The European Cancer Congress 2013 - ESMO
TRIBE試験はFOLFIRI + Bevacizumab (Bev) に対するFOLFOXIRI + Bevの有用性を検証した第III相試験であり、2013年米国臨床腫瘍学会で主要評価項目であるPFS (progression-free survival) において優越性が報告された (FOLFIRI + Bev群9.7ヵ月 vs. FOLFOXIRI + Bev群12.1ヵ月, HR=0.77, p=0.006)。今回は本試験におけるearly tumor shrinkage (ETS) とdeepness of response (DoR) の報告がなされた。
ETSやDoRの概念はCetuximabを用いたCRYSTAL試験およびOPUS試験で報告されており1)、ETS・DoRの得られた症例においてOS (overall survival) の延長が認められ、また、DoRを得ることで、いわゆるconversion therapyとしての有効性も期待されている。
今回の報告でもFOLFOXIRI + BevでETS 64%、DoR中央値 42.2%と、FOLFIRI + Bevに比べていずれも有意差をもって良好な結果であり、全症例で解析してもETS・DoRの得られた症例でPFSが延長することが示されたことから、FOLFOXIRI + Bevは早期に腫瘍縮小が得られ、縮小率も高く、PFS延長に寄与することが示されたこととなる。
しかし、試験間の比較ではあるが、過去の報告と比較してみるとKRAS 野生型におけるFOLFIRI + Cetuximab (CRYSTAL試験: ETS 62%、DoR中央値50.9%)、FOLFOX4 + Cetuximab (OPUS試験: ETS 69%、DoR中央値57.9%) の結果は、本試験のETSとほぼ同等であり、DoRは本試験のほうが数字上は低い結果だった。ただし、RAS 変異型においては有望視されるレジメンがないなかで、FOLFOXIRI + BevのETS・DoRは希望の星であり、RAS 変異別の解析結果が報告されることを期待したい。
TRIBE試験において FOLFOXIRI + Bevは FOLFIRI + Bevに比べて PFS および奏効率において有意な有用性を示した。
また、近年報告されている、早期腫瘍縮小 (ETS: early tumor shrinkage) 効果と奏効の深さ(DoR: deepness of response) は、臨床的エンドポイントであるOSとの相関が認められている1-3)。
対象は、切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-line治療対象508例であり、FOLFIRI + Bev群とFOLFOXIRI + Bev群とに無作為に割り付けられ、それぞれ12サイクルまで投与した後、5-FU/LV + BevによりPDになるまで治療が続けられた。また、施設、PS 0 or 1/2、術後補助化学療法の有無により層別化された。
ETSは、RECISTを基準とした標的病変の長径和を、ベースライン時と8週目で比較した (カットオフ値: 20%) 2)。
DoRは、RECISTを基準とした標的病変の長径和を、ベースラインを規準として、新病変および標的病変以外の増悪がない状況において最も腫瘍縮小が認められた時点と比較した (カットオフ値: 中央値)。
ETSはFOLFIRI + Bev群 (222例) 51%、FOLFOXIRI + Bev群 (221例) 64%であった (表1)。また、ETSが認められた症例 (ETS>20%) と認められなかった症例 (ETS≦20%) におけるPFS中央値は、それぞれ12.7ヵ月、10.0ヵ月であり、ETS>20%で有意な延長を認めた (HR=0.66, p<0.0001) (図1)。
DoR中央値はFOLFIRI + Bev群 (245例) 33.8%、FOLFOXIRI + Bev群 (239例) 42.2%であり、両群の中央値である38.9%超の割合はそれぞれ42%、58%であった (表2)。また、DoRが中央値超の症例 (DoR>38.9%) と中央値以下の症例 (DoR≦38.9%) のPFS中央値はそれぞれ13.1ヵ月、9.3ヵ月であり、DoR>38.9%で有意な延長を認めた (HR=0.61, p<0.0001) (図2)。
FOLFOXIRI + BevはFOLFIRI + Bevと比べて、ETS、DoRいずれも優れていた。また、ETSとDoRはPFSと相関し、治療法に関係なく有意な延長を示した。病勢進行の後のOSとの相関についての検討は現在進行中である。