演題速報レポート

背景と目的

 カルチノイド症候群を伴う進行性神経内分泌腫瘍 (neuroendocrine tumor: NET) 患者に対するRADIANT-2 studyにおいて、Everolimus + Octreotide LAR (E + O) 群はplacebo + Octreotide LAR (P + O) 群に対し、PFS (progression-free survival) 中央値を有意ではないものの5.1ヵ月延長した1) 。しかし、両群の患者背景にアンバランスが認められていたため、本研究ではバイオマーカーを含む患者背景を調整した上で予後因子解析を行った。

患者と方法

 カルチノイド症候群の既往をもつ進行性NET (well- or moderately-differentiated NET: low or intermediate grade) 患者をE + O群 (216例) およびP + O群 (213例) の2群に無作為割付けした。E + O群では Everolimus 10mg/day、Octreotide LAR 30mgを28日毎、P + O群ではOctreotide LAR 30mgを28日毎に投与し、クロスオーバーを許容した。なお、主要評価項目はPFSであり、患者背景因子、血清CgA/尿中5-HIAA (治療開始時に測定) 値を含む予後因子を解析した。

結果

 治療開始時の血清CgA中央値はE + O群251ng/mL、P + O群137ng/mLとE + O群で高く、尿中5-HIAAはほぼ同等であった。E + O群、P + O群ともに、血清CgA値>2×UNLの症例は、≦2×UNLの症例よりPFSは不良であった (図1)。

図1

 また、PFSにおける多変数解析結果は表1のとおりである。

表1

 なお、上記の予後因子を共変数として調整後、E + O群ではP + O群に対し有意にPFSを延長した (HR=0.62, 95%CI: 0.51-0.87, p=0.003: 図2)。

図2

結論

 進行性NET患者において、治療開始時CgA値、PS、肺原発、骨浸潤は予後因子であった。また、これらの予後因子を調整すると、PFSにおける Everolimusの上乗せ効果は有意に認められた。

コメント

 これまで本サイトでは、神経内分泌腫瘍に関する演題が取り上げられていない。整理の意味も込めて、neuroendocrine tumor (NET) についてコメントおよび解説をする。NETは、以前は消化管カルチノイドとして分類されていたものであり、2010年に病理組織学的分類 (WHO分類) が報告された。

 NETは、神経内分泌細胞に由来する。内分泌機能を維持する場合があり、下痢、顔面紅潮、喘鳴などのカルチノイド症候群を引き起こすことがある。Octreotide LARは、米国では1998年からNET患者のカルチノイド症候群の治療に用いられてきた。その後、ドイツにおいて、遠隔転移を有する消化管NETを対象にplacebo対照の第III相試験 (PROMID試験) の結果により、Octreotide LARはカルチノイド症状の有無にかかわらず、NET患者のPFS (主要評価項目) を延長することが証明された (PFS: 14.3ヵ月 vs. 6ヵ月, HR=0.34 (95%CI: 0.20-0.59), p=0.000072)2)
 一方、膵神経内分泌腫瘍 (pNET) 患者を対象とした国際共同第III相試験 (RADIANT-3) では、プラセボ群およびBSC群とを比較し、Everolimusの有効性と安全性が確認されている。ただし、従来から間質性肺疾患 (14.2%) などの重篤な副作用が認められており、十分な注意が必要である。本邦における承認状況は、2011年11月 Octreotide酢酸塩徐放性製剤に「消化管神経内分泌腫瘍」、2011年12月 経口mTOR阻害薬であるEverolimusに「膵神経内分泌腫瘍」の適応が承認されている。
 本報告では、ベースラインのCgAが明らかな予後予測因子であると報告された。今後のNET臨床試験における層別因子としての検討を要する。

(レポート:中島 貴子 監修・コメント:佐藤 温)

Reference
  1. 1) Pavel ME, et al.: Lancet. 378(9808): 2005-2012, 2011
  2. 2) Pavel ME, et al.: J Clin Oncol. 27(28): 4656-4663, 2009

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