論文紹介 | 監修:京都大学大学院 医学研究科 坂本純一(疫学研究情報管理学・教授)

3月

OPTIMOX1: 進行結腸・直腸癌におけるFOLFOX 4またはStop-and-Go 形式によるFOLFOX 7の無作為化比較試験 GERCOR study

Tournigand C, et al., J Clin Oncol. 2006; 24(3): 394-400

 転移性結腸・直腸癌においてfirst lineでの標準的レジメとしてFOLFOX 4が用いられているが、L-OHPの投与量の蓄積による神経毒性によって奏効中でも治療の中断を迫られる現象がしばしば生じている。本研究ではFOLFOX 7をベースにした間欠的なL-OHP投与という新戦略を評価した。
 化学療法未治療で切除不能な転移性結腸・直腸癌患者(年齢18〜80歳、測定可能病変≧1cm、WHOのPS 0〜2)620例のうち、311例を2週間おきにFOLFOX 4を施行するA群に、309例をFOLFOX 7を6サイクル施行後にsLV5FU2レジメを12サイクル施行して、さらにFOLFOX 7を再施行するB群に割り付けた。PFSの中央値はA群では9.0ヵ月であったのに対しB群では8.7ヵ月であった(ハザード比1.06;95%CI 0.89〜1.20、p=0.47)。また、OSの中央値はA群では19.3ヵ月であったのに対し、B群では21.2ヵ月であり(ハザード比0.93;95%CI 0.72〜1.11、p=0.49)、PFSとOSに有意差は認められなかった。奏効率はA群で58.5%、B群で59.2%でありこれも有意差はみられなかった。治療早期のNCI-CTCによるグレード3〜4の有害事象はA群で54.4%、B群で48.7%であり有意差はなかったが、B群では、FOLFOX 7からsLV5FU2に移行した7サイクル以降でのグレード3〜4の有害事象が6サイクルまでと比べて少なかった。B群でプロトコールに沿ったL-OHPの再投与を施行されたのは40.1%のみであったが、このうち69.4%に腫瘍縮小効果、あるいはSDが認められた。
 本研究により、6サイクルのFOLFOX 7レジメ以降にL-OHP投与を安全に中止しうることが示された。今後は、中止後のL-OHPの再投与に関する十分な検討が必要である。

考察

L-OHPのStop-and-Go投与法は新しい標準投与法となり得るか?

 本試験で提案されている新しいL-OHPの投与法は、FOLFOX 7の6サイクルとsLV5FU2の12サイクルを交互に投与するStop-and-Go形式である。本治療法と我が国でも標準治療法となったFOLFOX 4との比較では、PFS、OS、奏効率に有意差は見られず、グレード 3、4の有害事象、特にL-OHPに特有の神経障害は減少した。しかしながら、新投与法におけるL-OHPの再投与率は40.1%にとどまり、いずれの治療法でもCPT-11等の2次以降の治療が70%以上の症例に施行されており、結果の解釈を複雑にしている。わが国でのL-OHPの投与可能量は85mg/m2であるため、本試験でのFOLFOX 7のL-OHP 130mg/m2はそのまま適応はできないが、5-FUのbolus投与が省略されている簡便な投与法であるため外来化学療法にも適しており、日本独自の投与サイクルを模索してもよいかもしれない。この試験の結果を受けて、L-OHP再投与の耐容性を再評価するOPTIMOX 2と、L-OHPを100mg/m2に減量、5-FUを3,000mg/m2に増量し、さらにbevacizumabを加えたDREAM/OPTIMOX 3 studyが進行中とのことである。長期生存の再現と神経毒性の軽減が示されれば、Stop-and-Go投与法はL-OHPの新しい標準投与法となる可能性がある。

監訳・コメント:市立堺病院 福永 睦(外科・副理事)

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