演題速報レポート

背景

 進行性大腸癌において、増悪後の治療はOS (overall survival) に影響を与えるため、増悪後の生存期間 (PPS: post-progression survival) はOSに対する決定因子として興味が持たれている。今回、進行性大腸癌におけるPFS (progression-free survival)、PPS、OSとの関連性についての検討結果が報告された。

対象と方法

 1998年1月から2010年12月までの間に、下記12のジャーナル*に掲載された第III相試験の結果をPubMedより検索した。PPSは各試験で報告されているOS中央値とPPS中央値またはTTP (time to progression) 中央値の差として計算された。なお、PFS、OS、PPSの各中央値とPPS/OS比をt検定により比較した。
*Ann Intern Med, Ann Oncol, Br J Cancer, Cancer, Clin Cancer Res, Eur J Cancer, J Clin Oncol, JAMA, JNCI, Lancet Oncol, Lancet, N Engl J Med

結果

 69の試験が今回の解析に含まれ、計154治療群、38,160例が対象となった。2005-2010年の登録人数中央値は246例であり、1998-2004年の174例と比較して、多くの症例が登録されていた (p=0.026)。
 PPSは62試験139治療群で算出可能であった。分子標的薬の使用有無は統計学的に各有効性パラメータに大きな影響を与えなかった。また、治療lineはline進行に比して統計学的な差は小さくなるが、PFS、PPS、OS、PPS/OS比のいずれに対しても有意な影響を与えた。なお、1998-2004年群に対して2005-2010年群はPFS、OS、PPSが有意に延長したが、PPS/OS比に変化はみられなかった () 。

 PFSの長い試験と短い試験とでPPSを比較したところ、1st-lineで約9.5ヵ月、2nd-lineで約7.4ヵ月と、ほぼ一定の値であった () 。

結論

 異なった試験背景によるわずかな差は認めるものの、PPS/OS比に大きな影響を与える因子は認められなかった。今回の研究により、進行性大腸癌においてPFSの延長はOSの延長に置き換えられることが推察された。

コメント

 これまで様々な癌種で、PPSはPFSやTTPと関連しないことが報告されてきた。今回、進行性大腸癌に対して行われた69の第III相試験から、PPSを決定する因子について検討された。その結果、PFS、OS、PPSは化学療法の進歩に伴い延長していたが、PPS/OS比には大きな変動が認められずほぼ一定であり、PPSを規定する因子は特定できなかった。即ち、PFSを延長させることで、それに比例してそのままOSが延長しているという結果であった。結腸癌では2nd-lineや3rd-lineへの移行率が高いものの、OSはほとんどが1st-line (もしくは2nd-line) のPFSで規定されてしまっているという興味深い結果であった。

(レポート:結城 敏志 監修・コメント:寺島 雅典)

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