患者さんへの情報提供とサポート

瀧内:化学療法や緩和ケアを行っていく中で、患者さんと家族にはいろいろな悩みがあると思いますので、そうした悩みを引き出し、相談できるようなシステムが求められます。がん診療連携拠点病院構想の中でも、「がん相談支援センター」が充足項目として挙げられています。福井県済生会病院ではメディカル・コーディネーターが医師と患者さんの間の隙間を埋めているとお聞きしていますが。

三浦:メディカル・コーディネーターの業務は、2001年1月からスタートしました。たとえ早期癌であっても、告知された患者さんは頭の中が真っ白になって、医師の説明も頭に入りません。ですから、きちんと患者さんに寄り添って専門用語ではないわかりやすい言葉で説明し、患者さんのニーズを酌み取って弁護士的な立場で病院側に伝える、そういう専門職が必要だと考えたのです。制度とは無関係に、現場の看護師の自主的な活動・モチベーションから生まれたものです。
 現在は、看護師3名と事務職1名がメディカル・コーディネーターとして活躍しています。彼らは実際に患者さんが受ける検査も体験し、どれくらいつらいのか、何が問題になるのかを理解しています。優秀な主任が患者説明用のパスを作成したり、聞き取り調査を行って患者さんの声を現場にフィードバックしてくれます。現在は地域連携にも積極的に関わり、メディカル・コーディネーターが開業医まで説明に行くなど、仕事の場を広げてくれています。このほか、当院は「がんの悩み相談外来」も開設しており、ホスピスケア認定看護師2名が患者さんと家族の悩みに対応しています。相談件数は1ヵ月で40件くらいになります。

谷水:今のお話のように、仕事をいかに拡大できるかがこうした部門の命運を決すると思います。「患者支援室」を設置して専門スタッフを置いただけではだめで、病院内の何が問題になっており、自分は何を求められているのかをスタッフ自身が敏感に感じ取って、それを改善するために行動を起こせることが重要なのです。福井県済生会病院はそうした能力のある人が配置されたことで、活動に広がりがもてたと思うのです。

瀧内:また、それを理解して活動の場を与えるトップがいることが大きいですね。三浦先生は非常に理解があったと思います。四国がんセンターは「地域連携室」と「がん相談支援センター」が併設されているということですが。

谷水:旧病院時代は地域の医師との連携を図る「医療連携室」や癌患者さんの「セカンドオピニオン対応」、医療費や社会福祉、社会資源の問題などについて相談する「よろず相談」など、様々な部門が異なる経緯で別々に設置されていたのですが、お互いの連携が図られないために苦労していたのです。そこで、がん診療連携拠点病院構想で「がん相談支援センター」の設置が求められたときに、それまで個別に行われていた「医療相談・よろず相談」「退院調整」「在宅療養支援」「情報発信・情報提供」「医療連携」の各部門を「がん相談支援・情報センター」として再編したわけです。各部門の人員と機能を1ヵ所にまとめたことで、内部のやりとりがスムーズになり、仕事は何倍にも膨らんできています(図3)。スタッフ構成は、センター長(医師、併任)、室長(医師、併任)、専任看護師3名、ソーシャルワーカー1名、臨床心理士1名(週2日)、事務職員2名となっています。

三浦:各部門の機能を1ヵ所にまとめたことがポイントですね。もう少し早く知りたかったです(笑)。当院も「よろず相談外来」を設置しているのですが、連携があまりうまくいっていないので……。

谷水:「がん相談支援・情報センター」には3台の電話を置いているのですが、スタッフが1つの部屋にいるので、相談内容に応じてすぐに担当のスタッフと交代できます。センターは「苦情のはけ口」ではなく「解決の窓口」ですから、きちんと問題を整理して適切なところにつなぎ、解決へ導くことが大事です。現在、医療連携はFAX紹介が大半を占めるようになっています。また、病棟との連携においては退院調整連携パス(フェーズ1〜6)を導入し、スムーズな退院をサポートしています(図4)。以前は、退院が決まった段階で在宅の環境が整わず、慌てるケースが少なくなかったので、入院した時点から同時並行で必要なものを手配しようという考え方です。さまざまな理由で退院が困難な患者さんに対して、「がん相談支援・情報センター」が病棟スタッフと協同して早期から介入することを目指しています。転院の手配、在宅療養に際してはかかりつけ医、訪問看護・介護など、院外との「医療連携」の機能も兼ねており、また院内の緩和ケアチームなどとの連携も必要です。

瀧内:病棟看護師はなかなか「在宅」という観点を持てないので、退院調整連携パスは有用だと思います。パスのフェーズ1はスクリーニング用で、入院患者さんの中から調整が必要な患者さんを抽出し、解決していくわけですね。無駄のないシステムだと思います。

三浦:患者さんにとっても、「こうなったら退院」というアウトカムを最初に提示されることは大事ですね。すごくよいアイデアですので、当院でもぜひ取り入れたいと思います。

 
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