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座談会

大腸癌に関する注目演題

実臨床関連と今後期待される薬剤

瀧内 では、経口FU製剤と静注5-FUを比較したメタ解析(#4111)に移ります。これは本速報レポートのなかで、アクセス数が3番目に多い人気演題だそうです。

坂本 電子データシステムを用いて、大腸癌を対象とした5-FUベースの化学療法と経口FU製剤との無作為化比較試験の論文を抽出し、最終的に残った20試験について解析したところ、5-FU持続静注レジメンは経口FU製剤を用いたレジメンに比べて、OS、奏効率、PFSが有意に良好であることが示されました。一方、5-FU bolusレジメンと経口FU製剤を用いたレジメンとの比較では、OS、奏効率、PFSはほぼ同等でした。

瀧内 FOLFOXやFOLFIRIのような5-FU持続静注レジメンのほうが5-FU bolusや経口FU製剤を用いたレジメンよりもよさそうだというメタ解析の結果ですね。先生方もそういう印象をお持ちではないかと思います。

大村 5-FU製剤を用いたレジメンとは必ずLVを併用しているレジメンということですし、5-FU持続静注レジメンとはAIOかLV5FU2、あるいはL-OHP等の併用レジメンということです。Modulatorを併用した5-FU持続静注レジメンが勝ったということで、極めて妥当な結果だと思います。

瀧内 近い将来、XELOXなどで転移癌を治療するケースも増えてくると推測されますが、FOLFOXに比べてXELOXの成績は若干劣るので、それを医療現場がどう受け入れていくかが議論になると思います。

大津 実際上、経口FU剤は非劣性が証明されたといっても、比較対象が5-FUのbolusレジメンなので、やはり持続静注レジメンと比較すると、このメタ解析の結果は妥当だと思います。ただ、その差にどのくらい臨床的意義があるかは先生方の判断にもよりますし、FOLFOXよりXELOXのほうが簡便で施行しやすいということもあるので、患者さんの希望も聞きながら、現場がそれぞれ臨床的に判断していくだろうと思います。

佐藤 ただ、このメタ解析では、NO16967試験やML16987試験など、重要な試験がいくつか抜けていたり、celecoxibの影響があるBICC-C試験が取り上げられているので、バイアスを認識して解釈する必要もあるかと思います。アドヒアランスさえ克服できれば、臨床現場で効果に差を感じることはありません。

瀧内 データをどう咀嚼して実臨床に生かすかは、現場が判断すべきですね。どちらかに決めなくてはならないというものでもないと思います。
さて、次のSTEPP試験(#4027)は、完全ヒト型抗EGFR抗体薬であるpanitumumab治療時の皮膚障害に対する予防的治療と対症的治療の比較試験です。

佐藤 予防的治療群(48例)は皮膚保湿剤、日焼け止め、局所ステロイド薬、抗生剤の服用を皮膚毒性が出る前から行い、対症的治療群(47例)は皮膚障害が発生してから治療を開始しました。その結果、Grade2以上の皮膚障害は対症的治療群で29例(62%)であったのに対し、予防的治療群では14例(29%)、Grade3もそれぞれ10例(21%)、3例(6%)と予防的治療群で少ないことがわかりました。QOLも、特に2〜3週目にかけて予防的治療群で顕著に改善しました。
以上のことから、抗EGFR抗体の皮膚障害に予防的治療が有用であることが示されました。また、腫瘍の治療効果は両群間で差はありませんでした。興味深いことに、皮膚障害以外の下痢や好中球減少等の副作用も予防的治療群のほうが少ないということでした。

瀧内 Panitumumabは適切な予防的治療によって皮膚毒性が抑えられ、QOLも良好だという報告ですね。

佐藤 この報告は実臨床に非常に導入しやすい内容だと思います。

大津 我々も予防的治療に近いことを行っていますが、確かにGrade3の皮膚毒性は少ない印象があります。

瀧内 患者指導や薬剤師も含めたチーム医療が極めて重要ですね。当院では、cetuximab治療開始時からの局所ステロイド薬や抗生剤の使用は行っていませんが、少なくとも保湿剤や日焼け止めの使用は必要と考え、患者指導をしています。

大村 皮膚毒性は命にかかわらないので軽視されがちですが、患者さんにとっては重要な問題です。説明の際に皮膚障害の写真をお見せすると、女性は70歳を過ぎた方でも敬遠されますから。予防的治療によって皮膚障害が軽減できることが示されたのは大きいと思いますし、今後、予防的治療が広く浸透することを期待します。

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