現地座談会

胃癌に関する注目演題

#LBA4001:LOGiC試験
HER2陽性の胃癌、食道胃接合部癌におけるCapeOxに対するLapatinibの上乗せ効果は?

室:ここからは胃癌・膵癌の注目演題に移ります。最初はLOGiC試験です。

中島:LOGiC試験は、HER2陽性の切除不能進行胃癌もしくは食道胃接合部癌における1st-lineとしてCapeOxに対するLapatinibの上乗せ効果を検討した国際共同第III相試験です。主要評価項目のOSは中央値がplacebo群10.5ヵ月、Lapatinib群12.2ヵ月であり、残念ながら有意差は認められませんでした (HR=0.91, p=0.3492) (図16)。OSにおけるサブグループ解析では、60歳未満 (HR=0.69)、アジア (HR=0.68) のサブグループでLapatinib群が良好でした。また、IHC 0-1、IHC 2-3のいずれのサブグループにおいてもLapatinib群が良好です (図17)

 PFSはwithout censoringとwith censoringの2つ報告があり、with censoringの場合はLapatinib群が有意に良好でした (HR=0.82, p=0.0381) (図18)。奏効率はLapatinib群53%、placebo群40%でしたが、アジアではそれぞれ65%、39%でした。有害事象はLapatinib群で下痢、皮疹の頻度が高くなっていますが、その他は大きな差はありません。

室:佐藤温先生、お願いします。

佐藤 (温):Lapatinib併用の優越性が証明できず、残念な結果でした。胃癌の2nd-lineにおけるLapatinibの有用性を検討したTyTAN試験では、国際共同試験において日本での結果が足を引っ張る形になり、室先生が「日本は危機である」というコメントを残されていました。今回、LOGiC試験に日本は参加しませんでしたが、アジア以外の国が足を引っ張った形になっており、どう解釈するべきなのか困難な状況だと思います。

 Lapatinibは既にTrastuzumab抵抗性の乳癌において、Capecitabineとの併用で保険適応になっています。胃癌に関しても、Trastuzumabの抵抗性症例に対して可能性があるのではという思いが残っています。今回、副作用による中止が両群とも約20%あり、Kaplan-Meier曲線を見ると、OSは24ヵ月、PFSは18ヵ月の時点から一気に重なっています (図16, 18)。したがって、細胞障害性抗癌剤の副作用によりLapatinibが早期に中止され、有意差がなくなった可能性も否定できません。

室:試験薬のpowerが純粋に検証されていない可能性も示唆されていましたが、いかがでしょうか。

寺島:Trastuzumabの有効性を示したToGA試験9) との違いは、患者背景における腫瘍部位です。ToGA試験ではGE junctionが多かったため、治療成績も良好でしたが、LOGiC試験はgastricが86~88%と非常に多くみられました。ただ、今回アジアの成績が良かったことから考えると、アジアに多いgastricにもHER2阻害剤が有効なのかもしれません。

佐藤 (温):ToGA試験では化学療法を終えた後にTrastuzumab単剤で維持療法を行いました。この試験デザインの違いが大きいと思います。

室:TyTAN試験との違いはいかがでしょうか。TyTAN試験ではFISH陽性が対象でしたが、サブグループ解析ではIHCで差がみられ、IHC3+では有意差を認めています。

中島:LOGiC試験ではFISH陰性でもIHC 3+は対象としています。

室:今回のLOGiC試験ではIHCによる差はみられなかったため、IHC優先にしておけばよかったということではないですね。他に、抗体薬とチロシンキナーゼ阻害薬との違いということは考えられますか。

寺島:Heterogeneityはありますが、やはり抗体薬と低分子薬では違う可能性はあります。

室:つまり、臨床試験のquality、プロトコルの問題だけでなく、同じHER2陽性であっても乳癌と胃癌では区別して考える必要があるなどが課題として考えられるでしょうか。やはり胃癌は難しいと改めて思い知った試験であったと思います。

Lessons from #LBA4001
  • HER2陽性の胃癌、食道胃接合部癌における1st-lineとしてのCapeOxに対するLapatinibの上乗せ効果は認められなかった。
  • ただし、細胞障害性抗癌剤の副作用の影響によりLapatinibが中止となり、両群に差がなくなった可能性も否定できない。

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