演題速報レポート

背景

 REAL2試験においてEpirubicin + Oxaliplatin + Capecitabine (EOC) 療法の有効性が報告され1)、英国における標準治療の1つとなっている。EGFRの過剰発現は食道・胃腺癌の30-90%で認められ、予後不良とされている2, 3)REAL3試験は、進行食道・胃腺癌を対象にEOC療法に対するPanitumumabの上乗せ効果を検証した第II/III相試験である。

対象と方法

 化学療法未施行で、局所進行または転移を有する食道・胃腺癌症例を対象とし、EOC群またはmEOC + P群に無作為に割り付けた。

  1. ・EOC群 : Epirubicin 50mg/m2, Oxaliplatin 130mg/m2, Capecitabine 1,250mg/m2/day
  2. ・mEOC + P群 : Epirubicin 50mg/m2, Oxaliplatin 100mg/m2, Capecitabine 1,000mg/m2/day, Panitumumab 9mg/kg

 主要評価項目はOS (overall survival)、副次評価項目は奏効率、PFS (progression-free survival)、有害事象、QOL、KRAS 遺伝子変異の影響とし、さらに探索的バイオマーカー解析を行うこととした。2011年10月に独立データモニタリング委員会によって試験の登録中止が決定され、全症例がEOC療法に変更された。治療中の症例はこの段階で打ち切りとされた。

結果

 553例が登録され (EOC群 : 275例、mEOC + P群 : 278例)、観察期間中央値はそれぞれ5.0ヵ月、5.2ヵ月であった。OS中央値はEOC群の11.3ヵ月に対しmEOC + P群では8.8ヵ月であり、有意に劣る結果であった (HR=1.37, 95%CI: 1.07-1.76, p=0.013) (図1)

図1 OS

 PFSの中央値はEOC群の7.4ヵ月に対し、mEOC + P群では6.0ヵ月 (HR=1.22, 95% CI: 0.98-1.52, p=0.068) (図2)、奏効率はEOC群の42%に対し、mEOC + P群では46%であった (OR=1.16, 95%CI: 0.81-1.57, p=0.467) (表1)

図2 PFS
表1 奏効率

 mEOC + P群に高発現したgrade 3/4の有害事象としては、下痢 (mEOC + P群=17.3% vs. EOC群=11.1%, p=0.041)、粘膜炎 (5.1% vs. 0%, p<0.001)、皮疹 (10.3% vs. 0.7%)、低マグネシウム血症 (4.7% vs. 0.4%) であったが、好中球数減少 (14.0% vs. 29.0%, p<0.001)、発熱性好中球減少症 (7.4% vs. 12.2%, p=0.029)、血小板数減少 (1.1% vs. 4.1%)、末梢神経障害 (1.1% vs. 6.7%, p=0.001) は低かった。
 また、mEOC + P群において、grade 1-3の皮疹を生じた症例 (n=209, 77%) では皮疹を生じなかった症例 (n=63, 23%) と比較してOSが有意に延長していた (10.2ヵ月 vs. 4.3ヵ月, p<0.001) (図3)。PFS、奏効率についても同様の傾向が示された。

図3 mEOC + P群における皮疹とOSの関係

 既報4)の通り、第II相における200例のバイオマーカー検索では、Panitumumab併用に関連する効果予測因子は確認できなかった。OSに対する多変量解析では、KRAS 変異 (HR=2.1, 95% CI: 1.10-4.05, p=0.025) とPIK3CA変異 (HR=3.2, 95% CI: 1.01-10.40, p=0.048) が負の効果予測因子であった。

結論

 EOC療法に対するPanitumumabの併用は食道・胃腺癌を対象とした本試験においてOSを悪化させた。これはmEOC + PレジメンのOxaliplatinとCapecitabineが低用量であることに起因している可能性が示唆された。

コメント

 胃癌においてEGFRは予後因子であるため、抗EGFR抗体薬による治療には大きな期待が寄せられていただけに非常に残念な結果であった。しかし結論でも述べられているように、mEOC + Pレジメンにおいて化学療法の用量が低いことが不良なOSの主因であり、Panitumumabの効果を否定するものではないと思われた。さらに、大腸癌では抗EGFR抗体薬とOxaliplatin、Capecitabineの相性が悪いことも知られており、必ずしもEOCがPanitumumabのbest partnerであるとは考えられない。可能であれば、アジアを中心としてS-1 +αとの併用で胃癌に対するPanitumumabの効果を確認したいものである。

(レポート: 結城 敏志 監修・コメント: 寺島 雅典)

Reference
  1. 1) Cunningham D, et al.: N Engl J Med. 358(1): 36-46, 2008 [PubMed]
  2. 2) Yonemura Y, et al.: Oncology. 46(3): 158-161, 1989 [PubMed]
  3. 3) Kim JS, et al.: Br J Cancer. 100(5): 732-738, 2009 [PubMed]
  4. 4) Chau I, et al.: 2011 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #4131 [学会レポート]
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