現地座談会

肝転移に対する術前術後補助化学療法

Discussion

室:それでは、ディスカッションをお願いします。

大村:Stage III結腸癌の術後補助化学療法においてFOLFOXに対するCetuximabの上乗せ効果を検討したN0147試験でも、3年DFSおよびOSにおいて下回る傾向が示されています7)。したがって、切除可能例や術後補助化学療法においてCetuximabの上乗せ効果はないという結論でいいと思います。切除不能な病巣を縮小させて切除に持ち込むconversion therapyと、切除可能な症例を対象とした術前補助化学療法、そして術後補助化学療法を区別して考えるべきでしょう。

室:そうですね。切除可能な症例に対する術前補助化学療法としてのCetuximab併用については、疑問符が付いていると思います。

小松:臨床では、conversion therapyとしてCetuximabを使用して切除可能となった場合、有効性を示した化学療法であるから術後も継続することも少なくありません。それに対して、この試験は何らかの答えを示したのでしょうか。

室:本試験の大半は切除可能な症例なので、その答えにはならないかもしれません。しかし、手術によりdisease freeとなった症例に対し、術後にCetuximabを投与することは、逆に足を引っ張る可能性があるという示唆は得られたと思います。

佐藤 (武):「切除可能な症例に術前補助化学療法を行う意義が本当にあるのか」という根本的な問題もあります。本報告のOS のKaplan-Meier曲線をみると、化学療法単独群は中央値未到達であるものの54ヵ月時点において50~60%辺りを推移しています。これまでのデータから、手術単独における5年OSは約50%を示しているので8)、術前補助化学療法による改善効果が少ない可能性も考えられます。

寺島:術前ではなく術後補助化学療法ですが、大腸癌肝転移切除後の患者を対象としてmFOLFOX6と手術単独を比較するJCOG0603試験が進行中なので、その結果に注目したいですね。

吉野:PFSのKaplan-Meier曲線を見ると12ヵ月時点まではほぼ同等ですが、そこからCetuximab併用群は急に下降しています。これには何か意味があるのでしょうか。

中島:もともと切除可能な患者なので、曲線が離れるのが遅い可能性はあると思います。

室:手術可能な症例の周術期化学療法においてCetuximabの上乗せにより、PFSが低下したのですから、とにかく衝撃的な結果であることは確かです。L-OHPとの併用が悪影響を及ぼした可能性もあります。論点は多いですね。

Lessons from #3504
  • 切除可能な大腸癌肝転移症例における周術期化学療法に対するCetuximabの上乗せは、PFS、OSが劣る結果となった。
  • 特に、術後補助化学療法としてのCetuximab併用は否定されたと考えられる。
  • 周術期化学療法の意義については今後の試験の結果を待ちたい。

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