ESMO 2011 演題速報レポート Stockholm, Sweden September 23-27, 2011
2011年9月23日〜27日にスウェーデン・ストックホルムにて開催されたThe European Multidisciplinary Cancer Congress 2011 - ESMOより、大腸癌や胃癌などの注目演題のレポートをお届けします。演題レポートの冒頭には、臨床研究の第一線で活躍する監修ドクターのコメントを掲載しています。
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胃癌
Abstract #6505
漿膜浸潤を伴う進行胃癌に対する術後補助化学療法としてのCisplatin腹腔内投与 + 早期Mitomycin-C + 長期Doxifluridine + Cisplatin療法 (iceMFP) vs. Mitomycin-C +短期Doxifluridine療法 (Mf) + 無作為化比較第III相試験: AMC 0101試験の最新報告
Update of AMC 0101 Study: a Randomized Phase III Trial of Intraperitoneal Cisplatin and Early Mitomycin-C Plus Long-term Doxifluridine Plus Cisplatin (iceMFP) Versus Mitomycin-C Plus Short- Term Doxifluridine (Mf) as Postoperative Adjuvant Chemotherapy for Grossly Serosa-positive Advanced Gastric Cancer (NCT00296322)
Min-Hee Ryu, et al.
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Expert's view
日本の胃癌術後補助化学療法の標準治療に与えるインパクトはない
山田 康秀 先生 国立がん研究センター中央病院
消化管腫瘍科消化管内科
 Cisplatin (CDDP) の腹腔内投与、Mitomycin-C等化学療法の早期開始、CDDPの全身投与、Doxifluridine (DFUR) の投与期間延長のいずれが試験結果に良好な影響を与えたかについてはわからないが、本試験では標準治療群に比べ試験治療群でrecurrence-free survival (RFS) およびoverall survival (OS) の延長がみられた。
 本邦では、CDDPの腹腔内投与を含んだ術後補助化学療法の臨床試験として、D2リンパ節郭清を行った漿膜浸潤のあるT3/4症例患者を対象として、術中CDDP 70mg/m2の腹腔内投与を行い、14日目にCDDP 70mg/m2静注、14-16日目に5-FU 700mg/m2静注、手術から4週後よりUFT 267 mg/m2/日を12ヵ月間投与する術後補助化学療法群と手術単独群の無作為化第III相試験 (JCOG9206-2) 1)がある。結果は、5年RFSが手術単独群 (年齢中央値57歳) で55.6%、補助化学療法群 (年齢中央値59歳) で57.5% (p=0.512)、5年OSが手術単独で60.9%、補助化学療法群で62.0% (p=0.482) と術後補助化学療法の有効性は示されなかった。腹膜再発は化療群で14%、手術単独群で17%、肝転移再発は化療群で12%、手術単独群で7%であった。また術後合併症として、腸管通過障害、縫合不全、膵液瘻、腹腔内膿瘍、吻合部狭窄、肺炎に有意差はなかったが、その他種々の合併症の頻度は補助化療群で11.9%、手術単独群で3.0% (p=0.009)、腎機能低下が各々15.6%、2.3% (p<0.001) と有意に頻度が高かった。一方、ACTS-GC試験3) の結果から、本邦におけるstage II / IIIに対する標準治療はD2郭清 + S-1の1年間内服であり、標準治療に対する本試験結果の影響はない。
 発表者らは、今後、術前診断T3-4N0M0またはT2-4N + M0症例を対象にS-1を術後に1年内服する標準治療群と術前DOS (Docetaxel, Oxaliplatin, S-1) を3コース施行し、S-1を術後1年内服する試験治療群の無作為化第III相試験を行うと発表していた。
背景と目的
 iceMFP療法は、漿膜浸潤を伴う進行胃癌に対する術後補助化学療法の治療成績向上を目的として開発された治療法で、従来のMf療法 (MMC + Doxifluridine) に [1] CDDP静脈内投与、[2] DFURの投与期間の延長、[3] MMCの早期投与開始、[4] CDDP腹腔内投与の4つの戦略が追加されている。
 AMC 0101試験は、Mf療法を対照群としてiceMFP療法の有用性を検討する第III相試験で、3年間の追跡結果は2008年 米国臨床腫瘍学会年次集会で報告した3)。今回は長期追跡結果について報告する。
対象と方法
 対象は、漿膜浸潤を伴う胃腺癌と診断され、D2郭清による根治切除が行われた化学療法歴のない患者とした。試験デザインと治療スケジュールは図1の通りである。
図1
 主要評価項目はRFS、副次的評価項目はOS、安全性である。
結果
 登録症例640例のうち適格基準により119例が除外され、解析対象となったのは521例 (iceMFP群: 263例、Mf群: 258例) であった。本解析は2011年4月に実施された。追跡期間の中央値は6.6年 (range: 3.2-9.5)、RFSの総イベント数は271、OSの総イベント数は252であった。
 主要評価項目である5年RFSはiceMFP群で53.9%、MF群では46.3% (HR=0.729, 95% CI: 0.574- 0.926, p=0.0092) であり、Mf群に比してiceMFP群で有意に優れていた (図2)
図2
 副次的評価項目である5年OSにおいても、iceMFP群で59.2%、Mf群では50.3% (HR=0.768, 95% CI: 0.600-0.984, p=0.0365) であり、iceMFP群で有意な改善が認められた 。
結論
 本試験の長期解析結果より、iceMFP療法の3年RFSにおけるベネフィットは5年OSにも反映されていることが確認された。
 同様の患者を対象にMf療法とMFP (MMC + CDDP + 長期DFUR) 療法を比較したAMC 0201試験では、CDDPの静脈内投与とDFURの投与期間延長が治療成績の向上に繋がらなかった4)ことから、MMC早期投与開始とCDDPの腹腔内投与のいずれかまたは両方が再発抑制に寄与していると考えられる。
Reference
1) Miyashiro I, et al.: Gastric Cancer. 14(3): 212-218, 2011 [PubMed
2) Sakuramoto J, et al.: N Engl J Med. 357(18): 1810-1820, 2007 [PubMed
3) Kang KY, et al.: 2008 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #LBA4511 [学会レポート
4) Min YJ, et al.: The European Multidisciplinary Cancer Congress 2011 (16th ECCO-36th
  ESMO): abst #6570
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