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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ

背景と目的

 切除不能進行・再発大腸癌患者の1st-lineとしてBevacizumab (Bev) 併用レジメンを用いることが標準的であるが、病勢進行と重篤な有害事象なしに治療を継続できる期間は、多くは4~6ヵ月に限られている。

 そこで今回、4~6ヵ月間のBev併用化学療法の終了後の治療中断 (chemo-holiday) がBev継続投与に劣らないことを検証する目的で、多施設共同オープンラベル第III相試験を実施した。

対象と方法

 本試験はスイスの26施設が参加して行われた。4~6ヵ月のBevを含む標準的な1st-line化学療法を行い、病勢進行が認められなかった切除不能進行・再発大腸癌患者をBev継続群 (7.5 mg/kg、3週毎) と無治療群とに1 : 1の割合で無作為に割り付けた (図1)。CT検査は、無作為化の時点からPDになるまで、6週間毎に実施した。

 主要評価項目はTTP (time to progression)、副次評価項目はPFS (progression-free survival)、2nd-lineまでの期間、OS (overall survival)、Bevacizumabに関連した有害事象、医療費であった。

図1

結果

 評価対象は262例 (各群131例)、観察期間中央値は30.1ヵ月 (範囲 : 2.7-54.9ヵ月) であった。TTP中央値はBev継続群4.1ヵ月、無治療群2.9ヵ月 (HR=0.74, 95% CI: 0.57-0.95, 非劣性p=0.47) とBev継続群で有意に良好であった (図2)

図2

 1st-line開始からのPFSはBev継続群9.5ヵ月、無治療群8.5ヵ月 (HR=0.75, 95% CI: 0.58-0.96, p=0.021) とBev継続群で有意に良好であったが、1st-line開始からのOS中央値はそれぞれ25.1ヵ月、22.8ヵ月 (HR=0.83, 95% CI: 0.61-1.12, p=0.218) と有意差はなかった (図3)

図3

 なお、無作為化後2nd-lineまでの期間はBev継続群5.9ヵ月、無治療群4.8ヵ月 (HR=0.81, 95% CI: 0.62-1.05, p=0.104) であった。Grade 3以上の有害事象は、Bev投与群では高血圧が6%、血栓症が2%、無治療群では高血圧が1%に認められた。また、医療費の平均値はBev継続群37,596米ドル、無治療群8,180米ドルであった。

結論

 本試験において、無治療群のBev継続群に対する非劣性を示すことはできず、TTPのHRの95% CIからBev継続の優越性が明らかとなった。Bev継続群と無治療群のTTP中央値の差は5週間であったが、OSには有意な差は認められていない。Bevの継続は医療費が高額になるため、Bev継続の有用性はこの点についても考慮する必要がある。

コメント

 抗癌剤の有害事象によるQOL低下を緩和するために、化学療法を休止するchemo-holidayを設定する試みが続けられている。毒性が高度でなくても休薬するという方法は、実地臨床においていまだ広く取り入れられるには至っていない。しかし、医療費軽減の観点からもchemo-holidayの設定の妥当性を確認することは重要である。既報のOPTIMOX1試験1) やDREAM試験2) とは異なり、2013年米国臨床腫瘍学会では完全なdrug-freeの期間が設定された本試験やCAIRO-3試験3) が報告された。

 L-OHPの神経毒性予防については、2013年米国臨床腫瘍学会の発表においてCaMg静注の有用性が否定された4)。したがって、休薬は残された唯一の神経毒性軽減の手立てといえる。本試験の無治療群のTTPはCAIRO-3試験3) の無治療群のPFS-1と比較して短いが、これには6週毎にCTを施行するというサーベイランススケジュールが影響している可能性がある。なお、導入療法後に完全休薬 (chemo-holiday) としても、Bev継続群と比較してOSに有意な差は認められなかった。ただし、癌の化学療法の価値はOSと全経過中の累積QOLを勘案して決定すべきである。そのため、chemo-holiday中の患者のQOL改善度とTTPの短縮などを合わせて考慮しなければ、Bev継続投与の意義を判定することはできない。

(レポート:岩本 慈能 監修・コメント:大村 健二)

Reference
  1. 1) Tournigand C, et al.: J Clin Oncol. 24(3): 394-400, 2006 [PubMed][論文紹介]
  2. 2) Tournigand C, et al.: 2012 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #LBA3500
  3. 3) Koopman M, et al.: 2013 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3502 [学会レポート]
  4. 4) Loprinzi CL, et al.: 2013 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3501 [学会レポート]

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