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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 EGFRリガンドであるamphiregulin (AREG) やepiregulin (EREG) の発現レベルは、抗EGFR抗体薬の効果予測因子となり得ることが報告されている。演者らは2013年米国臨床腫瘍学会年次集会において、AREG 遺伝子のSNP rs1615111 が胃癌患者における予後不良因子となることを報告した。今回、FIRE-3試験1) の組織サンプルを用いてAREG SNP rs1615111 がCetuximabの効果予測因子となるか検討した。

対象と方法

 FIRE-3試験のKRAS / NRAS 野生型患者のうち299例 (年齢中央値64歳、男性67.2%) の組織サンプルからDNAを抽出し、ダイレクトシークエンス法によりAREG rs1615111 遺伝子多型を測定した。また、FOLFIRI + Cetuximab群 (139例) の81例について、腫瘍組織のAREG遺伝子発現量をRT-PCR法により測定した。

結果

 SNP測定はFOLFIRI + Cetuximab群139例、FOLFIRI + Bevacizumab群160例であり、年齢、性別、PS、原発巣部位に群間差を認めなかった。AREG rs1615111 の遺伝子多型はG/G型が279例、A/G型が20例 (6.7%) であった。

 多型別の奏効率は、FOLFIRI + Cetuximab群ではG/G型79%、A/G型38%と、G/G型で有意に良好であった (p=0.02) のに対し、FOLFIRI + Bevacizumab群では有意差は認められなかった (64% vs. 64% : p=0.60)。生存についても、FOLFIRI + Cetuximab群ではG/G型と比較してA/G型でPFS (中央値10.6ヵ月 vs. 5.9ヵ月 : HR=3.46, 95% CI: 1.57-7.62, p=0.001)、OS (中央値33.1ヵ月 vs. 11.4ヵ月 : HR=3.87, 95% CI: 1.64-9.09, p=0.001) ともに不良であった (図1)。一方、FOLFIRI + Bevacizumab群では両多型においてPFS、OSに有意差を認めなかった。

図1

 また、FOLFIRI + Cetuximab群のAREG mRNA量を測定し、治療効果との相関を検討したところ、高発現群 (n=27) では低発現群 (n=54) と比較して奏効率 (83% vs. 65% : p=0.11)、PFS (中央値13.6ヵ月 vs. 5.9ヵ月 : HR=0.69, 95% CI: 0.43-1.14, p=0.14)、OS (中央値39.4ヵ月 vs. 22.6ヵ月 : HR=0.62, 95% CI: 0.35-1.11, p=0.10) ともに良好な傾向にあった(図2)

図2

 一方、AREG rs1615111 遺伝子多型とAREG mRNA量の相関は認められなかった (p=0.68)。

結論

 FIRE-3試験において、AREG SNP rs1615111 はCetuximabの治療効果予測因子であった。今後は、その分子生物学的メカニズムを明らかにするとともに、前向き研究での検証が必要である。

コメント

 FIRE-3試験において、EGFRの主要なリガンドの1つであるAREGの遺伝子多型と治療効果との関連について検討した報告である。AREG mRNAの発現は有意な関連が得られなかったが、遺伝子多型rs1615111 は有意にCetuximabの治療効果と関連が認められた。今回、隣で発表されていたPICCOLO試験 (2nd-line治療におけるCPT-11 vs. CPT-11 + Panitumumab) における解析ではEREG、AREGのmRNA発現が高い症例でPanitumumabの治療効果が高いことが報告されており2)、現時点において抗EGFR抗体薬におけるリガンドの関与に関しては、RAS BRAF ほど明確ではないことが示唆される。また、SNPは簡便で安定性の高い解析方法であり、同一の研究室から多数の報告がなされているが、遺伝子多型と機能との関連に関する研究も併せて行われる必要があると考える。

(レポート:谷口 浩也 監修・コメント:寺島 雅典)

Reference
  1. 1) Volker Heinemann, et al.: 2013 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #LBA3506[学会レポート
  2. 2) Jenny F Seligmann, et al.: 2014 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3520

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