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演題速報レポート

Colorectal Cancer
Abstract #3562
切除不能進行・再発大腸癌の2nd-line治療としてのFOLFIRI vs. IRISの第II/III相臨床試験:FIRIS試験のUpdate
Updated results of the FIRIS study: A phase II/III trial of 5-FU/l-leucovorin/irinotecan (FOLFIRI) versus irinotecan/S-1 (IRIS) as 2nd-line chemotherapy for metastatic colorectal cancer (mCRC).
Hideo Baba, et al.
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背景
 S-1はDPD阻害を有する経口フッ化ピリミジン系抗癌薬であり、消化器癌の中心的薬剤のひとつである。切除不能進行・再発大腸癌に対して、Irinotecan (CPT-11) とS-1を併用したいくつかの第II相臨床試験が行われており、期待できる有効性と安全性が報告されている。FIRIS試験は、切除不能進行・再発大腸癌に対する2nd-line治療としてFOLFIRI療法に対するIRIS療法 (CPT-11 + S-1) の非劣性を検証する目的で行われ、すでに主要評価項目であるPFS (progression-free survival) において、FOLFIRI療法とIRIS療法の非劣性が報告されている1)。今回は2010年7月にアップデートされた最終解析結果が報告された。
対象と方法
 対象は、過去に1st-line化学療法を受けたCPT-11未使用の転移性結腸直腸癌症例でECOG PS 0-1、臓器機能が保たれている症例であった。これらの症例はFOLFIRI療法 (CPT-11 150mg/m2, l-LV 200mg/m2, 5-FU bolus 400mg/m2, day1; 5-FU 46時間 2,400mg/m2, day1-2; 2週毎)、もしくはIRIS療法 (CPT-11 125mg/m2 day1, 15; S-1 40-60mg/body×1日2回, day1-14; 4週毎) に無作為化割付された。
結果
 最終解析時点で追跡期間中央値は39.2ヵ月であった。主要評価項目であるPFS中央値はFOLFIRI群で5.1ヵ月、IRIS群で5.8ヵ月であり (調整HR=1.058, 95%CI:0.869-1.289)、今回の最終解析においても既報1)と同様に、95%CI上限が非劣性マージンであるHR=1.333を下回り、非劣性が再確認された (p=0.022)。
Progression-free Survival
 副次評価項目であるOS (overall survival)中央値はFOLFIRI群で17.4ヵ月、IRIS群で17.8ヵ月であり、こちらも非劣性が確認された(調整HR=0.900, 95%CI:0.728-1.112, p=0.0003)。
Overall Survival
 Oxaliplatin (L-OHP) 使用歴別のサブグループ解析では、過去にL-OHPを使用した症例のOS中央値がFOLFIRI群で12.7ヵ月、IRIS群で15.3ヵ月であり (調整HR=0.755, 95%CI:0.580-0.983)、非劣性検証ではp<0.0001、優越性検証ではp=0.0358と、L-OHP使用歴のある症例ではIRIS療法で生存期間が有意に延長することが示された。一方、過去にL-OHPを使用していない症例は、FOLFIRI群で26.9ヵ月、IRIS群で23.6ヵ月であり (調整HR=1.229, 95%CI:0.866-1.745)、FOLFIRI群で良好な傾向が示された。
OS according to prior chemotherapy (with or without L-OHP)
結論
 今回の最終解析では、OSにおけるIRIS療法のFOLFIRI療法に対する非劣性が再確認され、IRIS療法は切除不能進行・再発大腸癌治療における2nd-lineのオプションのひとつであることが証明された。特にL-OHP使用歴のある群ではFOLFIRI療法と比較し、IRIS療法で生存期間の有意な延長が示され、この対象群における有望な化学療法になり得る可能性が示された。
コメント
 本試験は、切除不能進行・再発大腸癌の2nd-lineにおけるIRIS療法の有用性についての検証試験であり、すでに主目的であるFOLFIRI療法に対するPFSの非劣性の証明が報告されている。今回は、経過観察期間を延長してイベント数を増やし、最終報告として、生存期間についてサブグループ解析とともに報告している。その結果、PFS、OSについては既報告のデータを再度確認するものであった。そして、1st-lineにL-OHPが投与されている症例においては、有意差をもってIRIS療法群の成績が良好であることにポイントが置かれていた。
 本報告では、cell line上で観察されているL-OHP投与後に残存するDPD活性の高いL-OHP不応細胞の増殖に対し、DPD阻害作用をもつS-1の効果が期待されるとの仮説を出していた。
 これまで実臨床現場では、リザーバーポートの設置を余儀なくされる患者に対し、1st-lineのXELOX療法と2nd-lineのIRIS療法による治療効果の減弱がないポートレスの治療戦略の確立が評価されていたが、今回新たに治療歴を考慮した2nd-lineレジメンとしての評価が提案された。今後、2nd-lineレジメン選択時の意思決定因子のひとつとしての実証が対ヒトで行われていくことになる。
(レポート:結城 敏志 監修・コメント:佐藤 温)
Reference
1) Muro K, et al.: Lancet Oncol. 11(9): 853-860, 2010 [PubMed
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