WEBカンファレンス | 臨床の場で遭遇しうる架空の症例に対して、それぞれの先生方に治療方針をご提示いただき、日常診療における治療方針の選択にあたっての問題点等を議論していただいています。

CASE 18 Bevacizumab投与中の進行・再発大腸癌 2009年4月開催

CASE18 写真

ディスカッション 2

テトラサイクリン系抗生剤の予防的投与の有用性と副作用

瀧内: 先ほど吉野先生と大村先生から「ミノサイクリンの予防的投与を行う」というご意見がありましたが、STEPP試験でも同じテトラサイクリン系のドキシサイクリンを含む予防的治療が行われ、有用性が示されています。テトラサイクリン系抗生剤の予防的投与は効果があるのでしょうか。

吉野: テトラサイクリン系抗生剤の効果はSTEPP試験以外でも示されています。以前、STEPP試験の予防的治療(表1)のなかでどれが有効だったのかを検証すべく、過去のエビデンスと照らし合わせたところ、CetuximabとGefitinibの皮膚障害に対するテトラサイクリン系抗生剤の予防的投与の無作為化比較試験が報告されていました(表2)2-4)。やはりSTEPP試験では、ドキシサイクリンに皮膚障害の予防効果があったのではないかと推測されます。いずれも50〜100例程度の試験ではありますが、複数の無作為化比較試験で効果が示されており、ここまで再現性があると一定の意味があるのではないかと思います。本来はSTEPP試験のように抗生剤を前日から投与するのが理想ですが、現実には前日処方はできないので、当日からということにしています。

佐藤(温): 抗EGFR抗体による皮疹は細菌性ではないので、ミノサイクリンは抗炎症効果を目的として使うわけですね。用量は200mg/日ですか。

吉野: ざ瘡に対する比較試験では100mg/日と200mg/日で差がありませんでしたが、200mg/日のほうが効果が強い印象があります。

佐藤(温): ミノサイクリンは胃腸障害を起こしますね。先生はどのように対処されているのですか。

吉野: 胃腸障害は時々みられますが、当院ではプロトンポンプ阻害薬を一緒に処方しているので、それほど困ったことはありません。ミノサイクリンの副作用で本当にやっかいなのはめまいで、ひどい場合にはレボフロキサシンに切り替えています。抗EGFR抗体の皮疹に対するレボフロキサシンのエビデンスはありませんが、皮膚科医と話し合ったところ、クラリスロマイシンに近い作用が考えられるということで選択しました。ただ、めまいがひどくても、ジフェンヒドラミン・ジプロフィリン(トラベルミン®)やメシル酸ベタヒスチン(メリスロン®)の投与で大体は治まります。

大村: 食欲不振やめまいなどの副作用が起こり得るとしても、やはりこの患者さんにとっては皮疹を軽度に抑えることが重要だと思います。食欲に対しては、管理栄養士の協力を得て経口補助栄養食品による栄養障害の防止を試みるべきです。栄養サポートも含めて、チーム医療で対応する効果は大きいと思います。

瀧内: 吉野先生から、「小規模ではあるものの複数の無作為化比較試験より、テトラサイクリン系抗生剤の予防的投与は意味があるのではないか」という指摘がありましたが、坂本先生は統計家として推奨されますか。

坂本純一先生

坂本: 私もその通りだと思います。必ずしも「第III相試験でなければ推奨できない」ということはありません。FDAが承認した薬剤でも、約10%は第II相試験の結果で承認されており、しかも8%程度はsingle arm試験です。

瀧内: 多くの先生方のご意見は、治療開始時から予防的治療をしたほうがよいということでよろしいでしょうか。

佐藤(温): 本症例については、年齢や性別、職業、仕事復帰への希望などを考慮し、ミノサイクリンの予防的投与をしたほうがよいというのは同意しますが、現在あるデータだけで一律に「ミノサイクリンを予防的に投与すべき」というコンセンサスに達するのは難しいのではないでしょうか。EGFR阻害薬の皮膚障害治療に精通した皮膚科医の間でも、依然意見は分かれています。

WEBカンファレンスのトップへ
ディスカッション 1
ディスカッション 3
このページのトップへ
MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc.
Copyright(C) MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc. All Right Reserved.

GI cancer-net
消化器癌治療の広場

Supported by 武田薬品工業

Copyright © PharMa International Inc. All rights reserved.