副作用・安全対策の巻 外来化学療法編 第5回 副作用・安全対策の巻
3. 院内の安全対策

情報の共有

佐藤(昭和大) 院内の安全対策においては、情報共有も重要です。情報共有はリスクマネジメントのほか、診療の効率化や継続的ケアを実現するうえでも有用です。電子カルテの導入施設では、各職種が電子カルテに目を通すことで、ある程度情報共有が図れますが、導入されていない施設ではどうされていますか。

室先生 室(愛知がん) 入院から外来への移行時には、入院中の患者情報を1枚の用紙にまとめてカルテに挟み込み、外来看護師に伝わるようにしています。それ以外の全体の情報共有は、月に1回、化学療法チーム会議という、職域横断的なメンバーで構成されたチームによるミーティングの場を通して行っています。

瀧内(大阪医大) 当院でも紙ベースで看護師、薬剤師が病棟からの情報を外来に伝えています。薬剤アレルギーなどは薬剤師がきちんとチェックし、オーダリングシステムに入力しています。

佐藤 外来化学療法を開始した患者さんについて、例えば「不安が強い」「理解度が低い」といった情報は、どのようにして共有されているのですか。

瀧内 そうした問題を抱えている患者さんについては、週1回行っている外来化学療法室のカンファレンスで現場から声をあげてもらい、ディスカッションします。場合によっては、がん相談支援センターや臨床心理士に依頼することもあります。

野村(杏林大・薬) 当院の外来化学療法室では、投与計画書とチェックシートなどを含めた患者ファイルをつくっており、そこに看護師の記録や薬剤師の処方、指導内容、電話相談なども記載しています。看護師はこのファイルに基づいてケアをしており、治療が終わったらカルテに挟み込んでおきます。副作用などに関する電話は、日中は外来化学療法室にかかってくるので、このファイルを見ながら対応します。

 我々の施設では、レジメンごとにチェックシートをつくっています。

野村 当院でも最初はそのようにしていたのですが、種類が増えるとわかりにくくなり、間違ったシートを選んでしまうこともあったので、現在は全部統一しています。

金井(聖路加・看) 当院では、杏林大学と同様のデータをexcelで作表し、看護記録として電子カルテの中に入れています。前回治療時の状態を時系列で見られるように、その日のデータを1列に入力します。データ入力は、外来終了後に看護師がまとめて行います。入院・外来ともにこの表を使い、1人の患者さんの治療がすべてわかるようになっており、医師も活用してくれています。

佐藤 杏林の患者ファイルは医師も見るのですか。患者ファイルをカルテと一緒に医師に渡したりはしないのですか。

野村 各科に回してしまうと回収が難しくなり、必要なときに見られなくなる可能性があるため、医師には渡していません。ただ、皆さんのお話をうかがって、医師に治療前に渡すのもよい方法だと思いました。「次回に何をしてほしい」というメッセージも伝えられますから。

スタッフ教育

佐藤 薬剤師や看護師も、がんの病理や病期、ステージ分類など、がん医療の基本を学んだほうがよいというのは、皆さんも同意されることと思います。各職種が自分の専門だけでなく、がん医療全般を知っていることが理想です。各職種の技能水準を高めるためのスタッフ教育は、どのようにされていますか。

金井先生 金井 オンコロジーセンターの拡充に伴って、スタッフの数を増やす必要性が生じ、看護師の教育をどうすべきかが一番の問題になっています。ベテランの看護師だけで行うわけにもいきません。そのため、化学療法の投与に関する勉強会は看護師同士で行い、疾患や薬剤の勉強会では、医師や薬剤師に講師を務めてもらっています。病院全体では、専門看護師(CNS)などを中心に、看護師が企画した勉強会やセクションごとの勉強会も行っています。これまでは、看護師のほうから、会ごとに薬剤師や医師に講師をお願いしており、勉強会の企画を立てるのにもずいぶん苦労をしていました。現在は、薬剤に関しては薬剤部から病院全体に発信するようになりましたし、新薬の治療に関しては医師や製薬会社の方からの働きかけがあります。

篠崎(県立広島) 当院も一般病院ですが、スタッフのうち、がんに興味のある者やがん患者の医療に従事する者を対象に、年5回の「がん医療従事者研修会」や、年6回の「がん化学療法と看護研修会」を開催しています。これらの研修会は、近隣の在宅療養支援診療所のスタッフやかかりつけ医なども対象にしています。

佐藤 我々の施設では、血液内科の病棟から、若手看護師が交代で1ヵ月ずつ研修生として来て、外来化学療法の基本を学んでいます。薬剤部では、どのような教育システムをとっておられますか。

野村 当院は大学病院で、がん治療に興味をもっている薬剤師ばかりではありませんし、逆にがん治療にかかわりたくてもできない薬剤師もいるので、難しいところです。

 確かに、がんセンターでは勉強する場は多いと思います。当院では、がん専門薬剤師の研修コースやがん化学療法看護認定看護師の育成コースがあります。我々も講義を行いますので、その際に、院内の薬剤師や看護師にも参加してもらっています。

佐藤 昭和大学にも他施設からの薬剤師や看護師が研修を受けに来られますが、当院では、薬剤師には薬剤部が、看護師には看護部がメインで研修を行っています。しかし、がん治療はチーム医療ですから、本来なら教える側も研修を受ける側も、チームでかかわるべきだと思います。教育システムも発展型にしていきたいですね。本日はどうもありがとうございました。
   
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