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Orlando,FL

2009年 米国臨床腫瘍学会年次集会トップページ
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座談会

今後のわが国のがん治療について

瀧内 最後にそれぞれのお立場から、今後のわが国のがん治療についてコメントをいただきたいと思います。

佐藤 2009年 米国臨床腫瘍学会年次集会では、有意義な知見が得られるようなデータが多数報告されたと思います。しかし、「おいしい料理をたくさん並べられても、見ているだけで食べられない」という現実がありますので、それが早く改善されて、実臨床にできるだけ早く応用できるようになることを期待しています。

坂本 私はtarget therapy、tailor-made therapyの幕開けの時代だという印象を得ました。ここで紹介させていただきたいのが、経口のc-met/ALKのdual inhibitorの第I相試験の報告です。消化器癌ではありませんが、EML4-ALK融合遺伝子を有する非小細胞肺癌に対して驚くほどの効果が認められました(Kwak EL, et al. #3509)。非小細胞肺癌のうち、EML4-ALK融合遺伝子を有するのは4%と非常にselectiveです。癌種にかかわらず、「ここに○○の変異があるから」「ここに××がregulateされているから」という理由で薬剤が選択される、例えばイマチニブをGISTに使ったり慢性骨髄性白血病に使ったりする――そういう時代の幕が開き始めたのではないかと思っています。

大村 2009年 米国臨床腫瘍学会年次集会の演題を見ていても、やはりgood respondersの拾い上げとpoor respondersの除外は、今後ますます力を入れるべきところだと思います。もちろん、新薬の開発にも絶えず努力すべきですが、今ある薬剤をいかに安全に、有効に、ベネフィットの得られる患者さんに使うかは、非常に重要な問題です。エビデンスを出すためには、大きな集団が必要です。日本で進行している大規模臨床試験のなかからも、サブ解析でさまざまな知見が出てくる可能性があるわけです。人口が減少しているといっても、まだ1億2000万人もいる大きな国で、大規模臨床試験がスムーズに進行するように、ぜひ臨床現場にいる先生方は、臨床試験に積極的に登録していただきたいと思います。それが、patient selectionにつながる近道だと思います。

寺島 外科医としては、進行・転移性癌の治療で出てきたさまざまなエビデンスに関して、わが国独自の外科治療の補助療法としての有用性をいち早く検証したいと思います。特に胃癌の術後補助化学療法は、ACTS-GC試験以後、手詰まり状態なので、stage IIIの予後を改善するために、いかに早く新しい薬剤を使えるようにしていただけるかが大事だと感じています。
それから、molecular targetingは確かにマーカーが明確でよいのですが、cytotoxicな薬剤の効果予測マーカーも何とかして見つけていきたいと思います。NSABP C-08の結果を見て、もう一度原点から再発のメカニズムを検索する基礎研究も行っていきたいと考えています。

大津 個人的には、ToGAの結果が出たということが感慨深いです。当センターの目的は、drug lagをなくして、世界に遅れずにとにかく早く承認までもっていくことです。今回、それをある程度実現できたことを嬉しく思います。
一方で残念に思うのは、日本が第I相試験にまだ十分に関与できていないことです。これが後々、研究や臨床の遅れにつながります。消化器癌に関しては海外と時差がなくなってきていますが、ほかの癌種も何とかしなければなりません。先ほど坂本先生が紹介されたc-met/ALK inhibitorの第I相試験には、韓国も参加しています。我々も危機感をもって、もっと積極的にならなければいけないですね。

瀧内 本日は興味深いディスカッションをありがとうございました。我々も日本の研究者として、世界をリードしていく意気込みをもって、がん治療の開発に携わっていかなければいけないと思います。外科医と内科医が情報を共有して、やるべきことを明確にし、国を挙げて臨床試験を実施するという時代になっています。ぜひ皆さんと協力して、消化器癌治療が向上するように努力していきたいと思っています。

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