The European Cancer Congress 2013 - ESMO
イタリアから報告された胃癌周術期治療に関する発表である。本試験ではT3-4, N0M0 and/or N+M0症例に対して術前に化学療法 (EOX療法 3サイクル)、化学放射線療法としてL-OHP、Capecitabine + IMRT (強度変調放射線療法) を行った後に手術 (+場合により術中照射) が行われ、その安全性、効果が検証された。主要評価項目はpCR率で、第一段階として21例中pCRが1例以下であれば試験中止、そうでなければ症例数を追加して検討する予定であり、本試験では21例中4例 (19%) にpCRを認め、試験が継続されることとなった。
術前補助化学療法レジメンとしてREAL-2試験の結果からEOX療法が選択されたことは理解できるが 1)、IMRT併用時にL-OHPが30mg/m2のweekly投与、Capecitabineが625mg/day の35日間連続投与と一般的に使用される用量から変更されており、その根拠が不明である点、今回登録された症例では食道胃接合部癌が半数近くを占めており、それらを胃癌と同列に論じてよいのかという点、また、最終的に本試験で高い抗腫瘍効果が得られたとしても実際の臨床としてどの施設でもIMRTを行うことができるのかなど、疑問に思う点は多い。
本邦においてはACTS-GC試験 2) で示された術後補助化学療法としてのS-1内服が、胃癌周術期における標準治療として認識され、これをもとに術後注射薬の併用や術前補助化学療法の開発、治療効果の検証が進められている状況であり、術前だけに強力な化学療法、化学放射線療法を行う本レジメンが使用されることはないだろう。ただし、欧州における胃癌治療の開発を知るという面や、胃癌周術期治療における放射線治療 (特にIMRT) のpCR、OSへの影響、また今後予定されている治療期間中のQOL、栄養指標の評価など、本試験から学ぶことは多いと考えられる。
これまで胃癌における周術期治療の有効性について様々な報告がされているが、限定的なものが多い。胃・食道胃接合部癌における手術単独と術後化学放射線療法併用とを比較した検討では、術後化学放射線療法併用により無再発生存期間の延長を認めたものの、遠隔転移は不良な傾向がみられた 3)。食道胃接合部癌における手術単独と周術期化学療法併用の検討では、周術期化学療法併用によりPFS (progression-free survival) (p<0.001) およびOS (overall survival) (p=0.009) の有意な延長を認めたが、術後補助化学療法を完遂できた症例は50%に満たなかった 4)。一方、進行食道胃癌に対する1st-lineとしてL-OHPおよびCapecitabineの有効性を検討したREAL-2試験では、EOX (Epirubicin + L-OHP + Capecitabine) 療法がECF (Epirubicin + Cisplatin + 5-FU) に対して良好な改善傾向を示している 1)。
また、周術期化学放射線療法によりpCRが23%、R0切除率が95%を示したという報告もあり 5)、局所進行胃癌は、術前補助療法により切除可能となる場合がある。
そこで、術前化学療法 (EOX療法) + 化学放射線療法 (RT-OX療法) + 手術による治療法の有効性および実行可能性 (feasibility) を評価する多施設共同第II相試験が行われ、今回は、事前に計画された中間解析の早期結果が報告された。
18〜75歳でECOG PS 0/1、T3-4、N0/M0またはN+/M0の胃癌および食道胃接合部癌 (Siewert分類: II/III) であった。
EOX療法の投与スケジュールは、Epirubicin (50mg/m2 day 1) + L-OHP (130mg/m2 day 1) + Capecitabine (625mg/m2 1日2回、day 1-21) で3週間を1サイクルとし、3サイクル施行した (図)。そして引き続きRT-OX療法として、IMRT (総線量45Gy/25分割、5 weeks) + Capecitabine (625mg/m2 1日2回、day 1-35) + weekly L-OHP (30mg/m2 day 1, 8, 15, 22, 29) を行った。
EOX療法の2コース目終了後にPET-CTにて奏効の評価を行い、RT-OX療法終了4週後にPET-CTにて再stagingを実施した。手術は、RT-OX療法終了6週 (EOX療法開始から22週) 後に施行し、場合により術中照射 (10Gy) を行った。
主要評価項目は病理学的完全奏効 (pCR) 率とし、最初の21例中pCR達成例が1例以下の場合は試験を終了し、2例以上の場合は41例まで登録を継続することとした。副次評価項目はEOX療法およびRT-OX療法の実行可能性、安全性、腫瘍のdownstaging、R0切除率、無病生存期間、OSであった。なお、実行可能性はRT-OX療法 + 手術の完遂率で評価した。
2008年11月〜2012年12月までに24例 (食道胃接合部癌11例、胃体部癌6例、胃前庭部癌7例) が登録された。患者背景は、平均年齢58歳、男性19例、PSは0が20例、1が4例、stageはT3/N0 5例、T2/N+ 3例、T3/N+ 14例、T4/N+ 2例であった。
24例中21例 (87%) がEOX療法を完遂し、21例 (100%) がRT-OX療法を完遂した。手術は21例全例で行われ、術中照射は12例 (57%) で実施された。なお、非完遂の3例の中止理由は、患者による継続拒否が1例、腫瘍からの出血が1例、EOX療法2サイクル施行後のgrade 2の血液毒性の遷延化が1例であった。
pCRは4例 (19%) で達成され、いずれもT3/N+例であった (表1)。また、14例 (67%) で腫瘍のdownstagingが達成され、リンパ節の評価が可能であった17例中11例 (65%) でdownstagingが認められた。
EOX療法中、計4例 (19%) にgrade 3の有害事象が認められたが、grade 4は認められなかった (表2)。また、全63サイクル中、用量の調整を要したのは7サイクル (11%) であった。
RT-OX療法中、計9例 (43%) にgrade 2/3の有害事象がみられた (表3)。また、18例 (86%) が予定総線量 (45Gy) の照射を完遂し、Capecitabine投与の完遂は17例 (81%)、L-OHP投与の完遂は12例 (60%) であった。
R0切除は19例 (90%) で達成され、残りの2例には緩和的手術が行われた。13例に胃全摘術が、6例には胃亜全摘術が施行され、D2リンパ節郭清は19例で実施された。また、重篤な術後合併症が1例に認められた。なお、EOX療法開始から手術までの日数の中央値は163日であった。
局所進行胃癌に対して術前EOX + RT-OX (NEOX-RT) 療法後の手術は安全に施行可能であることが示された。Grade 3以上の有害事象がみられたものの、多くの患者が計画通りに治療を完遂した。19%というpCR率は極めて良好であり、試験継続の条件 (21例中2例以上でpCR達成) を満たした。手術までの期間も計画通りであり、高いR0切除率が示された。