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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 大腸癌の化学療法に関するESMOガイドラインでは、多発転移性病変もしくは限局転移巣を有する症例に対する治療後の切除を目標として、1st-line治療から多剤併用化学療法を行うことが推奨されている1)

 PRIME試験のRAS 解析では、Panitumumab + FOLFOX4療法はFOLFOX4療法に比べて、1st-line治療においてOSを改善するレジメンであることが示された2)。さらに最近の報告では、肝限局転移のRAS 野生型症例において、OSが長い傾向にあることも報告されている3)。今回、PRIME試験において、非肝限局転移を有するRAS 野生型症例に対して、Panitumumab + FOLFOX4療法の効果を探索的に解析した。

対象と方法

 PRIME試験は、前治療歴のない切除不能進行・再発大腸癌患者をPanitumumab + FOLFOX4群とFOLFOX4群に割り付け、効果と安全性と比較した第III相試験であり4)、この探索的解析時には、全体の80%以上の症例でOSイベントが認められている。

 今回は非肝限局転移を有するRAS野生型症例において、PFS中央値およびOS中央値に加えて3年OSを評価し、Cox比例ハザードモデルによる解析を行った。

結果

 RAS 野生型症例505例のうち、非肝限局転移を有する適格症例は416例 (82%) であった (患者背景:表1)。

表1

 RAS 野生型症例の肝限局および非肝限局転移例のOS、PFSを表2に示す。非肝限局転移例のOS中央値はPanitumumab + FOLFOX4群23.8ヵ月、FOLFOX4群18.4ヵ月であり (HR=0.78, 95% CI: 0.63-0.96, p=0.0185) (図1)、PFS中央値は各11.1ヵ月、8.0ヵ月であった (HR=0.73, 95% CI: 0.60-0.90, p=0.0027) (図2)

表2

図1

図2

 3年OSは、全症例でPanitumumab + FOLFOX4群33%、FOLFOX4群24%であり、非肝限局転移例で各31%、23%、肝限局転移例で52%、37%であった。

結論

 本サブ解析において、RAS 野生型の非肝限局転移例に対しても、Panitumumab + FOLFOX4療法がPFS、OSにおいてFOLFOX4療法より優位であることが示された。

 肝限局転移例では、統計学的有意差は認めなかったものの、Panitumumab + FOLFOX4群のOS中央値は、FOLFOX4群と比して7ヵ月延長した。Panitumumab + FOLFOX4療法は肝限局、非肝限局にかかわらず効果的な1st-line治療の選択肢となり得るだろう。

コメント

 PRIME試験のアップデートのサブ解析について、これまでも本サイトで紹介してきた5)

 2011年の最終報告においても、KRAS 野生型の肝限局転移 (LLD) 例における肝転移巣根治切除率はPanitumumab + FOLFOX4群が28%とFOLFOX4群の18%より高く、肝切除できた症例では、切除できない症例に比し、有意にMSTが高いとの報告であった。今回は、non-LLDで切除できない症例に関する報告であるが、上述の如くRAS 野生型であれば、同様にPanitumumabの上乗せによるOSの延長が認められた。LLDは、全症例数の2割と少数例での解析であるため、OSでは有意差までは証明できなかったが、残り8割のnon-LLDにおいてはOSのHR=0.78で有意に延長されることが示された。PRIME試験のupdataのデータではあるが、LLD、non-LLDのいずれの場合でも、KRAS 野生型であれば、効果的であることが確認され、進行大腸癌に対する1st-line治療として有効なレジメンであることが再認識された。

(レポート:砂川 優 コメント・監修:小松 嘉人)

Reference
  1. 1) Schmoll HJ, et al.: Ann Oncol. 23(10): 2479-2516, 2012[PubMed
  2. 2) Douillard JY, et al.: N Engl J Med. 369(11): 1023-1034, 2013[PubMed
  3. 3) Peeters M, et al.: Eur J Cancer 49(Suppl 4),S17-S18; Abstract MC13-0022, 2013
  4. 4) Douillard JY, et al.: J Clin Oncol. 28(31): 4697-4705, 2010[PubMed
  5. 5) Douillard JY, et al.: 2011 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3510[学会レポート

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