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StageV結腸癌に対する術後補助化学療法としてのcapecitabine+oxaliplatinと5-FU/LVの比較

Capecitabine plus oxaliplatin compared with fluorouracil and folinic acid as adjuvant therapy for stage III colon cancer.
Haller DG, Tabernero J, Maroun J, de Braud F, Price T, Van Cutsem E, Hill M, Gilberg F,
Rittweger K, Schmoll HJ.
J Clin Oncol. 2011; 29(11): 1465-1471.

背景bolus 5-FU(fluorouracil)/LV(leucovorin)は、1990年代末までにStageIII結腸癌に対する標準的な術後補助化学療法として確立された。また、infusional 5-FU/LVならびに5-FUの経口プロドラッグ製剤であるcapecitabineは、bolus 5-FU/LVと同等の予後改善効果を示すとともに、毒性軽減に優れることが明らかにされた。
 さらに最近、StageII/III結腸癌に対する術後補助化学療法として、oxaliplatinはbolusまたはinfusional 5-FU/LVとの併用によって良好な予後改善が得られることがいくつかの大規模臨床試験から証明されている。
 そこで今回、StageIII結腸癌患者を対象に、術後補助化学療法としてのcapecitabine+oxaliplatin(XELOX)とbolus 5-FU/LVとの有効性および安全性を比較検討した多施設オープンラベル無作為化第III相試験であるNO16968より、有効性データに関する1次解析を実施した。
対象と方法2003年4月〜2004年10月に29ヵ国226施設で登録された18歳以上のStageIII(T1-4/N1-2/M0)結腸癌患者1,886例をXELOX群(944例)またはbolus 5-FU/LV群(942例)に無作為に割り付けた(ITT解析集団)。投与法は、XELOX群ではcapecitabine 1,000mg/m2を第1日目〜14日目に1日2回経口投与するとともに、oxaliplatin 130mg/m2を第1日目に2時間静注した(1サイクル3週間とし8サイクル実施)。一方、bolus 5-FU/LV群では2種類の投与法を用い、①5-FU(425mg/m2)/LV(20 mg/m2)を第1日目〜5日目に投与(1サイクル4週間とし6サイクル実施)(Mayo Clinicレジメン[664例])、②5-FU(500mg/m2)/LV(500 mg/m2)を第1日目に投与(1サイクル8週間とし4サイクル実施)(Roswell Parkレジメン[278例])した。
 1次エンドポイントは無病生存(DFS)、2次エンドポイントは無再発生存(RFS)、全生存(OS)および安全性とした。
結果有効性に関する1次解析は2009年4月30日までに得られたデータを用いた。観察期間中央値はDFSおよびRFSについては55ヵ月、OSについては57ヵ月となった。
 XELOX群、bolus 5-FU/LV群において、再発、新規結腸癌の発症または死亡がそれぞれ295例(31.3%)および353例(37.5%)に認められた。XELOX群、bolus 5-FU/LV群における3年DFS率はそれぞれ70.9%および66.5%となり、XELOX群ではbolus 5-FU/LV群と比較し20%の有意なリスク低下が認められた(ハザード比[HR]0.80[95%信頼区間(CI) 0.69〜0.93]、p=0.0045)。また、4年DFS率はそれぞれ68.4%および62.3%、5年DFS率はそれぞれ66.1%および59.8%となり、3年以降も群間差は維持された、あるいは差が開いたことが確認された。なお、XELOX群におけるDFSは、用量の増減や投与の中断もしくは遅延による影響は認められなかった。
 XELOX群、bolus 5-FU/LV群における3年RFS率はそれぞれ72.1%および67.5%となり、XELOX群で22%の有意なリスク低下が認められた(HR 0.78[95%CI 0.67〜0.92]、p=0.0024)。また、4年RFS率はそれぞれ69.7%および63.3%、5年RFS率はそれぞれ67.8%および60.9%となった。なお、XELOX群、bolus 5-FU/LV群における5年OS率はそれぞれ77.6%および74.2%となり、リスク低下に群間差は認められなかった(HR 0.87[95%CI 0.72〜1.05]、p=0.1486)。
 すべての変数を補正した多変量解析により、DFSとOSは上記結果と一致することが確認された。
結論以上より、StageIII結腸癌患者に対する術後補助化学療法として、capecitabineとoxaliplatinを併用するレジメン(XELOX療法)はDFSを有意に改善することが示された。OSに関してはさらなる追跡調査の実施によって明確にする必要があるが、本レジメンはこうした患者における治療選択肢の候補の1つになり得ると示唆される。

監訳者コメント

 切除不能大腸癌に有効な薬剤は5種類あるが、補助化学療法で有効性が示されているのは5-FUとoxaliplatinのみである。5-FUとoxaliplatinの組み合わせは、FOLFOX4、FLOX、XELOXともにFU単独に優ったことから、oxaliplatinの効果に対する信頼性は高いと考えられる。これらの中で経口剤を含むレジメンはXELOXのみであり、外科医が多くの補助化学療法を行っている現状では、簡便なレジメンが選択肢に増えることは喜ばしい。
 最近は再発後の治療成績が向上したため、以前のように5年でOSを評価することができなくなっている。本試験はOSに有意差はないが、DFSやOSの曲線が経過とともに開いているので、今後追跡を続けることでOSに対する効果を検証できると予想される。
 サブ解析で結論は導けないことを承知の上で、oxaliplatinの上乗せ効果が、FOLFOXでは65歳未満、N2で強く、XELOXでは65歳以上と以下で変わらず、N1で強いことなどを参考に使い分ける方法もある。XELOXではdose intensityが80%未満でも効果は保たれている。XELOXは有害事象の程度に応じて適切に(積極的に)減量することが重要と考えられる。XELOXの国内での適応は現時点で切除不能のみであるが、早期に補助化学療法に承認されることを期待する。

監訳・コメント:国立病院機構大阪医療センター 三嶋 秀行(外来化学療法室長・外科医長)

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