演題速報レポート American Society of Clinical Oncology 48th Annual Meeting 2012 June 1st-5th at CHICAGO,ILLINOIS

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現地座談会

大腸癌に関する注目演題

原発巣切除と肝転移の切除

#3555:TRIP試験

1st-lineにおけるFOLFOXIRI+Panitumumab療法の第II相試験

室:次は、切除が狙える強力な化学療法として計画されたFOLFOXIRI+Panitumumab療法の第II相試験です。中島先生、概要をご紹介ください。

中島:対象はBRAFKRAS 野生型の切除不能大腸癌患者です。1st-lineでFOLFOXIRI+Panitumumab療法を12サイクル投与し、維持療法としてPanitumumab±5-FUをPDまたは不耐となるまで継続するデザインですが、最初に登録された3例中2例でgrade 3/4の下痢と好中球数減少が発現したため、5-FUを3,000mg/m2から2,400mg/m2に減量しました。
 主要評価項目の奏効率は92%と高く、R0切除率は32%、肝転移のみの症例では69%と非常に良好な成績です。しかし、grade 3/4の有害事象も多く[表3]、34例中2例で治療関連死が認められています。結論としては、FOLFOXIRI+Panitumumab療法は高いR0切除率が期待できる有望なレジメンであるものの、毒性マネジメントには注意が必要ということでした。

室:監修された佐藤温先生、いかがですか。

佐藤(温):本試験を実施したGONOでは、以前にFOLFIRIとFOLFOXIRIを比較し、奏効率とPFSは非常に良好でしたが、OSでは有意差が出せませんでした28,29)。以降はFOLFOXIRIを術前補助化学療法として検討していましたが、今回はさらにバイオマーカーで患者を絞って選択した上でPanitumumabを併用し、非常に高い奏効率を達成しました。ただ、34例中17例がgrade 3/4 の有害事象で入院するような状況ですので、毒性の管理が大きな問題になります。奏効率や切除率の点では魅力的なレジメンですが、扱いが難しく、何らかの工夫が必要でしょう。その1つが患者選択であり、もう1つは高い奏効率を手術に結び付けてどれだけのOSが得られるかだと思います。

室:腫瘍縮小に関して最強のレジメンを使った結果、毒性も強かったということだと思います。小松先生はいかがでしょうか。

小松:このレジメンがPDになった後の治療をどうするかが気になるところですが、演者に尋ねたところ、実際にはよい治療法はないが、するならばFOLFIRI+Bev療法を行うということでした。

大村:これだけ強い有害事象が出ているので、術前には使いにくい気がしますね。

Lessons from #3555

  • BRAF / KRAS 野生型の進行・再発大腸癌患者に対し、FOLFOXIRI+Panitumumab療法は高いR0切除率をもたらす強力なレジメンである。
  • 毒性もきわめて強いため、有害事象の管理には細心の注意が求められる。
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