Abstract #LBA4511

Postoperative adjuvant chemotherapy for grossly serosa-positive advanced gastric cancer: A randomized phase III trial of intraperitoneal cisplatin and early mitomycin-C plus long-term doxifluridine plus cisplatin (iceMFP) versus mitomycin-C plus short- term doxifluridine (Mf) (AMC 0101) (NCT00296322).


Y. Kang, et al.

背景と目的

漿膜浸潤を伴う進行胃癌に対する術後補助化学療法の治療成績の改善を目的に、これまで実施してきたMMC + doxifluridineの併用療法(Mf療法)をもとに、(1) CDDPの併用、(2) doxifluridineの投与期間の延長、(3) 化学療法(MMC)の早期開始、(4) CDDPの腹腔内投与、の4点を加えた方法(iceMFP療法)を開発した。 この第III相試験は、iceMFP療法がMf療法に比較して3年無再発生存率(RFS)を改善しうるかを検証するためにデザインされた。

対象と方法

<対象>
適格基準・除外基準を以下に示す。
・適格基準
 組織学的に確認された胃腺癌症例
 D2郭清を伴う根治切除が施行された症例
 漿膜浸潤を伴う症例
 18歳〜70歳までの症例
 前治療が施行されていない症例
 化学療法の適応のない症例
 インフォームドコンセントが得られた症例
・除外基準
 術後、病理学的診断によりstage Iもしくは遠隔転移を伴うstage IVと診断された症例

<方法>
対象患者を以下のように無作為化した。
Mf群:術後3〜6週後mitomycin-C を20mg/m2静脈内投与し、4週間後よりdoxifluridine 460-600mg/m2/dayを3ヵ月間経口投与する。
iceMFP群:術中にCDDP 100mg + 生食1,000mLを2時間かけて腹腔内に投与し、術後1病日にmitomycin-Cを15mg/m2静脈内投与し、術後4週後より12ヵ月間 doxifluridineを経口投与し、CDDP 60mg/m2を毎月1回、計6回静脈内投与する。

一次エンドポイントは RFSであり、二次エンドポイントは OS、安全性とした。

結果

2001年10月〜2007年4月までに640例が試験に登録され、そのうち119例が除外基準により除外された。適格症例は521例であった。観察期間の中央値は3.5年であった。患者背景、手術関連合併症、再発形式について、下記表に示す。


 

患者背景

 

Mf群(258例)

iceMFP群(263例)

年齢中央値

56歳

53歳

性:男性(%)

68.2

66.5

ECOG PS 0-1(%)

95.7

94.3

腫瘍局在(%)

  Proximal

16.6

15.0

  Distal

80.2

83.8

  Multiple/diffuse

3.2

1.2

術式(%)

  胃全摘

54.7

50.2

  幽門側胃切除

45.3

49.8

郭清LN数中央値

29

30

stage(%)

  II

34.5

32.3

  IIIA

31.4

32.3

  IIIB

17.1

17.9

  IV

17.1

17.5

組織型(%)

  tub

85.7

81.4

  sig

8.9

13.7

  muc

4.3

4.6

  pap

0.4

0.0

化学療法までの日数

22

1

doxifluridine投与量(%)

  460mg/m2/day

53.9

52.9

  600mg/m2/day

46.1

47.1


手術関連合併症

 

Mf群(258例)

iceMFP群(263例)

Total(521例)

創傷関連

11

9

20

イレウス

  術直後

2

0

2

  癒着性

7

10

17

腹腔内膿瘍

12

3

15

出血

  消化管

0

2

2

  腹腔内

1

0

1

縫合不全

0

2

2

吻合部狭窄

1

0

1

肺炎

1

0

1

その他

1

1

2


再発形式

 

Mf群(258例)

iceMFP群(263例)

Total

118

94

局所再発

15

11

遠隔転移

103

83

血行性転移

35

25

腹膜転移

60

44

リンパ性転移

41

29

 

3年RFSについては、iceMFP群がMf群に比較して、有意に良好であった。

  3年OSについても同様であり、iceMFP群がMf群に比べて、有意な延長を認められた。

主な有害事象を以下に示す。また、治療関連死は認めなかった。


 

化学療法による有害事象(grade 3-4:%)

 

Mf群(258例)

iceMFP群(263例)

貧血

1.6

4.9

白血球減少

11.6

34.2

血小板減少

0.8

0.8

下痢

1.9

1.5

嘔吐

1.6

7.6

結論

漿膜浸潤を伴う進行胃癌に対するiceMFP術後補助化学療法は、Mf療法に比較してRFS、OSの有意な改善が認められた。 根治切除後の進行胃癌に対するMf療法にCDDP投与と、doxifluridine投与期間の延長を加えることによる有益性は認めなかったことを考慮すると、本研究におけるiceMFP療法の効果は、CDDPの腹腔内投与または術後早期の化学療法開始によるものと考えられる。

コメント

胃癌術後に腹腔内化学療法の有用性が認められた試験の報告である。これまでの治療法に4点の改善を加えたとあるものの、結論でも述べているように、他の試験で、外来でのCDDP投与とdoxifluridineの投与期間延長は治療成績の向上に つながらなかったことを考えると、術直後のCDDP腹腔内投与、第1病日のMMC投与が再発予防に寄与しているものと考えられる。しかし、我が国では術直後のMMC投与について以前から様々な研究がなされたものの、その有用性を証明できず、また、CDDPの術中腹腔内投与もJCOG9206-2試験で有用性を証明できなかった。今回の結果では、症例の背景因子に不明な点がいくつかみられるので、今後のより詳細な報告を待って、我が国での検証的試験の是非について検討がなされるべきであると思われる。

(レポーター:佐瀬 善一郎  監修:寺島 雅典)