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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 小腸癌はまれな腫瘍であり、日本では消化器癌のうち1~3%程度とされる。これまでの検討で、化学療法を実施することが小腸癌患者の生存の延長に寄与する可能性は示唆されているが、小腸癌に対する標準治療は定まっておらず、大腸癌に準じた化学療法が行われているのが現状である。

 本試験では、小腸癌に対する1st-lineとしてのFOLFOX療法の有効性と安全性が検討された。

対象と方法

 本試験は、多施設共同単アームオープンラベル第II相試験として実施された。対象は、病理学的に乳頭部癌を除く小腸原発の腺癌と診断され、局所進行もしくは遠隔転移で、切除不能または再発の小腸癌であり、ECOG PS 0-2、20-80歳で、化学療法歴や放射線治療歴のない症例である。mFOLFOX6療法は、L-OHP (85 mg/m2) および l-LV (200 mg/m2) を2時間かけて点滴静注し、5-FU 400mg/m2のbolus投与を行い、5-FU (2,400 mg/m2) を46時間持続静注した。そして、これを2週毎に繰り返した。

 主要評価項目は1年PFS、副次評価項目は奏効率、OS、PFS、安全性である。目標症例数は当初35例の予定であったが、24例に修正された。

結果

 2010年4月~2012年11月までに24例の症例が登録された。患者背景 (表1) は、男性/女性 : 18/6例、年齢中央値63歳 (範囲:31?79)、PS 0/1 : 17/7例、局所進行/遠隔転移 : 2/22例、原発巣が十二指腸/空腸 : 14/10例、測定可能病変 : 有/無 20/4例であった。

表1

 観察期間中央値14.7ヵ月の時点において、主要評価項目である1年PFSは23.3% (95% CI: 8.6-42.2) であり、PFS中央値は5.9ヵ月 (95% CI: 3.0?10.2) であった (図)


 1年OSは 66.7% (95% CI: 44.3-81.7) であり、OS中央値は17.3ヵ月 (95% CI: 11.7-19.0) であった。

 RECIST ver1.1による評価可能病変を有する20例のうち、CR1例、PR8例、SD7例であり、奏効率は45%、病勢コントロール率 (CR + PR + SD) は80%であった。

 Grade 3以上の主な毒性は、好中球減少 (38%)、貧血 (25%)、末梢神経障害 (25%)、 消化管狭窄 (17%)、疲労 (8%)、ビリルビン上昇 (8%)などであり、大腸癌において報告されているものと同程度であった (表2)

表2

 後治療の内訳は、1st-lineとして本レジメン (またはsLV5FU2療法) を継続中が7例、2nd-line治療への移行が11例、BSCが4例であった。

結論

 mFOLFOX6療法は、小腸癌の1st-line治療として適度な効果を認め、十分に忍容可能であった。

コメント

 小腸癌は消化管癌においても比較的まれな癌である。症例数が集積されにくいことから、臨床試験を十分に行うことができず、化学療法のエビデンスはなかなか蓄積されない状況にある。本試験も目標症例数に到達することなく解析された。ただし、海外においても小規模の第II相試験の報告がわずかに散見されるにとどまる状況の中で、日本よりデータを報告したことに大きな意義があると考える。今後、本データを基軸にして、更なる発展のあることが望まれる。

(レポート:坂井 大介 監修・コメント:佐藤 温)

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