Tumor Locationの話題

1st-lineの薬剤治療反応性は原発巣の左右部位によって異なるか

結城:大腸癌では以前から原発部位による腫瘍の生物学的特性の違いが指摘されていました。切除不能大腸癌の1st-lineにおいて、化学療法±抗EGFR抗体薬の臨床試験や、化学療法併用下で抗EGFR抗体薬と抗VEGF抗体薬を比較した臨床試験が行われ、それらのサブグループ解析から原発部位によって予後や薬剤治療反応性に違いがあることが示されるようになりました。
 例えば、FOLFIRI vs FOLFIRI+CetuximabのCRYSTAL試験のRAS野生型解析では、OS中央値は左側部位で21.7ヵ月vs. 28.7ヵ月(HR=0.65; logrank test,p=0.002)、右側部位で15.0ヵ月vs. 18.5ヵ月(HR=1.08; logrank test,p=0.76)となり、Cetuximab併用によるOSの有意な延長は左側部位でのみ認められました(図1)。PRIME試験のRAS野生型解析でも同様の結果が得られています。FOLFOX vs FOLFOX+Panitumumabの比較において、OS中央値は左側部位で23.6ヵ月vs. 30.3ヵ月、右側部位で15.4ヵ月vs. 11.1ヵ月となり、CRYSTAL試験と同様に、左側部位では約7ヵ月ものOS中央値延長が認められました(図2)。まとめると、これら2つの試験では、原発部位が左側の場合は抗EGFR抗体薬の有意な生存延長効果が認められ、右側の場合は認められませんでした。
 次に、抗EGFR抗体薬と抗VEGF抗体薬の比較試験について述べます。まず、化学療法(FOLFIRI/FOLFOX)併用下で、BevacizumabとCetuximabを比較したCALBG/SWOG80405試験のRAS野生型患者526例を対象とした解析では、OS中央値はBevacizumab群31.2ヵ月、Cetuximab群32.0ヵ月となり、全体として有意な群間差は認められませんでした1)
 ところが526例のなかから原発巣が横行結腸の35例と原発部位不明の17例を除いた474例を対象として、原発巣の部位別に解析してみると、原発部位が左側の症例では、Bevacizumab群 vs Cetuximab群のOS中央値は32.6ヵ月 vs 39.3ヵ月となり(HR=0.77; logrank test, p=0.04)、Cetuximab群のBevacizumab群に対する有意なOS延長が認められたのです(図3)。
 さらに、化学療法(FOLFIRI)併用下でBevacizumabとCetuximabを比較したFIRE-3試験の解析でも、原発部位が左側の症例ではBevacizumab群、Cetuximab群のOS中央値はそれぞれ28.0ヵ月、38.3ヵ月となり、やはりCetuximab群のBevacizumab群に対する有意なOS延長が認められました(HR=0.63; logrank test, p=0.02)(図42)
 以上で説明した試験の結果をフォレストプロットにしたものが図5ですが、原発部位が左側の場合は、化学療法+抗EGFR抗体薬の方が、化学療法単独に比べて、あるいは化学療法+Bevacizumabに比べて、有意にOSを延長することが再現性をもって示されていることがわかります。これらの結果を受けて、NCCNガイドライン2017では、1st-lineにおける抗EGFR抗体薬の使用はRAS野生型かつ原発部位が左側である症例に推奨されています。

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