患者さんへの説明

瀧内:MOSAICにおけるFOLFOX 4群の4年DFSは、LV5FU2群と比べて6.6%の差がありましたが、それについては医師側と患者側のそれぞれの立場によって違った解釈があると思うのですが。

三嶋:患者さんごとの意識の違いも大きいですね。抗癌剤自体が怖いから使いたくないという人から、海外の最先端の治療を受けたいという人まで幅があるので、その両サイドの気持ちを汲んで対応できなければいけません。順番に治療法のリストを提示し、患者さんが望む治療を選択できるようにすることが大事だと思います。

瀧内:患者さんへの説明には、どれくらい時間をかけられますか。

三嶋:実はあまり時間をかけられない状況です。患者さんにNCCNと日本のガイドラインを両方提示し、ここは日本でできる、ここはできないと説明します。補助化学療法でも最高の治療(FOLFOX)を求める人もいますし、患者さんによって治療に多少の違いは出てきます。LV/5-FUとLV/UFTの比較試験の説明をして、試験に入るか、もしくは試験に入らず自分で選ぶということになります。現在はLV/5-FUとLV/UFTが半々で、1〜2割が無治療という状況です。

貞廣:私も説明までは三嶋先生と同じですが、ほとんどの患者さんがLV/UFTの経口治療を選ばれます。

瀧内:坂本先生は、どのような治療をされますか。

坂本:切除はできたがリンパ節に転移があった場合なら、個人的にはFOLFIRIを3ヵ月行い、その後にFOLFOXもしくはFLOXを3〜4ヵ月、グレード2の毒性が出るまで行って終了します。術後補助化学療法の場合は完全治癒が期待でき、化学療法を行っても行わなくても20人のうち19人に関する結果は変わりません。実際は20人に1人だけが化学療法の恩恵により再発を免れるというわけですが、そんな状態であっても最善の結果を求めたいと思う医師や患者さんがいるわけです。FOLFIRIを先に行う理由は、日本ではFOLFIRIのほうがより厳しい治療だと考えているからです。

大津:私は、基本的には三嶋先生と同じですが、違うのはステージIIIの症例全てには術後補助化学療法を行っていないことです。我々の施設での手術単独でのステージIIIaの5年生存率が80%台後半とかなり良好なので、IIIb患者を中心に行っています。

三嶋:当センターでも、ステージIIIaの5年生存率は78%程度です。この程度だと統計学的に補助化学療法は不要だと思います。しかし、多くの一般病院ではステージIIIaの5年生存率は70〜75%くらいだと思います。原因はリンパ節の検索が10個未満、術前にthin sliceで肝肺のCT評価を行っていない、などさまざまなことが考えられます。補助化学療法はその施設のIIIa、IIIbの5年生存率によって決めるべきで、一部の専門施設を除き、ステージIIIaから補助化学療法を行うべきだと思います。

ステージ II への投与、術後の投与期間

瀧内:三嶋先生は、ステージIIには補助化学療法は行わないのですね。

三嶋:原則行いません。ガイドラインに「再発高リスクステージII結腸癌に術後補助療法を行う場合もある」(表)と記されていて、粘液癌の低分化タイプは腹膜播種が多いのでステージIIでも行いますが、低分化N0は再発しにくいので行いません。患者さんが強く希望する場合には行います。

貞廣:ステージ分類は世界共通であり、ステージIIIでエビデンスがある現状ではステージIIIの全例に術後化学療法行うべきだと考えて、患者さんにもそう説明しています。一方、ステージIIに関しては意見が分かれているという話をし、「データの半分はポジティブ、半分はネガティブですがどうしますか」と尋ね、患者さんに決めてもらいます。データによっては、死亡率の低下が20〜30%という報告もあると率直に話します。

瀧内:通常、6ヵ月という投与期間を選択されることが多いですが、先生の施設ではどうですか。

貞廣:投与期間に関するエビデンスがない現状ですね。当院では経口薬を使用しており、N・SAS-CCやTAC-CRではUFTの1年あるいは2年投与の成績が手術単独群と比べて有意に良好であったことから、1〜2年としています。2005年の秋から、がん集学的治療研究財団でLV/UFT 6ヵ月投与と18ヵ月投与の比較試験を開始したので、その結果をみればLV/UFTの投与期間に関する1つのエビデンスが得られるはずです。

瀧内:坂本先生はステージIIにどう対応すべきだと思われますか。

坂本:LV/5-FU と同じ効果が証明されているLV/UFTをお勧めし、投与期間は6ヵ月間に限定せず、患者さんが「もう治療を続けなくてもよい」とおっしゃるまで行います。

大津:私は、高リスク患者であってもステージIIは術後補助化学療法の対象としていません。術後補助化学療法を行わなくても5年生存率が9割を超えるので行いません。

坂本:18qやマイクロサテライトインスタビリティに絡んでステージIIの治療法を分けて考えるべきだというような動きがありますが、それについてはどのようにお考えですか。

瀧内:絞り込みを模索しているなかの1つだと思いますが、私自身はステージIIには投与しないというスタンスです。よほど強いエビデンスが出ない限り、実臨床では必要ないというのが私の意見です。

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