論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

3月
2013年

監修:東海中央病院 坂本純一(病院長)

Oxaliplatinベースの化学療法+bevacizumabによる結腸癌の術後補助療法(AVANT試験): 第III相ランダム化比較試験

de Gramont A, et al. Lancet Oncol, 2012 ; 13(12) : 1225-1233

 Bevacizumabはヒト腫瘍において直接的な抗血管新生作用を示し、化学療法との併用によって遠隔転移を有する大腸癌患者の予後が改善したことが報告されている。しかし、ステージII/IIIの結腸癌患者を対象にL-OHPベースの術後補助化学療法+bevacizumabの効果を検討したNSABP C-08試験では、bevacizumab投与中および投与完了後3ヵ月まではその上乗せ効果が認められたが、中央値3年の追跡になるとdisease-free survival(DFS)に有意な改善はみられなかった。
 本試験はステージIIIまたはhigh-riskステージII(ステージはAmerican Joint Cancer Committee/Union Internationale Contre le Cancerの分類による)結腸癌患者の術後補助化学療法におけるbevacizumabの上乗せ効果を検討した前向きな多施設共同3群間並行第III相オープンラベルランダム化試験(AVANT)試験である。
 対象は、治癒的切除を受けた18歳以上のステージIIIまたはhigh-riskステージII結腸癌患者である。明らかな残存腫瘍の存在、術後CEA値が正常上限の1.5倍以上などは不適格とした。
 患者はFOLFOX4療法(A群)、FOLFOX4+bevacizumab療法(B群)、XELOX+bevacizumab療法(C群)のいずれかに1:1:1でランダムに割り付けた。
 A群にはFOLFOX4療法を2週ごとに12コース、B群にはbevacizumab(5 mg/kg)+FOLFOX4を2週ごとに12コース投与後、bevacizumab(7.5 mg/kg)を単剤で3週ごとに8コース、C群にはbevacizumab(7.5 mg/kg)+XELOXを3週ごとに8コース投与後さらにbevacizumab(7.5 mg/kg)単剤を3週ごとに8コース投与した。
 主要評価項目はDFSとし、その他OS、安全性を評価した。データカットオフはDFSが2010年6月30日、OSは2012年6月30日とした。
 2004年12月〜2007年6月に3,451例が登録され、A群1,151例、B群1,155例、C群1,145例に割り付けられた。年齢中央値は各群58歳、男性は656例、587例、625例であった。Bevacizumabの投与期間は中央値でB群10.6ヵ月、C群10.4ヵ月間であった。
 以下にステージIIIの患者(A群955例、B群960例、C群952例)に関する結果を示す。
 ランダム化後1年時点のDFSをみると、A群に対するHRはB群0.63(95%CI 0.45-0.89)、C群0.61(0.43-0.86)とbevacizumabを含むレジメン群が優れていたが、中央値48ヵ月の追跡期間でみると、A群に対するHRはB群1.17(95%CI 0.98-1.39、p=0.07)、C群1.07(0.90-1.28、p=0.44)で、bevacizumabの上乗せ効果は認められなかった。3年DFSはA群76%、B群73%、C群75%で、A群237例(25%)、B群280例(29%)、C群253例(27%)に再発、新たな結腸癌発症、死亡といったDFS関連イベントがみられた。イベントの大半は再発であった。
 再発または新たな結腸癌発症から死亡までの期間の中央値はA群27.0ヵ月、B群23.8ヵ月、C群22.4ヵ月で、A群に対するHRはB群1.23(0.95-1.60、p=0.1208)、C群1.10(0.84-1.44、p=0.4892)であった。
 OSの追跡期間中央値は60ヵ月で、A群161例(17%)、B群202例(21%)、C群182例(19%)が死亡した。5年生存率はA群85%、B群81%、C群82%、A群に対するHRはB群1.27(1.03-1.57、p=0.02)、C群1.15(0.93-1.42、p=0.21)と、B群がやや不良であることが示された。死因の大半は病勢進行であった。
 DFSの予後因子を調べるため年齢、性別、人種、T分類、リンパ節検索数、転移リンパ節数によるサブグループ解析を行ったが、どの因子についてもbevacizumabの上乗せ効果を認めることはできなかった。
 安全性の解析は評価可能3,406例(A群1,126例、B群1,145例、C群1,135例)について行った。グレード3〜5の副作用はA群824例(73%)、B群869例(76%)、C群733例(65%)でみられた。そのうち発現頻度が高かったのは好中球減少(A群42%、B群36%、C群7%)、下痢(10%、12%、16%)、末梢神経障害(14%、14%、12%)、高血圧(1%、11%、10%)であった。重篤な副作用はA群の20%に対しB群26%、C群25%とbevacizumabを含むレジメン群で高頻度にみられた。治療関連死はA群1例、B群2例、C群5例であった。治療開始後60日以内の早期死亡は2例、4例、6例と少なかった。
 ステージIIIの結腸癌患者に対する術後補助療法におけるbevacizumabの役割を検討したAVANT試験では、bevacizumabの追加によってDFSが延長することはなく、bevacizumabを併用した群ではむしろ病勢進行による再発や死亡が多かった。Bevacizumabは、治癒的切除を受けたステージIIIの結腸患者の術後補助療法として用いるべきではないであろう。

監訳者コメント

根治切除後ステージIII大腸癌補助化学療法でFOLFOX4やXELOXへのbevacizumab上乗せ効果見られず

 本試験は、ステージII/IIIの結腸癌患者を対象に術後補助療法としてFOLFOX4 やXELOXにbevacizumabを併用した場合の上乗せ効果を検討した第III相無作為化比較試験である。2011 ASCO GIにおいてAVANT試験グループを代表してA. de Gramont氏からDFSに関してbevacizumab上乗せ効果が認められなかったことが発表されていたが、今回OSとともにその詳細が論文報告された。
 結果はFOLFOX4やXELOXに対するbevacizumabの上乗せ効果は認められなかっただけでなくbevacizumabを併用した群ではむしろ病勢進行による再発や死亡が多かったとされ、血管新生抑制効果がearly-stage diseaseでは得られにくいことやrebound effectの影響などの関連が考察されている。残念ながら、遠隔転移を有する大腸癌患者の予後が改善するにもかかわらず補助療法で効果が確かめられなかった薬剤はCPT-11、cetuximabについでbevacizumab が3剤目となった。
 また本試験は試験デザインがFOLFOX4療法(A群)、FOLFOX4+bevacizumab療法(B群)、XELOX+bevacizumab療法(C群)に1:1:1でランダムに割り付けされておりFOLFOX4とXELOXを直接比較できるため興味深い。3年DFS(B群73%、C群75%)OS・5年生存率(B群81%、C群82%)に大差はなく、安全性で注目された好中球減少はグレード3以上がB群36%、C群7%であり、XELOXで少ないとの結果であった。

監訳・コメント:広島市立安佐市民病院 吉満 政義(外科・部長)

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