現地座談会

1st-lineにおける比較試験

Discussion

室:それでは、PRIME試験のOS updateTRIBE試験の結果を受けて、1st-lineについてディスカッションをお願いします。

中島:FIRE-3試験では、バイオマーカーでpopulationを選べば、抗EGFR抗体薬の1st-lineからの投与がOSの延長につながることが示唆され、PRIME試験では長期追跡によりOSに有意な延長を認めました。またTRIBE試験でもFOLFOXIRIという最強のcytotoxic agentにBevを併用することで、preliminary ではあるもののOSが良好な傾向にあったことから、やはり初期治療が大切である可能性が示唆されます。もちろん、PSが良好な人を選ぶ必要はあります。

室:そうですね。FIRE-3試験PRIME試験TRIBE試験いずれも初期治療がOSにbenefitを与えた可能性があります。また、TRIBE試験のFOLFOXIRI + BevはBRAF 変異に対する治療として考えられるかもしれません。その一方で、TRIBE試験における肝のR0切除率は、FOLFIRI + Bev群12%に対してFOLFOXIRI + Bev群15%と同等なことが示されました (p=0.327)。これは肝限局型でもFOLFIRI + Bev群28%に対してFOLFIRI + Bev群32% (p=0.823) と同様でした。この点については、どのように考えますか。

大村:CELIM試験3) ではCetuximab併用により良好な肝切除率を示しました。また、FOLFOXIRIはFOLFIRIと比較して肝切除率を上げましたが2)、今回のBev併用では差が認められませんでした。とはいえ、Bevがcytostaticだからこの結果になったとは言い切れず、さらなる検討が必要だと思います。

佐藤 (温):肝切除例では確かに生存期間が延長しますが、集団として考えると、肝切除率の向上がOSの延長に直接結びつくのかは疑問があります。逆に、初期治療に抗EGFR抗体薬併用などintensiveな治療を導入することによりOSが延長し、そのなかに肝切除につながる症例もあるということではないかと考えます。

吉野:佐藤温先生の説をサポートするデータとして、N9741試験4) が挙げられます。FOLFOX群における5年生存率が9.8% (49例) でしたが、そのうち肝切除後の症例はたった5例でした。

室:N9741試験は分子標的薬がない時代に実施されましたが、5年生存例の多くはprogression freeやCRの症例で、化学療法により長期生存が得られるという結果も出ています。

佐藤 (武):FOLFOXIRIというtoxicな治療を行うことで、肝切除が施行しづらくなる可能性はあると思います。したがって、FOLFOXIRIを行った群ではOSが良好でありながら、肝切除率に差はないことは外科医として理解しやすいです。

吉野:化学療法により残肝機能が落ちるということですね。手術可能な程に腫瘍が縮小しても、ICG負荷試験などを行うと手術適応が厳しいという症例が増えるかもしれません。

佐藤 (武):肝切除したことにより、化学療法が施行できなくなる症例も当然みられます。化学療法が強くなることで、肝切除のメリットが薄まっていると感じます。

Lessons from #3620 / #3505
  • KRAS 野生型の1st-lineにおけるFOLFOX4 + Panitumumab はFOLFOX4単独と比較してOSが有意に延長することが示された。[#3620]
  • 1st-lineにおけるFOLFOXIRI + Bev療法は、FOLFIRI + Bev療法に比べてPFS、および奏効率が有意に良好であり、観察期間中央値32ヵ月のデータではOSは良好な傾向にあった。[#3505]
  • FIRE-3の結果も含め初期治療として抗EGFR抗体薬の併用や、FOLFOXIRIといったintensiveなレジメンを施行することがOS延長に寄与することが示唆された。

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