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演題速報レポート

Non-colorectal Cancer
Abstract #4013
Stage II/III胃癌の予後因子としてのEGFR、HER2 -ACTS-GC試験の追加解析-
Impact of human epidermal growth factor receptor (EGFR) and ERBB2 (HER2) expressions on survival in patients with stage II/III gastric cancer, enrolled in the ACTS-GC study.
Masanori Terashima, et al.
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背景と目的
 ACTS-GC試験はstage II/III胃癌根治切除例に対する術後補助S-1療法の有効性を証明した試験である1, 2)。胃癌においてEGFR、HER2の発現は予後不良因子と考えられているが、臨床的意義は不明である。今回、ACTS-GC試験に登録された症例を対象にEGFR、HER2の発現と予後との関連を検討した。
対象と方法
 対象: ACTS-GC試験に登録された1,059例中、手術検体のホルマリン固定標本が得られた829例。
 方法: EGFR蛋白発現、HER2蛋白発現はIHC (immunohistochemistry) 、HER2遺伝子増幅はDISH (dual-color in-situ hybridization) を用いて検討した。EGFRに関してはIHC3+、HER2はIHC3+ またはIHC2+/DISH+ を陽性として扱った。
 評価項目: EGFR発現、HER2発現の有無におけるOS (overall survival)、RFS (relapse-free survival)
結果
 全体ではEGFR陽性を75例(9%、S-1群/手術単独群: 35/40例) 、陰性を754例(380/374例) 、HER2陽性を113例(13.6%、58/55例) 、陰性を716例(357/359例) に認めた。EGFR陽性例の59.5%、HER2陽性例の75.2%が分化型癌であった(各p<0.0001、p<0.001) 。
 OSに関するEGFR発現の有無による単変量解析は全体ではHR 1.642、p=0.008 (5年OS: EGFR陽性例55.4%、陰性例69.0%) 、S-1群でHR 1.787、p=0.043(各60.0%、74.9%) と有意にEGFR陽性例が不良であったが、手術単独群ではHR 1.514、p=0.091(各51.2%、63.1%) と有意差は認めなかった。同様にRFSに関する単変量解析においても、全体およびS-1群のEGFR陽性例で不良であった。HER2発現の有無に関する検討では、OS、RFSともに有意差は認めなかった。
Kaplan-Meier plot of OS for all patients according to the EGFR status
 治療、性別、年齢、stage、組織型、EGFR、HER2を含んだ多変量解析では手術単独、高齢、進行stage、EGFR陽性(HR=1.504; 95%CI: 1.020-2.149; p=0.04) が有意な予後不良因子であった。
Multivariate analysis of OS
結論
 今回の検討においてEGFR発現と予後との関連を認めたが、HER2発現と予後との関連は認めなかった。
コメント
 従来から胃癌におけるEGFR、HER2の発現は、予後不良因子か否かが議論されてきた。今回の米国臨床腫瘍学会年次集会において、HER2発現が予後不良因子となるか否かの探索的な検討結果が本演題を含めて4演題報告され、韓国からの単施設の報告 (abstract #4084)を除けば、HER2発現は予後不良因子とはならないことでデータが一致した (abstract #4012, 4014)。ToGA試験において、HER2陽性胃癌に対するTrastuzumabの有効性が認められ、今春より実際の臨床現場でHER2陽性切除不能進行・再発胃癌に対して使用可能となった。今後我が国においても乳癌と同様に、Trastuzumabの術後補助療法への展開が期待されるが、乳癌におけるHER2発現の意義とは異なることに留意する必要がある。ACTS-GC試験におけるHER2陽性胃癌の再発形式を含めた更なる詳細な検討が必要であろう。
 その一方で、EGFR発現は予後不良因子であることが今回の検討から強く示唆された。現在抗EGFR抗体薬であるCetuximabがEXPAND試験において、HER1およびHER2のdual inhibitorであるLapatinibがLOGiC試験、TYTAN試験において検証されている。これら抗EGFR抗体薬の効果が検証された場合、次のステップとして術後補助療法への展開が期待される。
(レポート: 山ア 健太郎 監修・コメント: 瀧内 比呂也)
Reference
1) Sakuramoto S, et al.: N Engl J Med. 357(18): 1810-1820, 2007 [PubMed]
2) Sasako M, et al.: ESMO2010: abst #709PD [ESMO 2010レポート]
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