演題速報レポート

背景/目的

 大腸癌に対するVEGF、EGFRへの標的治療は、基礎データにおいて相乗効果が示唆されているが1, 2)、それぞれの抗体薬の併用療法の有効性については第III相試験で否定されている3, 4)。本研究では、1st-lineにおける維持療法としての抗VEGF抗体薬Bevacizumab (BEV) + EGFR阻害薬Erlotinib併用療法の有効性について検討された。

対象と方法

 対象は治療歴のない切除不能進行・再発大腸癌であり、FOLFOX/XELOX + BEV (6-12サイクル) もしくはFOLFIRI + BEV (12サイクル) による1st-line治療後、PDと判断されなかった患者をBEV群 (BEV 7.5mg/kg d1, q3w) とBEV + Erlotinib群 (BEV 7.5mg/kg, q3w + Erlotinib 150mg/d) に無作為割付けした。
 主要評価項目は維持療法における (すなわち無作為化時点からの) maintenance PFS (progression-free survival) であり、副次評価項目はOS (overall survival)、維持療法開始時からのOS、化学療法無施行期間、RR (response rate)、KRAS 遺伝子変異別OSである。
 Maintenance PFSにおけるBEV + Erlotinib群の優越性を検証 (BEV群4.5ヵ月、BEV + Erlotinib群6.5ヵ月) し、両側α5%および検出力80%より、必要症例数を700例とした。

結果

 2007年1月-2011年10月までに700例が登録され、224例がBEV群に、222例がBEV + Erlotinib群に無作為に割付けられた。患者背景に差はなかった。

 Maintenance PFSはBEV + Erlotinib群で有意に延長しており (HR=0.73, 95%CI: 0.59-0.91, p=0.0050) 、中央値はBEV + Erlotinib群では5.75ヵ月、BEV群では4.57ヵ月であった。登録時点からのPFSもBEV + Erlotinib群で有意に延長していた (HR=0.73, 95%CI: 0.59-0.91, p=0.0045, 中央値9.23ヵ月 vs. 10.22ヵ月) 。

 全対象のOS中央値は25.4ヵ月であったが、治療群別OSは観察期間が短いことから報告されなかった。
 Grade 3以上の血液毒性は両群間でほぼ同等であったが、非血液毒性についてはBEV + Erlotinib群で下痢 (1% vs. 9%) 、皮膚毒性 (0% vs. 20%) が多かった。
 投与サイクル数の中央値はBEV群の7.1サイクル、BEV + Erlotinib群についてはBEV 8.1サイクル、Erlotinib 7.2サイクルであった。両群ともに5%以下の症例でBEVが減量されていたが、Erlotinibは24%の症例で減量されていた。

結論

 切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-line治療後の維持療法としてBEV + Erlotinibは、BEV単独に対してPFSにおける上乗せ効果を示した。

コメント

 維持療法においてBevacizumabにErlotinibを上乗せすることで、維持療法のPFS中央値1ヵ月の延長が得られたが、OSの結果報告は追跡不十分で未報告であった。OPTIMOX試験での維持療法の有用性を根拠に計画された試験ではあるが、OPTIMOX試験では、維持療法が細胞障害性抗癌剤であり、大腸癌領域では分子標的薬のみの維持療法は未だ受け入れられている状況ではない。また、維持療法のPFSが生存にどう寄与するのかも不明瞭である。とは言うものの本試験結果では有意差はあり、BevacizumabとErlotinibの相乗効果については理解できる。Bevacizumab + Cetuximabについての「負の報告」以来広がっていた分子標的薬を併用することの絶望感から解き放たれた印象はある。実際の生存期間の延長効果が有害事象の増加と経済的問題の両面の問題を超える結果として発表されたとき、実臨床で受け入れられていくことになるのだろう。

(レポート:中島 貴子 監修・コメント:佐藤 温)

Reference
  1. 1) Poindessous V, et al.: Clin Cancer Res. 17(20): 6522-6530, 2011[PubMed
  2. 2) Naumov GN, et al.: Clin Cancer Res. 15(10): 3484-3494, 2009[PubMed
  3. 3) Hecht JR, et al.: J Clin Oncol. 27(5): 672-680, 2009[PubMed
  4. 4) Tol J, et al.: N Engl J Med. 360(6): 563-572, 2009[PubMed
btn_close

演題速報 デイリーランキング

このサイトは医療関係者の方々を対象に作成しています。
必ずご利用規約に同意の上、ご利用ください。記事内容で取り上げた薬剤の効能・効果および用法・用量には、日本国内で承認されている内容と異なるものが、多分に含まれていますのでご注意ください。