2015年 消化器癌シンポジウム 演題速報レポート
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Abstract #732
KRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌に対する2nd-lineとしてのIRIS + Panitumumabの第II相試験
A Phase II Trial of Panitumumab with Irinotecan and S-1 (IRIS) as Second-line Treatment in Patients with Wild-type KRAS Metastatic Colorectal Cancer
Rai Shimoyama, et al.
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2nd-lineにおけるIRIS + Panitumumabは良好な成績を示すも治療開発に余地あり

岩本 慈能 先生

関西医科大学附属枚方病院
消化管外科

 2nd-lineにおけるIRIS + Panitumumab療法の忍容性を検証した第II相試験である。全体の奏効率は33.3%と良好であり、腫瘍縮小により切除がなされた症例が13.9%もあった。これは比較的PSの良好な症例が対象とされているだけではなく、Panitumumabの良好な腫瘍縮小効果によるものと思われる。多くの症例で1st-lineにL-OHPベースレジメンとBevacizumabの併用療法が行われているが、これは本邦においてもっとも多く行われている治療法であり、2nd-lineにおいても経口薬との併用療法が可能となれば、患者はインフューザーポンプから解放される。しかしながら本試験では有害事象/患者の拒否などの理由で36.1%がプロトコール中断となっており、投与スケジュールや投与量あるいは支持療法など、さらなる開発が必要であるかもしれない。また、1st-lineではCapecitabineや5-FUが使用されており、本試験では2nd-lineにおいてS-1によるフッ化ピリミジン系製剤のbeyondが行われているが、いわゆる“FU change”がどのような効果をもたらすのか非常に興味深いところである。
背景と目的
 Irinotecan + S-1 (IRIS) は、切除不能進行・再発大腸癌の2nd-lineとしてFOLFIRIに対し非劣性であることがFIRIS試験で示されており1)、FOLFIRIに対するPanitumumabの上乗せ効果を検討した20050181試験では、Panitumumab併用によりPFSを有意に改善し、良好な忍容性を示したことが報告されている2)。そこで、KRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌に対する2nd-lineとしてIRIS + Panitumumabを検討する前向きの多施設共同第II相試験が行われた。
対象と方法
 対象は、20歳以上、ECOG PS 0/1で、毒性または病勢進行で1st-lineが中止、または術前/術後補助化学療法の最終投与後24週以内に再発した、KRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌患者であり、S-1 (40〜60mg、day 1-14、1日2回) + CPT-11 (100mg/m2、day 1, 15) + Panitumumab (6mg/m2、day 1, 15) を4週毎に投与された。
 主要評価項目はプロトコール完遂率 (feasibility) であり、FIRIS試験のデータに基づきIRIS + Panitumumabの予測feasibilityを75%に設定した。また、副次評価項目は奏効率、PFS、OS、毒性であった。
結果
 登録された36例の患者背景は、年齢中央値65歳、男性が24例、ECOG PSは0が30例で、前治療レジメンはCAPEOX + Bevacizumabが21例、FOLFOX + Bevacizumabが10例であった (表1)
表1
 頻度の高いgrade 3/4の有害事象として、下痢 (16.6%)、ざ瘡様皮疹 (13.9%)、好中球減少 (11.1%)、食欲減退 (11.1%) がみられた (表2) 。治療中止理由は、PD 18例 (50.0%)、有害事象4例 (11.1%)、患者による拒否/その他9例 (25.0%)、conversion surgery 5例 (13.9%) であり、主要評価項目であるプロトコール完遂率は63.9%であった。
表2
 評価可能であった33例の最大腫瘍縮小率のwaterfall plotは図1の通りであり、抗腫瘍効果はCRが1例、PRが11例、SDが19例で、奏効率33.3%、病勢コントロール率86.1%であった。
 また、OS中央値は20.1ヵ月、PFS中央値は9.5ヵ月であった (図2)
図1
図2
結論
 IRIS + Panitumumab併用療法は、KRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌の2nd-lineとして有効性を示し、忍容可能であった。
Reference
1) Muro K, et al.: Lancet Oncol. 11(9): 853-860, 2010[PubMed
2) Peeters M, et al.: J Clin Oncol. 28(31): 4706-4713, 2010[PubMed