演題速報レポート

背景

 過去に行われた進行・再発大腸癌の2nd-line化学療法例を対象とした第III相試験において、FOLFOX4 + Bevacizumab (BEV) はFOLFOX4単独と比較して、OS (overall survival) およびPFS (progression-free survival) を有意に改善させた (OS中央値 12.9ヵ月 vs. 10.8ヵ月:HR=0.75、p=0.0011、PFS中央値 7.3ヵ月 vs. 4.7ヵ月:HR=0.61, p<0.0001)1)
 VEGF trapとして知られているAflibercept (Afl) はVEGF-AとVEGF-B、placental growth factor (PlGF) を阻害する遺伝子組換え融合蛋白製剤である。Oxaliplatin (L-OHP) の投与中もしくは投与終了後に病勢進行した進行・再発大腸癌の2nd-line化学療法例を対象とした無作為化比較第III相試験であるVELOUR試験において、FOLFIRI + AflはFOLFIRI + placeboと比較して有意に有効性を改善させたことが既に報告されている (OS中央値 13.50ヵ月 vs. 12.06ヵ月:HR=0.817, p=0.0032、PFS中央値 6.90ヵ月 vs. 4.67ヵ月:HR=0.758, p=0.00007) 2)。今回は前治療にBEVを使用した症例に焦点を当てて報告された。

対象と方法

 L-OHPの投与中もしくは投与終了後に病勢進行した進行・再発大腸癌患者を対象に、ECOG PSと前治療でのBEV使用歴を割付け調整因子として、FOLFIRI + placebo群とFOLFIRI + Afl (4mg/kg、2週毎) 群とに1:1で無作為に割付けた。前治療としてのBEV使用の有無とAflの有効性 (OSおよびPFS) の関係については、Cox比例ハザードモデルを用いて検討された。

結果

 VELOUR試験への全登録症例1,226例のうち前治療にBEVが使用されていたのは、FOLFIRI + placebo群の187例と、FOLFIRI + Afl群の186例であった。前治療のBEV使用例、未使用例で比較検討すると、おおむね両群の背景因子はバランスがとれていたが、北米ではBEV未使用例が少ない傾向を示した。
 有効性の解析ではBEV使用例のOS中央値は、FOLFIRI + placebo群11.7ヵ月、FOLFIRI + Afl群12.5ヵ月であり (HR=0.862, 95.34%CI: 0.673-1.104)、PFS中央値はFOLFIRI + placebo群3.9ヵ月、FOLFIRI + Afl群6.7ヵ月であった (HR=0.661, 95%CI: 0.512-0.852)。また、BEV未使用例ではOS中央値はFOLFIRI + placebo群12.4ヵ月、FOLFIRI + Afl群13.9ヵ月であり (HR=0.788, 95.34%CI: 0.699-0.927)、PFS中央値はFOLFIRI + placebo群5.4ヵ月、FOLFIRI + Afl群で6.9ヵ月であった(HR=0.797, 95%CI: 0.679-0.936)。

 前治療におけるBEV使用と有効性との関係を検証したところ、PFS (p=0.2)、OS (p=0.57) のいずれにおいても相関は認めなかった。RR (response rate) は、BEV使用例ではFOLFIRI + placebo群8.4%、FOLFIRI + Afl群11.7%であり、BEV未使用例ではそれぞれ12.4%、23.3%であった。
 FOLFIRI + Afl群の治療関連有害事象の発生頻度は前治療でのBEV使用例と未使用例で差はなく、grade 3/4の発生頻度も変わらなかった。

結論

 この事前に予定していた解析の結果より、BEVの使用歴にかかわらず、FOLFIRI + AflがOSとPFSを改善する傾向を示した。また、BEVの使用歴がAflの安全性に影響を与えないことも示した。

コメント

 本報告は、図表の一部がやや異なるものの、既にESMO2011で発表されたものと同一の内容である2) 。今回はBBPの発表 (abst#CRA3503)3)が同時になされていたため、その効果と安全性に関して比較してみると以下の通りである。

 このように治療効果には全く差を認めず、有害事象はわずかにAflの方が強いようである。我が国ではAflは承認が得られていないため、現時点においては、同対象に対してBEVの使用が推奨されるものと考える。

(レポート:結城 敏志 監修・コメント:寺島 雅典)

Reference
  1. 1) Giantonio BJ, et al.: J Clin Oncol. 25(12): 1539-1544, 2007
  2. 2) Josep Tabernero, et al.: ECCO2011: abst #6LBA [ESMO 2011レポート]
  3. 3) Drik Arnold, et al.: 2012 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #CRA3503 [学会レポート]
btn_close

演題速報 デイリーランキング

このサイトは医療関係者の方々を対象に作成しています。
必ずご利用規約に同意の上、ご利用ください。記事内容で取り上げた薬剤の効能・効果および用法・用量には、日本国内で承認されている内容と異なるものが、多分に含まれていますのでご注意ください。