演題速報レポート

背景と目的

 切除不能進行・再発胃癌2nd-line治療例を対象とした第II相試験、第III相試験におけるOS (overall survival)、PFS (progression-free survival)/ TTP (time to progression)、RR (response rate)、DCR (disease control rate) との関連を検討する。

対象と方法

対象:MEDLINE (2002年1月-2012年1月) 、米国臨床腫瘍学会年次集会 (2002-2011) 、消化器癌シンポジウム (2002-2012) 、ESMO (2002-2012) より下記の基準を満たす論文および抄録の検索を行った。

  1. ・適格基準
    1.  1. 切除不能進行・再発胃癌既治療例を対象とした化学療法の前向き試験
    2.  2. PFS/TTP、OSが報告されている
  2. ・除外基準
    1.  1. 放射線療法や手術 (術前、術後) など他の治療法を併用した試験
    2.  2. HR、Kaplan-Meier曲線のどちらも報告していない試験
  3. 方法:
    1.  1. 論文または抄録よりPFS/TTP、ORR、DCR、OSを抜粋
    2.  2. 論文または抄録よりHRを抜粋するか、RCT (randomized controlled trial) で
        記載がなければ推定1)
    3.  3. 相関はThe nonparametric Spearman rank correlation coefficient (ρ)
        にて検討
    4.  4. サブグループ解析にてheterogeneityを評価

結果

 解析対象は4つのRCTを含む56試験であり、治療法は61、対象は3,038症例であった (図1表1) 。

図1
表1

 56試験のうち、アジアで実施されたのは34試験、アジア以外では20試験、全世界で実施されたのは2試験であった。アジアで実施された試験のPFS中央値は3.0ヵ月、アジア以外では3.3ヵ月と同程度であった。一方、OS中央値はアジアで実施された試験の方が良好であった (各々8.0ヵ月、6.0ヵ月、p<0.01) 。PFS/TTPとOSとの相関は中程度 (ρ=0.52、図2) であり、TTP (ρ=0.29) よりPFS (ρ=0.62) で、また、アジア実施された試験 (ρ=0.32) よりアジア以外で行われた試験 (ρ=0.73) で相関が高い傾向にあった (図3) 。

図2
図3

 Fluorouracil、Cisplatin不応例を対象とした12試験におけるPFS/TTPとOSの相関は低かった (ρ=0.48) 。RRとOS、DCRとOSとの相関も高くなかった (RR: ρ=0.30、DCR: ρ=0.53、図45) 。解析対象に含まれたRCTは4試験と少なかったが、これらのPFSとOSのHRの相関はρ=0.10と低かった。

図4
図5

結論

 切除不能進行・再発胃癌2nd-line治療例においてPFS/TTPやRR、DCRはOSの代替エンドポイントとして用いるには相関が乏しかった。現在進行中のRCTにおける個々のデータを用いた検討が必要である。

コメント

 本研究では、未だ標準的治療が確立されたとはいえない切除不能進行・再発胃癌の2nd-line治療について、今後の効果的な臨床試験の実施を見据え、近年の傾向をさぐるためにMeta-analysisによる解析が行われた。PFS/TTP、RR、DCRなどが、臨床試験の絶対的エンドポイントであるOSの代替となりうるか等の検証を目的とし、4つのRCTを含む56試験の研究結果をまとめて解析されたものと考える。得られたPFSやOSはそれなりに妥当であると思われるが、このlineにおける次期臨床試験計画に、OSの代替エンドポイントとしてPFS/TTP、RR、DCRなどを設定するまでの根拠は得られなかった。
 一般的に、大規模な臨床試験の実施はなかなか難しく、問題点を検証しにくいことから、現時点で存在する研究結果を網羅し、総括的な結論を導き出そうとする試みがMeta-analysisである。本来、heterogeneityのある、質の高い第III相のRCTを多数選ぶべきであるが、演者らが検索した結果、これに該当するRCTが4試験のみであったため、論文化されていない学会抄録レベルの報告も含めて解析された。そのため、演者らが満足する結果が得られなかった可能性がある。今後、同様の研究をする際には、演者らも述べているように、報告されている研究結果のみならず、個別の生データを蓄積し、解析するpooled analysisが必要と考える。

(レポート:山﨑 健太郎 監修・コメント:小松 嘉人)

Reference
  1. 1) Parmar MK, et al.: Stat Med. 17(24): 2815-2834, 1998

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