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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 VEGFR-2に対する完全ヒト型IgG1抗体薬であるRamucirumab (RAM) は、フッ化ピリミジン系製剤 + プラチナ製剤に不応となった胃癌患者に対する2nd-lineとしてのPaclitaxel + Placebo療法 (PL群) とPaclitaxel + RAM療法 (RAM群) とを比較する国際共同無作為化二重盲検第III相試験 (RAINBOW試験) により、その有効性が検証された1)。今回、日本人と欧米人での有効性と安全性に関するサブグループ解析が報告された。

対象と方法

 RAINBOW試験に登録された665例のうち欧米人398例 (West; 欧米とオーストラリア) と日本人140例 (Japan) における有効性と安全性を比較した。

結果

 ベースラインの患者背景は、年齢、PS、原発部位、組織型、転移臓器個数などがJapanとWestで異なっていた (表1)

表1

 奏効率は、JapanでRAM群41%、PL群19% (p=0.0035)、WestでRAM群27%、PL群13% (p=0.0004) であり、いずれの地域でもRAM群で有意に良好だった。また、PFS中央値は、JapanでRAM群5.6ヵ月、PL群2.8ヵ月 (HR=0.503, 95% CI: 0.348-0.728, p=0.0002)、WestでRAM群4.2ヵ月、PL群2.8ヵ月 (HR=0.631, 95% CI: 0.506-0.786, p<0.0001)であり、両地域ともRAM併用により有意に延長した (図1)

図1

 一方、OS中央値は、JapanでRAM群11.4ヵ月、PL群11.5ヵ月 (HR=0.880, 95% CI: 0.603-1.284, p=0.5113)、WestでRAM群8.6ヵ月、PL群5.9ヵ月 (HR=0.726, 95% CI: 0.580-0.909, p=0.0050) であり、JapanではRAM併用による有意なOS延長は認めなかった (図2)

図2

 後治療移行割合は、Japanで両群とも75.0%であったのに対し、WestではRAM群38.4%、PL群36.0%であり、Japanのほうが約2倍高かった。Japanにおける治療中止理由は、PD中止割合がRAM群88.2%、PL群84.7%、有害事象による中止がRAM群7.4%、PL群8.3%であった。
 有害事象の頻度はWestと比較してJapanで好中球減少、鼻出血が高い傾向にあったが、他の有害事象発生頻度には大きな地域差を認めなかった (表2)

表2

結論

 日本人のサブグループ解析においても、RAMは欧米人と同様にPFS、奏効率への上乗せ効果を認めた。日本人でOSへの上乗せ効果が認められなかったのは後治療移行割合が高いことが影響したのかもしれない。

コメント

 今回、消化器癌として我が国から口演に採択された唯一の演題である。PFSでは欧米と比較して約2倍の延長効果が得られており、RAMが日本人に対して高い効果を示すことが確認された。OSに差がない理由も後治療移行割合が異なることで説明可能であり、発表の内容としては全く問題がないものと思われた。ただし、奏効率も日本人で高く (RAM群41% vs. PL群19%: p=0.0035)、RAM特有の有害事象も日本人で若干高頻度のようなので、もしかしたら代謝経路などに人種差が存在するのかもしれない。今後、早い時期に我が国でも承認される可能性が高いが、効果予測のバイオマーカーの開発なども含めて、我が国が主導して、研究が進むことに期待したい。

(レポート:谷口 浩也 監修・コメント:寺島 雅典)

Reference
  1. 1) Hansjochen Wilke, et al.: 2014 Gastrointestinal Cancers Symposium: abst #LBA7[学会レポート

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