Abstract #4510

A randomized trial of postoperative adjuvant chemotherapy with cisplatin and 5-fluorouracil versus neoadjuvant chemotherapy for clinical stage II/III squamous cell carcinoma of the thoracic esophagus (JCOG 9907).


H. Igaki, et al.

背景と目的

第III相試験であるJCOG9204試験により、食道扁平上皮癌に対し5-FU + cisplatin(FP)を用いた術後補助化学療法を施行した群が、手術単独群と比較してDFSにおいて有意に優れていることが示された(Ando N, et al., J Clin Oncol. 2003)。今回報告するJCOG9907試験は、5-FU + cisplatinによる術後補助化学療法のより効果的な施行時期を評価することを目的とした。

対象と方法

UICC臨床stage II/IIIで(T4を含む)75歳未満のPS 0-2の食道扁平上皮癌患者を無作為化した。 無作為化のシェーマを示す。

Post群(術後FP群)においては、経胸的食道切除術とリンパ節郭清を施行した後に、FP療法を2コース施行した。Pre群(術前FP群)においては、Post群と同じ化学療法を術前に施行した。
一次エンドポイントはPFS、二次エンドポイントはOS、完全切除率(R0)、有害事象、術後合併症/死亡とした。

結果

2000年5月〜2006年5月の間に、24施設からの330人の患者を無作為化した(Post群/Pre群; 166/164, cN0/N1; 112/218)。年齢中央値は61/61歳であった。毒性と合併症は2群間で有意な相違は認められなかった。治療関連死亡は両群とも1例ずつ認めた。
Pre群のRRは37.8%(62/164)で、CR 4 / PR 58 / SD 88 / PD 5 / NE 9であった。 2007年3月に施行された第2回中間解析の結果を示す。

PFSにおける、Pre群のPost群に対するハザード比は0.76、log rank p=0.0444であったために、中止基準(p<0.0254; O'Brien & Fleming alpha spending function)には達しなかったが、Pre群はOSにおいて有意に優れていた(ハザード比 0.64, 95% CI: 0.45-0.91, two-sided p = 0.014)。このために効果安全性評価委員会は早期の公表を推奨した。

サブグループ解析の結果、術前FP療法はstage IIIよりもstage IIに対してより有用性が高いことが示唆された。


その理由として術前FPは、down-stagingやR0 resectionをもたらすためと推測された。


結論

術前FP療法は術後FP療法に比較して食道扁平上皮癌stage II/IIIのOSを改善した。また重篤な有害事象を認めなかった。術前FP療法によりdown-stagingとR0 resectionが可能となり、食道扁平上皮癌stage II/IIIの治療として有益である。

コメント

これまでにも欧米では食道癌に対するneoadjuvant chemotherapyの多くの臨床試験の成績が報告されてきたが、成績は日本と比較して悪く、また扁平上皮癌と腺癌が混在していること、および外科手術も開胸切除郭清、非開胸食道抜去が混在していることにより、厳密に計画された比較試験が求められてきた。本第III相試験は日本発信の画期的な報告である。この結果を踏まえて、Stage II/IIIの食道癌治療はneoadjuvant chemotherapyを施行することが標準になるものと思われる。

(レポート・コメント:高石 官均  監修:久保田 哲朗)