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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 PEAK試験KRAS exon 2野生型の切除不能・進行再発大腸癌に対する1st-lineとして、mFOLFOX6 + Panitumumab (Pmab) 群とmFOLFOX6 + Bevacizumab (Bev) 群を比較した試験である。KRAS exon 2野生型を対象とした結果においては、いずれもmFOLFOX6 + Pmab群において良好な傾向にあったものの、PFS、OS、奏効率に有意差は認められなかった。

 2013年米国臨床腫瘍学会年次集会では、対象症例をKRAS exon 2 (codon 12, 13)、 exon 3 (codon 59, 61)、exon 4 (codon 117, 146)、 NRAS exon 2 (codon 12, 13)、 exon 3 (codon 59, 61)、exon 4 (codon 117, 146) 変異を除外したRAS 野生型に絞りこみ、さらに追跡期間を長くおいたことで、PFSは13.0ヵ月 vs. 10.1ヵ月 (HR=0.66, 95% CI: 0.46-0.95, p=0.03)、OSは41.3ヵ月 vs. 28.9ヵ月 (HR=0.63, 95% CI: 0.39-1.02, p=0.058) といずれもmFOLFOX6 + Pmab群で有意に良好であった (abst #3631)。今回はRAS 解析に加えて、2nd-lineにおける分子標的薬の併用がOSに与える影響について検討された。

対象と方法

 PEAK試験およびRAS 解析については既報のとおりである。今回はmFOLFOX6 + Pmab群、mFOLFOX6 + Bev群それぞれについて、2nd-lineにおける分子標的薬 (mFOLFOX6 + Pmab群では抗VEGF抗体薬、mFOLFOX6 + Bev群では抗EGFR抗体薬) 併用治療と、分子標的薬を併用しない化学療法単独治療の場合のOSが検討された。解析はKRAS exon 2変異とRAS 変異のそれぞれについて行われた。

結果

 各群間の臨床病理学的背景は、KRAS exon 2解析とRAS 解析のいずれにおいても差は認めかった (表1)

表1

 KRAS exon 2解析、RAS 解析のいずれにおいても、各群で2nd-lineに分子標的薬併用治療、もしくは化学療法単独治療を開始する時期の傾向に差はみられなかった (図1、2)

図1

図2

 また、生存曲線はKRAS exon 2解析、RAS 解析のいずれも、2nd-lineに分子標的薬併用治療を行う場合と、全体と同様の傾向がみられた (図3、4)

図3

図4

 RAS 解析におけるOS中央値は、mFOLFOX6 + Pmab群において、全体、分子標的薬併用後治療、化学療法単独後治療の場合のいずれも41.3ヵ月であり、mFOLFOX6 + Bev群はそれぞれ28.9ヵ月、29.0ヵ月、29.2ヵ月であった (表2)

表2

 KRAS exon 2解析、RAS 解析のいずれにおいても、2nd-lineで分子標的薬併用治療を行った場合と化学療法単独治療の場合のOSは、mFOLFOX6 + Pmab群とmFOLFOX6 + Bev群ともに全体との差を認めなかった。

結論

 PEAK試験において、mFOLFOX6 + Pmab群とmFOLFOX6 + Bev群のいずれも、分子標的薬による治療開始時期は同等であった。また、mFOLFOX6 + Pmab群とmFOLFOX6 + Bev群のいずれにおいても、2nd-lineにおける分子標的薬併用治療の有無はOSに影響しなかった。

コメント

 2013年の本学会で報告されたPEAK試験の結果、とりわけOSが、2nd-lineに用いた分子標的薬の影響を受けるかについて検討した結果である。2nd-lineに分子標的薬を使用した症例は、mFOLFOX6 + Pmab群とmFOLFOX6 + Bev群で各々40%前後にとどまっていた。結果は、mFOLFOX6 + Bevの後に抗EGFR抗体薬を使用しても、mFOLFOX6 + Pmabに引き続いて抗VEGF抗体薬を使用した場合のMSTを上回ることはなかった。FOLFOXとFOLFIRIを用いた治療戦略と異なり、抗体製剤は1st-lineに用いた製剤によってOSが規定される可能性が示唆された。

(レポート:中村 将人 監修・コメント:大村 健二)

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