヵ月より長期になるだろうものの、本試験におけるPFS2も割り付け後からの期間なので、CAPOX + BV療法6サイクルの期間を加えて比較すれば、維持治療の意義を疑う結果ではない。また、discussantがまとめていたが、無治療群との差はOPTIMOX2試験 (2ヵ月) 1)、SAKK試験 (1.8ヵ月)、COIN-B試験 (3.1ヵ月) に比較して、本試験では4.4ヵ月と良い結果であった。これより維持治療としてCapecitabine + BV療法が最も期待できるレジメン候補である。ただし、本試験の維持療法群において毒性中止10%および患者拒否2%であり、grade 3以上の手足症候群22%および末梢神経障害10%に認められたことについては、今後より改良が望まれるところである。個人的な意見としては、維持療法において減量はされたものの連日投与となったCapecitabine投与は、副作用回復目的の休薬期間を設けた方がより良いのではないかと想像する。

 本試験結果が示唆したものは、化学療法開始後に治癒は望めないものの、急な増悪ではなく安定している場合、患者にとってQOLを考えた新たな選択肢ができたということであろう。

(レポート:中島 貴子 監修・コメント:佐藤 温)

Reference
  1. 1) Chibaudel B, et al.: J Clin Oncol. 27(34), 5727-5733, 2009
  2. 2) Adams RA, et al.: Lancet Oncol. 12(7), 642-653, 2011
  3. 3) Labianca R, et al.: Ann Oncol. 22(5), 1236-1242, 2011
  4. 4) Buyse M, et al.: ESMO2006: abst #329O

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