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Orlando,FL

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座談会

大腸癌に関する注目演題

術後補助化学療法

瀧内 本日は、2009年の米国臨床腫瘍学会年次集会 Annual Meetingで発表された演題について、先生方にご紹介いただきながら、ディスカッションしていきたいと思います。
Plenary Sessionで注目されたのは、bevacizumab(bev)の術後補助化学療法における有用性を検証したNSABP C-08(#LBA4)です。欧米ではNSABP C-07やMOSAIC試験によってL-OHPの上乗せ効果が証明されていますが、さらにそれらにbevを上乗せしたときの効果を検討するNSABP C-08が米国を中心に行われました。

佐藤 NSABP C-08は2009年 米国臨床腫瘍学会年次集会のcolorectal cancerのなかで最も注目された報告です。Stage II/III結腸癌術後患者2,710例をmFOLFOX6群またはmFOLFOX6+bev群に無作為割り付けしています。すでに2008年 米国臨床腫瘍学会年次集会において安全性評価が報告され、bevを加えることで有害事象が若干増加するものの、忍容性は高いことが示されていました(2008年 米国臨床腫瘍学会年次集会, #4006)。今年は待望の治療成績が発表されました。
各群6ヵ月間治療を行い、以降はmFOLFOX6+bev群のみbev単独投与を1年間続けました(bev投与期間中央値は11.5ヵ月)。残念ながら一次エンドポイントである3年DFSはmFOLFOX6群が75.5%、mFOLFOX6+bev群が77.4%と有意差が認められず、術後補助化学療法においてbevを付加する意義は証明されませんでした。

瀧内 本報告は、対象患者2,710例と大規模な症例解析の結果です。来年も同様なデザインで行われているAVANT試験が報告されると思いますが、その結果は多分揺るがないでしょう。

坂本 1年目までは、mFOLFOX6群の90.7%に対して、mFOLFOX+bev群94.3%とDFSに有意差(P=0.0004)がみられ、非常に期待されていたのですが、negativeな結果に終わってしまいました。演者のWolmark先生は「Bevはもっと長期間続けないと効果が出ないcytostaticな薬剤ではないか」と語っていましたが、司会のCALGBのチェアマンであるRichard L. Schilsky先生が「このようなnegative dataをこれだけ熱意を込めて語る人を見たことがない」と言ったのが印象に残っています。

瀧内 Wolmark先生は「今回の結果はnegativeでも、bevをもっと長期に投与し続けた場合の検証も考えないといけない」とコメントされていました。

寺島 私は本結果より、「Bevを長期間投与することは費用対効果が非常に悪い」という印象を受けます。何らかのマーカーを探索的に研究して、その結果によって治療方針を分けるような方法を考えたほうがよいと思います。

大津 Bevの長期間投与という面から考えると、毒性が問題となる可能性もありますね。

佐藤 Bevは今回の術後補助化学療法としての検討ではnegativeでしたが、進行再発大腸癌の治療薬としては優れた薬剤です。Bevがどのような薬剤であるかが明確になったという意味では、貴重な試験だったと思います。

大村 Bevは兵糧攻めで真のdormancyに導く薬剤ですので、腫瘍細胞をcytostaticな状態に置くことは、進行再発癌の治療においては延命につながります。一方術後補助化学療法では、根治手術後に遺残した微小ながん細胞集団を死滅させることが目的ですから、それにはbevは向いていないことが示されたと思います。また、術後補助化学療法では二次発癌という問題があり、わが国の現在の投与期間は原則6ヵ月です。分子標的治療薬も、安全性とコストを考えれば何年も使い続けるべきではないと思います。

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