演題速報レポート American Society of Clinical Oncology 48th Annual Meeting 2012 June 1st-5th at CHICAGO,ILLINOIS

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レポーター体験記

岩本 慈能 先生 関西医科大学附属枚方病院 消化器外科 診療講師

岩本 慈能 先生

 2012年1月にサンフランシスコで開催された消化器癌シンポジウムでは進行・再発大腸癌に対するRegorafenibの有効性が証明されAfliberceptの二次治療での上乗せ効果が証明されるなど、今年は大腸癌化学療法の新しい治療薬の登場を予感させる年でありました。そして2012年 米国臨床腫瘍学会年次集会ではBevacizumab単独による維持療法にErlotinibの上乗せが証明され [#LBA3500]、さらに長年のclinical questionであったBBP (Bevacizumab beyond progression) がTML試験 [#CRA3503]で証明され、まさに大変革の米国臨床腫瘍学会年次集会でありました。思い返せばここ数年、positiveな発表が少なく大腸癌化学療法の進歩もやや停滞していたような感がありましたが、今年の米国臨床腫瘍学会年次集会はとてもexcitingでありました。ただ、治療薬が増えると治療の組み立てが複雑になり、治療の難易度も上がるのでしっかり勉強しなければならないのですが……

 私がGI-cancer netのレポートを担当させていただくのは今年で2回目となりますが、改めて感じるのは腫瘍内科医の先生方の知識の豊かさと治療に対する熱意でした。ただ敬服するばかりであります。そして今年はいつもいらっしゃるはずの先生がおられません。この埋められない空虚なものをどうすればよいのでしょうか……

 最後になりましたが、ご指導・コメント執筆をいただきました大村先生、スタッフに厚く御礼申し上げます。

中島 貴子 先生 聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学 准教授

中島 貴子 先生

 実は昨年までの米国臨床腫瘍学会年次集会では、自分の専門領域である消化器のセッションより、他領域のセッションに参加して勉強していることが多かったのです。なぜなら消化器領域における発表については、このGI cancer-netでほぼオンタイムでかなり詳細な情報が提供されていたからです。しかし今年度、初めてこのレポートを担当させていただき、改めてじっくり消化器の演題に取り組んでみましたところ、専門領域であるからこそのレポートの難しさを痛感しました。意見を言いたい点、伝えたいことがたくさんありすぎて、あやうく長文の感想文になってしまうところでしたが、監修の先生方、編集の方々に多方面で助けられ、発表内容を正確にフェアに伝えるというレポーターとしてのモットーをかろうじて保つことができたのではないかと今、感じています。

 さて、今年度はTML試験 [#CRA3503]、日本からのWJOG4007試験 [#4002]GRID試験 [#LBA10008] など、明日からの実臨床を変え得る臨床試験結果が発表され、非常に刺激的でありました。これらの試験結果を我々とともに心待ちにしていた瀧内比呂也先生が逝去され、今年のサイトにお姿がないことは本当に悲しいことでありましたが、瀧内先生の本サイトへの高い期待を裏切ることのないように、という強い思いが我々の心にあったせいか、今年もレベルの高い内容に仕上がっているのではないかと思います。監修の先生方(佐藤先生、本当にありがとうございました)、レポーターの先生方、スタッフの方々、至らない自分を助けてくださり、本当にありがとうございました。

山﨑 健太郎 先生 静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 医長

山﨑 健太郎 先生

 今年の米国臨床腫瘍学会年次集会における消化器領域のトピックスは、TML試験 [#CRA3503] によってBevacizumabの継続投与による生存期間延長効果が示されたことだったと思います。長年の臨床的疑問に結論が出たことは非常に喜ばしく、今後、実地臨床にも反映されていくものと思われます。新規薬剤に関しては2012年 消化器癌シンポジウムでも報告されたように大腸癌標準治療不応・不耐例に対してRegorafenibの有用性が報告されましたが [#3502]、期待されていたPerifosineは有用性を示せず残念な結果でした [#LBA3501]。また、バイオマーカーに関してもKRAS 遺伝子以外に臨床導入が期待できる効果予測因子の報告はありませんでした。来年の米国臨床腫瘍学会年次集会では抗EGFR抗体薬とBevacizumabの直接比較の試験結果の報告や、新規バイオマーカーに関する報告を期待したいです。

 速報レポートは担当の報告を隅から隅まで読み込み、内容を早く正確に提供しなければならず非常にプレッシャーがかかりますが、自分の不得手な分野の勉強にもなり、大変有意義な時間を過ごすことができました。今年も監修の先生方や編集者の方々に夜中までご協力いただき、どうにか完成することができました。この場をお借りして感謝申し上げます。

結城 敏志 先生 北海道大学 消化器内科 助教

結城 敏志 先生

 昨年に引き続き、本サイトで速報演題レポートを担当させていただきました。お声をかけていただいたときには昨年の辛い日々がフラッシュバックされましたが、自分にとっても実りの多いお仕事でしたので、喜んでお引き受けさせていただきました。昨年は「手探り」な状態で悪戦苦闘した毎日だったと記憶していますが、2年目の今年は幾分「コツ」を覚えて、少しは要領よくレポートをこなせるようになったのではないかと思います。

 今年の米国臨床腫瘍学会年次集会では残念ながら消化器癌領域からPlenary sessionに採択された演題はありませんでしたが、進行再発大腸癌に対するBevacizumab不応後の継続投与 (Bevacizumab beyond progression:BBP) の意義を検証したTML試験 [#CRA3503] やImatinib / Sunitinib不応のGISTを対象としてRegorafenibの有用性を検証したGRID試験 [#LBA10008] など優越性を示した報告もいくつかみられました。特に前者に関しては明確なEBMの存在しないなか、日常臨床ではBBPが多用されていましたが、今回の報告により明確な生存延長を患者さんに示すことができるようになり、大腸癌に対する治療戦略として大きな意味合いをもつ報告だったと思います。このように日常臨床を変革させる演題に生で触れることができるのも米国臨床腫瘍学会年次集会の魅力だと再認識しました。

 この「速報演題レポート」を担当させていただくようになり、学会期間中の疲労度は比べものにならないくらい増しましたが、それ以上に会期中に主要演題を消化できるようになりました。監修の先生方、同じレポーターの先生方には速報レポートの内容や解釈などについてご指導をいただき、さらに理解度が増したのだと思います。また、現地スタッフの皆様にはさまざまな点でサポートしていただきました。この場を借りて心より御礼申し上げます。来年も米国臨床腫瘍学会年次集会で再会できるのを楽しみにしています。