免疫チェックポイント阻害剤の話題

Nivolumabの使用経験から考える実臨床への導入

佐藤先生

室:ありがとうございました。今回はせっかくの機会ですので、Nivolumabの臨床試験に参加された先生方に実際に使用された印象や適切な治療ラインについてのお考えなどを伺いましょう。先生方はNivolumabを単剤で投与して、どのような印象を受けましたか。

佐藤:仁科先生がお話しされたように第III相試験におけるNivolumabの奏効率は10%程度でしたが、早期から有効性が認められている患者が存在します。副作用の発現リスクが低くて使いやすい薬剤だと感じています。

沖:当院でNivolumabを投与した症例には副作用は認められなかったので、私も使いやすい薬剤だと感じました。胃癌のサルベージラインでの使用は薬剤の投与期間が短いこともあり、注意を要する副作用の発現頻度は多くならないのかもしれません。

仁科:私も同じ意見で、殺細胞性薬剤と比べても副作用は頻度が少なく、程度も軽い印象があります。ただし、長期投与時には副作用が発現する確率は高まりますし、一定の確率で重症の副作用が発現することを知っておく必要があります。従来の胃癌薬物療法では経験しなかった副作用にも対応できるよう、院内体制をしっかり整えることが大切だと思います。

設樂:私はこの試験には参加していませんが、複数の免疫チェックポイント阻害剤の治験に参加した経験から免疫チェックポイント阻害剤のベネフィットを実感しています。一方、Nivolumabの顕著な効果が得られない患者さんが半数以上いることも事実ですので、どの治療ラインでNivolumabを使用すべきかについては化学療法との比較試験の結果を待ちたいと思います。仁科先生がおっしゃったように、副作用が発現する可能性を念頭に置き、検査やコンサルティングをしっかり行うことが今まで以上に重要になるでしょう。

室:海外ではNivolumabの投与開始後すぐに増悪してしまったケースも報告されていますが、設樂先生はそのようなご経験はありますか。

設樂:免疫チェックポイント阻害剤投与後から早期に病勢進行や症状の悪化を経験した患者さんもいます。

室:サブグループ解析では5th-line以降で本治療を施行された患者集団で特にNivolumab群がBSC群に比しより良好な結果が認められましたが、実臨床ではどの治療ラインでの使用が望ましいでしょうか。

佐藤:私はプラチナ製剤、5-FU製剤、Paclitaxel+Ramucirumab、Irinotecanを使用した後がよいと考えています。臨床試験の結果を踏まえると、やはり4th-lineや5th-lineでの使用が推奨されることになると思います。

仁科:2nd-lineはPaclitraxel+Ramucirumab療法を実施すると思いますが、問題は3rd-line以降でNivolumabとIrinotecanのどちらを選択するかです。3rd-lineでも比較的元気な患者さんには、4th-lineでNivolumabを使用することを前提に、Irinotecanを投与してよいと思うのですが、そうでない患者さんの場合はよく相談した上でIrinotecanの投与を決定すべきであると思います。世間的にも注目度の高いNivolumabの効果を期待する方は多いと思います。

設樂:現時点ではデータがないので1st-lineや2nd-lineの推奨にならないことは確かですね。

室:Nivolumabを使用する治療ラインは、サブグループ解析の結果を考慮して複数のレジメンを使用した後に導入すべきというご意見と、患者さんの希望などを考慮しつつ3rd-lineあるいはそれ以降から使用してもよい、という2つのご意見が上がりました。

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