CALGB80405試験では、
KRAS exon 2 (codon 12, 13) 野生型の切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-lineにおけるFOLFIRIまたはmFOLFOX6との併用療法としてBevacizumab (Bev) とCetuximab (Cmab) を比較検討した結果、OSおよびPFSで差がないことが示された。一方、
KRAS や
NRAS の他のcodon変異の活性化も、EGFR阻害剤への抵抗性に関連することが報告されている。そこで、
RAS 野生型における治療効果を評価するために探索的解析を行った。
RAS 変異の解析にはBEAMing法
1, 2)を用い、
KRAS exon 2 (codon 12, 13)、exon 3 (codon 59, 61)、exon 4 (codon 117, 146)、
NRAS exon 2 (codon 12, 13)、exon 3 (codon 59, 61)、exon 4 (codon 117, 146) のミスセンス変異をスクリーニングした。なお、臨床に使用される可能性のある他の検査法に則り、カットオフ値は1%とした。
KRAS exon 2野生型の1,137例のうち
RAS の評価が可能であったのは670例 (59%) であり、実際に解析が行われた621例のうち95例 (15.3%) で新たな
RAS 変異が同定された
(図1)。
図1
RAS 評価可能集団におけるBev群、Cmab群の患者背景は、ほぼ同等であった。また、
RAS 評価可能集団における有効性は、
KRAS exon 2野生型集団とほぼ同様であり、奏効率はCmab群で有意に良好であったものの (p<0.01)、PFS、OSでは有意差を認めなかった。
RAS 野生型における解析では、奏効率はBev群53.8%、Cmab群68.6%とCmab群で有意に良好であった (p<0.01)。一方、PFS中央値はBev群11.3ヵ月、Cmab群11.4ヵ月であり、有意差を認めなかった (HR=1.1, 95% CI: 0.9-1.3, p=0.31)
(図2)。同様に、OS中央値はBev群31.2ヵ月、Cmab群32.0ヵ月と両群間に有意差を認めなかった (HR=0.9, 95% CI: 0.7-1.1, p=0.40)
(図3)。なお、
KRAS exon 2野生型で他の
RAS のいずれかが変異型の症例では、Bev群22.3ヵ月、Cmab群28.7ヵ月とCmab群で良好な傾向であった (HR=0.74, 95% CI: 0.4-1.1, p=0.21)。
図2
図3
RAS 野生型における化学療法別解析では、mFOLFOX6ではOS中央値がBev群29.0ヵ月、Cmab群32.5ヵ月であり、Cmab群で良好な傾向であるものの有意差は認めなかった (HR=0.86, 95% CI: 0.6-1.1, p=0.2)
(図4)。また、FOLFIRIではOS中央値がBev群35.2ヵ月、Cmab群32.0ヵ月であり、有意差は認めなかった (HR=1.1, 95% CI: 0.7-1.6, p=0.7)
(図5)。
図4
図5
切除不能進行・再発大腸癌の新規診断例はすべて
RAS 検査を受けるべきであると考えられる。OSは30ヵ月以上が新たな標準であり、1st-lineは副作用の可能性を含め治療目標を反映すべきである。今後、dose intensity、治療期間、腫瘍部位、腫瘍縮小、2nd-line治療、抗EGFR抗体薬や抗VEGF抗体薬の新たなバイオマーカーなどのデータが集積されれば、
FIRE-3試験と本試験との違いについて理解が進む可能性がある。
1) Dressman D, et al.: Proc Natl Acad Sci USA. 100(15): 8817-8822, 2003 [
PubMed]
2) Diehi F, et al.: Gastroenterology. 135(2): 489-498, 2008 [
PubMed]