
Abstract #4060
Stage II/III食道扁平上皮癌に対する術前DCF (Docetaxel + Cisplatin + Fluorouracil) 療法のfeasibility study : 最終報告
Final results of a feasibility study of neoadjuvant chemotherapy with docetaxel, cisplatin, and fluorouracil (DCF) for clinical stage II/III esophageal squamous cell carcinoma.
Hiroki Hara, et al.

JCOG9907試験1)の結果より、stage II/III食道扁平上皮癌 (ESCC) に対し、術前CF (Cisplatin [CDDP] + 5-FU) 療法が標準治療とされたが、5年生存率はstage IIで69.7%、stage IIIでは52.1%であり、より有効な治療法の確立が求められている。頭頸部領域では、局所進行扁平上皮癌に対し、CF療法にDocetaxelを追加したDCF療法が生存期間の延長に寄与することが報告されている2, 3)。そこでstage II/III ESCCに対する術前DCF療法のfeasibility study を計画した。
対象はstage II/III ESCCとし、主な適格基準は、前治療歴がない、PS 0-1、年齢20-75歳などとした。治療スケジュールは下記の通りである。

・ | 主要評価項目: 治療完遂率 |
・ | 副次評価項目: overall survival (OS)、progression-free survival (PFS)、response rate (RR)、有害事象など |
44例が登録され、うち2例の不適格を除いた42例を対象とした。主なGrade3/4の有害事象として、好中球減少 (83%)、発熱性好中球減少症 (2%)、食欲不振 (7%)、口内炎 (5%) などが認められたが、許容範囲内であった。
プロトコール治療関連死は認められず、治療完遂率は90.5% (38 / 42例) であった。
42例のうち1例は手術拒否により化学放射線療法 (2%) が行われたが、41例で手術 (98%) が施行された。
画像評価 (RECIST) によるRRは64%、病理学的奏効率 (pathological complete response: pCR) は22%に認められ、JCOG9907試験の結果と比べて良好であった。
また、追跡期間中央値15ヵ月の時点における1年PFSは83%であった。
42例のうち1例は手術拒否により化学放射線療法 (2%) が行われたが、41例で手術 (98%) が施行された。
画像評価 (RECIST) によるRRは64%、病理学的奏効率 (pathological complete response: pCR) は22%に認められ、JCOG9907試験の結果と比べて良好であった。
また、追跡期間中央値15ヵ月の時点における1年PFSは83%であった。

Stage II/III ESCC に対する術前DCF療法は忍容性が高く、feasibleであった。
JCOG9907試験の結果1)より、本邦におけるstage II/III食道扁平上皮癌に対する標準的治療は、CDDP + 5-FU (CF) 療法×2コースによる術前化学療法 (NAC: neoadjuvant chemotherapy) →手術となった。しかしながらstage別にその効果をみてみると、stage IIにおいてはCF療法によるNACの効果が期待できるが、stage IIIにおいてはその効果が乏しいことが明らかとなり、強力なレジメンの開発が望まれていた。
今回、JCOG食道癌グループによるNACとしてのDCF療法→ 手術のfeasibility studyの結果が報告されたが、多くの症例でdown stagingが認められ、またその忍容性も良好であった。この結果を受けてJCOGでは、術前治療としてのCF療法 vs. DCF療法 vs. CF療法 + 放射線療法 (RT) の第III相試験が計画されている。欧米では、進行食道癌に対し、術前のCF療法 + RTが多くの施設で行われており、本邦でもその効果を併せて検証するデザインとなっている。この試験結果は、術前補助療法として現状考えうるベストの治療法が決定づけられるものとなるであろう。
その一方で、腫瘍内科の研究者間では、DCF療法によるinduction chemotherapyによって良好なresponseが得られた場合、引き続きdefinitive chemoradiotherapy (CF療法 + RT) による手術抜きの治療戦略も第II相試験で検討中である。現状、食道癌に対しては、DCF療法しか新たな治療オプションがなく、今後しばらくはDCF療法を中心にした臨床試験が展開されるものと思われる。
今回、JCOG食道癌グループによるNACとしてのDCF療法→ 手術のfeasibility studyの結果が報告されたが、多くの症例でdown stagingが認められ、またその忍容性も良好であった。この結果を受けてJCOGでは、術前治療としてのCF療法 vs. DCF療法 vs. CF療法 + 放射線療法 (RT) の第III相試験が計画されている。欧米では、進行食道癌に対し、術前のCF療法 + RTが多くの施設で行われており、本邦でもその効果を併せて検証するデザインとなっている。この試験結果は、術前補助療法として現状考えうるベストの治療法が決定づけられるものとなるであろう。
その一方で、腫瘍内科の研究者間では、DCF療法によるinduction chemotherapyによって良好なresponseが得られた場合、引き続きdefinitive chemoradiotherapy (CF療法 + RT) による手術抜きの治療戦略も第II相試験で検討中である。現状、食道癌に対しては、DCF療法しか新たな治療オプションがなく、今後しばらくはDCF療法を中心にした臨床試験が展開されるものと思われる。
(レポート:松阪 諭 監修・コメント:瀧内 比呂也)


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