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座談会

大腸癌に関する注目演題

直腸癌に対する術前化学放射線療法

瀧内 次は直腸癌の術前化学放射線療法に関するACCORD12試験(#LBA4007)です。直腸癌の補助療法は、わが国と欧米との違いが最も顕著な領域です。

大村 欧米でtotal mesorectal excision(TME)が新しい手術手技として広まっていますが、実はわが国では昔から取り入れていたものです。さて、German CAO/ARO phase III試験で術前の化学放射線療法の有用性が示され、FFCD(Fédération Francophone de Cancérologie Digestive)92.03試験1) によって、局所進行直腸癌に対する術前化学放射線療法が局所再発予防のための標準療法として確立されました。それに基づいて、術前化学放射線療法に対する薬剤追加と線量増加の有用性を検討したのが今回のACCORD12試験です。
本試験では、対象を標準的な術前化学放射線療法(Cape45群: 45Gy/25回/5週+capecitabine800mg/m2 1日2回)と、強化レジメン(Capox50群: 50Gy/25回/5週+capecitabine800mg/m2 1日2回[週5日投与]+L-OHP50mg/m2/週)の2群に無作為に割り付け、治療6週間後に手術を行うこととしました。
FFCD92.03試験のpCRが11%という結果を基とし、それを20%に上げるという仮説から算出した590例がエントリーされました。
有害事象はCape45群に比べてCapox50群で有意に高く、特に下痢や末梢神経障害が高頻度に発現しました。ただし、6週間後の手術可能症例はそれぞれ98%、99%と差はなく、術後合併症の発生率も両群間に差はありませんでした。pCRはCape45群(14%)に比べ、Capox50群(19%)のほうが高い傾向が認められました(p=0.11)。
本試験の限界として、観察期間が短いこと、pCRは試験前に予測していた仮説を証明できなかったことがあげられており、L-OHP併用の有無と照射線量が異なっているため、両群の効果の差がどちらに起因するか判別ができないことも弱点だと締め括られています。

瀧内 米国でも、局所コントロールを重要視して術前放射線療法をよく行っていますが、本邦ではいかがでしょうか。

寺島 日本では化学放射線療法を実施する施設と実施しない施設に、はっきり分かれているのが現状です。化学放射線療法を実施している施設は、全体の10%未満だと思います。

大津 我々も以前は術前放射線療法を行っていたのですが、排便機能などが悪い傾向があったので、今はあまり行っていません。ただ、放射線の照射技術も大分改善しているので、また変わってくると思います。

瀧内 現在、日本ではMEとME+神経温存D3郭清を比較するJCOG0212試験が行われていますね。欧米の標準的治療はFU製剤+放射線療法ですが、今回のACCORD12試験の手応えとしてはいかがですか。

大村 従来の報告では、術前に化学放射線療法を施行すると、局所コントロールは良好だがOSには影響がないという成績がほとんどでした。本試験においてpCRが上がっているのには、放射線量を高めたことと、L-OHPを上乗せしたことの両方が絡んでいます。特にL-OHPを上乗せしたことがどのように出るかは、興味深いと思います。

坂本 直腸癌の治療については、化学放射線療法を積極的に行うべきだという意見のグループがあります。Bevの試験を多数行っているMarc Kozloff先生も、「術前に補助放射線療法を行って腫瘍を縮小する戦略が一番よいだろう」と話していました。最近のJCOにはbevを術前に、FOLFOX、XELOXなどを術後に投与した報告が記載されていました2) 。私自身は、側方郭清と術前化学放射線療法の直接比較を行って、日本の側方郭清が優れていることを証明しない限り、local therapyにとどまってしまうと考えています。

瀧内 日本と欧米では手術手技にも大きな違いがありますし、なかなか結論を出すのが難しいですね。JCOG0212試験で側方郭清を加えるメリットについて結論が出ますので、その結果を見た上で、次のステップを考えたいと思います。

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