演題速報レポート

背景と目的

 フッ化ピリミジン系薬耐性はNFκBのupregulationと関連しており、プロテアソーム阻害薬やmTOR阻害薬によるNFκB経路の抑制が5-FUの抗腫瘍効果を高める。Perifosineは、AKT、NFκB、JNK、p21、ERKに作用する合成アルキルリン脂質の経口剤であり、フッ化ピリミジン系薬のNFκBを介する耐性克服への関与が基礎研究で示されている。2nd-line/3rd-line治療にて5-fluorouracil抵抗性・Capecitabine (CAP) 未使用の進行・再発大腸癌に対する小規模無作為化第II相試験において、Perifosine + CAP (P-CAP) はCAP単独に対し、PFS (progression-free survival) およびOS (overall survival) で有意に良好な成績を示した1)。今回、P-CAPの有効性が二重盲検比較第III相試験にて検証された。

対象と方法

 対象はフッ化ピリミジン系薬、Irinotecan、Oxaliplatin (L-OHP)、Bevacizumab、抗EGFR抗体薬 (KRAS 野生型のみ) に治療抵抗性で、CAP未使用 (術後補助化学療法や放射線増感剤としての使用は許容) のPS 0/1の進行・再発大腸癌患者であり、CAP群 (1,000mg/m2 bid, d1-14, q3w) とP-CAP群 (CAP + Perifosine: 50mg/d qd, q3w) に無作為割付けされた (割付け調整因子:KRAS 変異、L-OHP耐性) 。
 主要評価項目はOSであり、副次評価項目はRR (response rate)、PFS、有害事象、バイオマーカー検索である。
 OSにおけるP-CAP群の優越性を検証 (CAP群5.5ヵ月、P-CAP群7.75ヵ月) 、両側α5%および検出力90%より、必要症例数を430例とした。

結果

 2010年3月末-2011年10月までに468例が登録され、CAP群およびP-CAP群の患者背景に差はなかった。

 主要評価項目であるOSは両群間で有意差は認められず (HR=1.111, 95%CI: 0.905-1.365, p=0.315)、中央値はCAP群6.9ヵ月、P-CAP群6.4ヵ月であった。KRAS 遺伝子別サブグループ解析においても有意な差は認められなかった。

 また、PFSについても同様に両群間で有意差は認められず (HR=1.031, 95%CI: 0.854-1.244, p=0.752) 、中央値はCAP群11.4週、P-CAP群10.9週であった。KRAS 遺伝子別サブグループ解析においても有意な差は認められなかった。なお、RRはCAP群3.0%、P-CAP群2.6%であった。

 Grade 3以上の血液毒性、非血液毒性は両群でほぼ同等であった。
 KRAS 野生型L-OHP耐性例ではP-CAP群のPFSは有意に延長しており (HR=0.514, 95%CI: 0.329-0.801, p=0.003)、中央値はCAP群6.6週、P-CAP群18.1週であった。OSでは有意な差は認められなかった (HR=0.769, 95%CI: 0.477-1.239, p=0.280, 中央値はCAP群6.2ヵ月、P-CAP群8.0ヵ月) 。

 バイオマーカー検索については、報告されなかった。

結論

 第II相試験1)より前治療歴の少ない患者が多く登録されていた可能性はあるが、本第III相試験においてはP-CAPの有効性は証明されなかった。

コメント

 Negative studyの報告である。化学療法抵抗性例におけるPerifosineの有用性は証明されなかった。Perifosineは、PI3K経路でAktの活性阻害の作用機序を持つ経口抗癌剤である。FDAは、多発性骨髄腫および神経芽腫に対する希少疾病用医薬品として指定、大腸癌および多発性骨髄腫については優先承認審査制度の対象としていたことから、承認申請が予定される最も期待された新規抗癌剤の一つであった。本試験に先駆けて報告された無作為化比較第II相試験1)は2nd-lineおよび3rd-line大腸癌において少数例ではあったが、Perifosineの有用性検証結果に疑いをもたせないほどpromisingな結果であったのだが、本結果により、今後の開発の見直しが迫られるだろう。バイオマーカーの検索次第では、個別化治療につながる集団が確認されるかもしれない。

(レポート:中島貴子 監修・コメント:佐藤 温)

Reference
  1. 1) Bendell JC, et al.: J Clin Oncol. 29(33): 4394-4400, 2011[PubMed
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