FIRE-3試験は、
KRAS exon 2野生型の切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-lineとしてのFOLFIRI + CetuximabとFOLFIRI + Bevacizumabを比較する無作為化試験である。ITT集団 (592例) では、主要評価項目である奏効率はCetuximab群62%、Bevacizumab群58%であり (p=0.183)、PFS中央値もそれぞれ10.0ヵ月、10.3ヵ月と両群に有意差を認めなかったが (p=0.547)、OS中央値はCetuximab群28.7ヵ月、Bevacizumab群25.0ヵ月とCetuximab群で有意な延長を認めた (HR=0.77, p=0.017)。
事前に計画されていたバイオマーカー解析では、最終的に475例 (80.2%) で
RAS 評価が可能であり、400例が
RAS 野生型であった。
KRAS exon 2野生型における遺伝子変異は、
KRAS exon 3 (codon 59, 61) が4.0%、exon 4 (codon 117, 146) が5.9%、
NRAS exon 2 (codon 12, 13) が3.6%、exon 3 (codon 59, 61) が2.1%、exon 4 (codon 117, 146) が0.2%であった。最終的
RAS 野生型におけるOS中央値は、Cetuximab群33.1ヵ月、Bevacizumab群25.0ヵ月であり、Cetuximab群で8.1ヵ月の延長を認めた (HR=0.697, 95% CI: 0.54-0.90, p=0.0059)
(図1)。
本解析では、独立の画像評価により、奏効、早期腫瘍縮小 (early tumor shrinkage: ETS)、奏効の深さ (depth of response: DpR) の検討を行った。
図1
独立画像評価は、治療割り付け情報のマスク下に中央判定で行われた。奏効の判定にはRECIST ver. 1.1を用い、ETSは初回CT検査 (6週) で腫瘍径がベースラインに比べ20%以上縮小した場合、DpRはベースラインからの最大腫瘍縮小率と定義した。ITT集団におけるRECIST評価可能例は493例 (83%、Cetuximab群236例、Bevacizumab群257例)、最終的RAS 野生型集団のCT評価可能例は330例 (83%、157例、173例) であった。
独立画像評価における奏効率は、
KRAS exon 2野生型 (66.5 vs. 55.6%, OR=1.58, 95% CI: 1.10-2.28, p=0.016) および最終的
RAS 野生型 (72.0 vs. 56.1%, OR=2.01, 95% CI: 1.27-3.19, p=0.003) のいずれもCetuximab群が有意に良好であった。
ETSにおいても、
KRAS exon 2野生型 (62.3 vs. 47.9%, OR=1.80, 95% CI: 1.26-2.58, p=0.0015) および最終的
RAS 野生型 (68.2 vs. 49.1%, OR=2.22, 95% CI: 1.41-3.47, p=0.0005) のいずれもCetuximab群が有意に良好であった。なお、両群ともに、ETS達成例は非達成例に比べPFSおよびOSが有意に良好であった
(表)。
表
また、DpRにおいても、
KRAS exon 2野生型 (-44.1 vs. -32.9%, p=0.0003) および最終的
RAS 野生型 (-48.9 vs. -32.3%, p<0.0001) のいずれもCetuximab群が有意に良好であり、DpRはPFSやOSと有意に相関することが示された (両側Bravais Pearson検定)。最終的
RAS 野生型のwaterfall plot解析では、全般にCetuximab群の奏効が深く
(図2)、非PD例の腫瘍径中央値は、経時的に一貫してCetuximab群で小さい傾向が認められた
(図3)。
図2
図3
FOLFIRIに対するCetuximabの上乗せ効果を検討したCRYSTAL試験では、ETSは治療の感度を予測し、DpRの予測因子である可能性があり、DpRはOSの予測因子であることが示唆されている。今回のFIRE-3試験の独立画像評価の結果からも、ETSは治療の感度を予測し、DpRはOSの予測因子である可能性が示唆された
(図4)。
図4
独立画像評価では、FOLFIRI + Cetuximab群はFOLFIRI + Bevacizumab群に比べ奏効率が有意に高く、ETSおよびDpRも優れていた。これら奏効に関連する良好なアウトカムが、FIRE-3試験で認められたFOLFIRI + CetuximabのOSが良好であった理由を部分的に説明する可能性がある。