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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 切除不能進行・再発大腸癌に対するS-1 + L-OHP (SOX) は、日本の第II相試験1) および韓国の第III相試験2) において有望な有効性と安全性が示されている。SOFT試験は、1st-line治療としてのSOX + Bevacizumab (Bev) 療法のmFOLFOX6 + Bev療法に対する非劣性を検証した日本の第III相試験である。本試験の結果は既に報告されているとおり、主要評価項目であるPFSにおいてSOX + BevのmFOLFOX6 + Bevに対する非劣性が示された3)。今回は3年以上の追跡期間におけるOSの最終解析が報告された。

対象と方法

 対象は20~80歳でECOG PS 0/1、化学療法および放射線療法歴のない切除不能進行・再発大腸癌患者512例であり、mFOLFOX6 + Bev群256例およびSOX + Bev群256例に無作為に割り付けられた。

 主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、奏効率、病勢コントロール率、R0切除率、重篤な副作用などであった。今回の解析においては、2013年9月30日をカットオフとして、データ更新がなされた。

結果

 今回の最終解析において、追跡期間中央値37.7ヵ月でのOS中央値は、mFOLFOX6 + Bev 群29.7ヵ月 (95% CI: 26.5-33.1)、SOX + Bev群29.6ヵ月 (95% CI: 25.8-34.7) であり、OSに対するHRは1.018 (95% CI: 0.823-1.258) 、非劣性に対するp値は0.0133であった (図1)

図1

 また、主要評価項目であるPFS中央値 (追跡期間中央値31.2ヵ月) は、mFOLFOX6 + Bev 群では11.7ヵ月 (95% CI: 10.9-13.3)、SOX + Bev群では12.2ヵ月 (95% CI: 10.7-13.0) であり、HRは1.051 (95% CI: 0.876-1.262)、非劣性に対する
p値は0.0115 であった (図2)

図2

 PFSおよびOSのサブグループ解析では、両群において臨床的に有意となる要素は認められず、奏効率およびR0切除率についても群間差は認められなかった。
 安全性は、以前の報告の結果とほとんど変わらず、grade 3以上の有害事象 (10%以上) はmFOLFOX6 + Bev群では好中球減少、末梢神経障害が、SOX + Bev群では末梢神経障害が認められた。
 2nd-line治療は、mFOLFOX6 + Bev群では203例 (80.2%)、SOX + Bev群では209例 (81.6%) に行われた (表)


結論

 切除不能進行・再発大腸癌の1st-line治療として生存期間において両群で同じような結果を示した。また本試験において、SOX + BevのmFOLFOX6 + Bevに対するPFSでの非劣性が改めて確認された。SOX + BevはmFOLFOX6 + Bevに置き換えて使用することができる。

コメント

 切除不能進行・再発大腸癌患者に対する標準的な1st-line治療の1つであるBev + FOLFOX療法に対して、Bev + 経口抗癌剤S-1 + L-OHP (SOX療法) の非劣性が検証された。この試験結果では、OSおよびPFS曲線は全く重なっており、毒性においても差はないことから、Bev + SOX療法は標準的な1st-line治療の選択肢の1つとなる。

 S-1は本邦では消化器癌において最も頻用される薬剤の1つであり、本邦の臨床医はその管理に長けていることからも、今後はその簡便性から頻用されるレジメになると考える。本試験では、SOX群に消化管穿孔症例が続いて発生したことから299例登録時にプロトコール改定が行われ、原発巣消化管狭窄のある症例、画像的に腹膜播種が明らかな症例を除外基準として追加されている。やはりBevの適正使用基準の遵守は重要である。

 試験デザインについてコメントするとすれば、本来、非劣性試験では患者にとっての何らかの有用性が科学的に示されるべきであり、本試験においてQOL評価がなされていないことが悔やまれる。経口抗癌剤はその簡便性から利用価値が大変大きいことは、みな認識するところであり、ポートフリーになることが患者にどれだけの利益をもたらすのか、科学的に明らかにされるべきであったと考える。ただし、経済的評価については後解析で可能であることから、追加報告を期待する。

?(レポート:坂井 大介 監修・コメント:佐藤 温)

Reference
  1. 1) Yamada Y, et al.: Br J Cancer. 98(6): 1034-1038, 2008[PubMed
  2. 2) Hong YS, et al.: Lancet Oncol. 13(11): 1125-1132, 2012[PubMed
  3. 3) Yamada Y, et al.: Lancet Oncol. 14(13): 1278-1286, 2013[PubMed][論文紹介

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