現地座談会

1st-lineにおける比較試験

Discussion

室:それでは、 FIRE-3試験に関してご意見をお願いします。

大村:従来の臨床試験は、PFSでは有意差がみられるものの、OSでは有意差が認められないことが多かったので、逆の結果が報告されたことは非常に興味深いです。本当にdeepness of responseが差をもたらしているのか、CTの解析結果が待たれます。または、2nd-lineにおけるcomplianceやpowerの違いが影響している可能性も考えられます。

佐藤 (温):OSのKaplan-Meier曲線は24ヵ月から大きく開いていきますが、deepness of responseではこのような差がみられるものなのでしょうか。

坂本:胃癌術後補助化学療法のOSのKaplan-Meier曲線などでは、3年目あたりから徐々に開いていくことが多くみられます。初期の治療効果が後に差として現れることも珍しくはありません。

佐藤 (温):術後補助化学療法では、完全治癒した症例により差がつくのだと思いますが、切除不能大腸癌における化学療法では時間の経過とともに進行例のみとなるため、通常、Kaplan-Meier曲線は下降するはずです。

中島:私が一番気になっているのは2nd-line治療についてです。FIRE-3試験ではCetuximab群の2nd-lineはFOLFOX + Bevが多かったと推察されますが、Bev群の2nd-lineの治療内容に関しては、CPT-11 + Cetuximabが比較的多いと聞いており、疑問が残ります。

室:2nd-lineの治療内容の詳細についてはESMO-GIで発表されるようなので、注目したいですね。

佐藤 (温):個人的には、これも導入療法と維持療法の話につながるのではないかと思っています。導入療法として1st-lineにCetuximabが入り、維持療法として2nd-lineにBevを投与したのが好結果に結びついたという印象があります。

小松:ディスカッサントは、仮説の1つとして抗EGFR抗体薬が1st-lineに入ることにより癌のbiologyに影響を及ぼし、増殖速度などが変化する可能性について言及していましたね。

佐藤 (温):FIRE-3試験以外でも抗EGFR抗体薬が1st-lineで使用された試験は、良好な成績を残していますね。

室:確かに、後ほど紹介いただくPEAK試験もupdateとはいえOSに有意差が認められています。

吉野:中島先生が指摘されたように、Cetuximab群は2nd-lineでFOLFOX + Bevが投与された可能性が高いです。FOLFOX + Bevは、2nd-lineのE3200試験においてFOLFOX単独群に対して過去最高のOSのHRを示しており (HR=0.75)、この2nd-lineのpowerがFIRE-3試験の結果に寄与したのではないかと推察されます。一方、Bev群では、Bev治療歴のある2nd-lineとして、強力なレジメンがエビデンス上認められていないことがOSの差につながっているかもしれません。

 また、Cetuximab群では、2nd-line後にCetuximabのre-challengeも可能です。つまり、有害事象等により中断していたCetuximabを再投与できる可能性があるわけです。このように抗EGFR抗体薬をon/offすることが生存に寄与することも考えられます。この2点が大きなポイントになるとでしょう。

坂東:Cetuximab群の観察期間中央値は33.0ヵ月ですが、OS曲線の36ヵ月時点でのpatients at riskは60例のみです。観察期間が短いためにcensored caseが多くなっていると考えられるので、データをupdateする必要があると思います。

室:FIRE-3試験のOSは副次評価項目ですが、OSのupdate、あるいはCALGB80405試験の結果が報告されれば、1st-lineにおける抗EGFR抗体薬の意義が見えてくるのではないかと思います。
また、NRASKRAS 変異について解析されることも決まっており、本年のESMOで報告されると聞いているので、さらなる解析結果が期待されますね。

Lessons from #LBA3506
  • FOLFIRI + BevとFOLFIRI + Cetuximabの直接比較の結果、主要評価項目の奏効率、PFSに有意差はなかったが、OSはCetuximab群が有意に良好であり、特に24ヵ月以降のOS曲線に大きな開きがみられた。
  • Cetuximab併用がOS延長に寄与したと考えられる"deepness of response"については、画像診断によるupdate解析の結果を期待したい。
  • 2nd-lineを含め後治療の詳細な治療内容など今後の報告が待たれる。

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