瀧内:それでは最後に、各派から「この症例にはこの抗体医薬を使いたい」という具体例をあげていただきたいと思います。抗EGFR抗体派は、切れ味がよいことが一番のメリットということでしたが、抗EGFR抗体を強く勧める症例はありますか。
江見:Huge mass(巨大転移)ですね。奏効すれば切除できる大きさでKRAS野生型の症例であれば、抗EGFR抗体を使いたいです。
山ア:脈管侵襲がある場合も、腫瘍縮小により腫瘍が血管から離れれば切除が行える可能性がありますので、このような症例には、抗VEGF抗体よりも抗EGFR抗体を選択したいです。
瀧内:なるほど。では、抗VEGF抗体派の先生方は、どのような症例が抗VEGF抗体に適していると思われますか。
橋:現時点では、抗EGFR抗体がよく効く症例の詳細なプロファイルがわかりませんので、conversionできない7割の患者さんのことを考えると、基本的には抗VEGF抗体を使ったほうがよいと思います。
仁科:私はconversionが難しく、palliative therapyになる可能性が高そうな症例には抗VEGF抗体がよいと思います。
瀧内:先生方のお話をまとめると、切除の可能性が高そうな症例には抗EGFR抗体が、切除の可能性が低い症例には抗VEGF抗体がよいのではないか、ということですね。
本日は、1st-lineでの抗EGFR抗体の使用経験がないなかでのプロコンということで、難しい面も多かったと思いますが、今回のディスカッションは、cureを目指す治療戦略を考えるうえで非常に参考になりました。どうもありがとうございました。