演題速報レポート

背景と目的

 FOLFOXIRIはFOLFIRIに比し高い治療効果が報告されている1, 2) 。一方、FOLFOX/FOLFIRI + Panitumumabは、KRAS 野生型大腸癌に対して有効性が証明されているが、KRAS codon12/13だけでなくBRAFKRAS codon61、HRASNRAS などの変異がEGFR阻害剤のバイオマーカーである可能性も報告されている3) 。本研究はBRAFRAS 野生型転移性大腸癌に対して、1st-line治療におけるFOLFIXIRI + Panitumumabの有効性と安全性を第II相試験として検証した。

対象と方法

 対象は、BRAF codon 600、KRAS codon12/13/61、HRAS/NRAS codon12/13/61が野生型の未治療進行・再発大腸癌患者であり、1st-line化学療法としてFOLFOXIRI [Irinotecan (CPT-11) 150mg/m2 d1, Oxaliplatin (L-OHP) 85mg/m2 d1, l-LV 200mg/m2 d1, 5-FU 3,000mg/m2 48h継続 d1] + Panitumumab (6mg/kg d1)を12サイクル継続し、維持療法としてPanitumumab ± 5-FUをPDまたは治療抵抗性となるまで継続した。
 主要評価項目はRR (response rate) であり、副次評価項目はPFS (progression-free survival)、転移巣R0切除割合、OS (overall survival)、有害事象、バイオマーカー検索であった。
 閾値60%、期待値80%、p1=80%、α=0.05、β=0.2、BRAF/RAS 変異例を50%と仮定して、70例をスクリーニングした。35例中26例 (76%) 以上に奏効が得られれば、主要評価項目は達成されると設定した。

結果

 87例がスクリーニングされ、37例が適格として登録された (表1) 。

表1

 最初に登録された3例中2例でgrade 3-4 の有害事象 (下痢、好中球減少) が認められたため、5-FUを2,400mg/m2に減量した。以降の34例の有害事象を表2に示す。治療関連死亡は2例であった (表3)。

表2
表3

 全337サイクル中、1st-line化学療法中の治療延期は9%であり、Median dose intensityは5-FU 79%、L-OHP 75%、CPT-11 74%、Panitumumab 81%であった。
 主要評価項目であるRRは92%であった (95%CI: 83-100%) 。Tumor shrinkageを図1に示す。

図1

 転移巣局所治療は15例 (41%) に実施され、R0切除は12例 (32%) 、病理学的完全奏効は3例で達成した。観察期間中央値12.2ヵ月時点において、PFS中央値は10.8ヵ月であり、OSは中央値に到達しなかった。

結論

 BRAFKRAS 野生型進行・再発大腸癌に対して modified FOLFIXIRI + Panitumumabは高いR0切除割合をもたらす有望なレジメンであると考えられた。ただし、好中球減少、粘膜障害は高頻度でみられることから、毒性マネジメントには注意を要する。

コメント

 本試験は、PanitumumabのFOLFOXIRI療法への上乗せ効果検証前の探索的試験に位置づけられる。
 大腸癌ではcytotoxic agentsのdoublet (2剤併用) が標準であり、triplet (3剤併用) の意義が模索されている。同groupで実施されたFOLFOXIRIとFOLFIRIの第III相比較試験の結果より、主要評価項目であるRR (60% vs. 34%, p<0.0001)、副次評価項目であるPFS (9.8ヵ月 vs. 6.9ヵ月: HR=0.63, p=0.0006) およびOS (22.6ヵ月 vs. 16.7ヵ月: HR=0.70, p=0.032) に有意差が認められた1)。本試験では、PFSは10ヵ月を超えているもののOSは報告されなかった。5-FU減量により、前試験より粘膜障害が抑制されたとのことだが、重篤な有害事象が半数で認められている状況からは、1st-line治療の標準治療開発としては、一般化が困難と考える。
 その一方で、高い腫瘍縮小効果から、術前化学療法への応用が期待されている。本試験では、抗EGFR抗体に対するpredict resistanceを除外しselectionを重ねた対象において、Panitumumab + tripletの有効性を評価している。術前化学療法としての意味では、奏効率92%、R0切除率32%、肝転移巣のみの症例に限定すると、R0切除率69% (9/13例) は大変魅力的である。ただし、毒性管理の工夫がまず求められる。

(レポート:中島貴子 監修・コメント:佐藤 温)

Reference
  1. 1) Falcone A, et al.: J Clin Oncol. 25(13): 1670-1676, 2007
  2. 2) Masi G, et al.: J Natl Cancer Inst. 103(1): 21-30, 2011
  3. 3) De Roock W, et al.: Lancet Oncol. 11(8): 735-762, 2010
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