Abstract #LBA4

Stage II/III結腸癌患者に対する術後補助化学療法mFOLFOX6とmFOLFOX6+bevacizumabを比較した第III相試験結果:NSABP Protocol C-08

A phase III trial comparing mFOLFOX6 to mFOLFOX6 + bevacizumab in Stage II or III carcinoma of the colon: Results of NSABP Protocol C-08


Norman Wolmark, et al.

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背景

FOLFOX+bevacizumab併用療法は、NCCNガイドラインの進行・再発大腸癌治療の1st-lineに位置づけられている。2008年 米国臨床腫瘍学会年次集会において、NSABP C-08試験の安全性評価が報告され、bevacizumabによる有害事象が増加するものの、忍容性は高いことが示された(2008年 米国臨床腫瘍学会年次集会 Abstract #4006)。本年は、期待されていた術後補助化学療法の治療成績が発表された。

対象と方法

2004年9月〜2006年10月の間に、2,672例の対象患者を無作為にmFOLFOX6とmFOLFOX6+bevacizumabに割り付けた。

mFOLFOX6群(1,338例):L-OHP 85mg/m2 + LV 400mg/m2 + 5-FU bolus 400mg/m2 + infusion 2,400mg/m2 2週毎に1回、12サイクル(6ヵ月)。
mFOLFOX6+bevacizumab群(1,334例):上記mFOLFOX6に加え、bevacizumab 5mg/kg iv 2週毎に1回で12サイクル(6ヵ月)。さらにbevacizumab 5mg/kg単独を6ヵ月追加投与。
NSABP C-08

一次エンドポイントはDFSである。

結果

患者背景はmFOLFOX6/mFOLFOX6+bevacizumab群で、60歳未満 58.3/58.2%、男性49.8/49.9%、Stage II 24.9/24.9%、Stage III (1-3) 45.4/45.5%、Stage III(4+) 29.7/29.6%で両群に差は認められなかった。追跡調査期間の中央値は36ヵ月である。
3年DFSはmFOLFOX6群75.5%、mFOLFOX6+bevacizumab群77.4%(HR: 0.89、95%CI: 0.76-1.04、P=0.15)であり、両群に有意差を認めなかった。しかしながら、1年目まではDFS(HR: 0.60、P=0.0004、両群間の差3.6%)に一時的な効果が認められた。

NSABP C-08:DFS
結論

mFOLFOX6にbevacizumabを加えても、DFSの有意な延長にはつながらなかった。観察期間1年目まではDFSに一時的な効果が認められた。Bevacizumab長期投与の臨床的有用性を評価するには新たな試験が必要と考えられた。

コメント

2009年 米国臨床腫瘍学会年次集会(消化器領域)において最も注目された演題である。今回の発表により、bevacizumabという薬剤の本質が明らかになってきた気がする。Discussantも述べていたように、bevacizumab単独では治療効果を示さないことが、2nd-line治療のECOG E3200試験(Giantonio BJ, et al., J Clin Oncol., 2007)で既に示されている。また、NO16966試験ではFOLFOX療法に対するbevacizumab併用による奏効率の上乗せは全く認められなかった(2007年 米国臨床腫瘍学会年次集会 Aabstract #4028)。これらのデータから、bevacizumabはまさしくcytostatic drugであることを意味している。あくまでも術後補助化学療法の目的はdormancyではなくcureである。FOLFOXに対して奏効率の上乗せが認められなかったbevacizumab併用は、本試験結果が示すように、FOLFOX終了後にbevacizumab単独を継続投与することによって、残存腫瘍が顕性化するまでの時期をただ遅らせていただけなのかもしれない。
もう1本行われているAVANT試験の結果によって、bevacizumabの術後補助化学療法におけるpositioningも自ずと決まってくるだろう。今回の結果からは、同じ分子標的治療薬でも、確実に奏効率の上乗せが認められるcetuximabへの期待が高まったことは言うまでもない。近い将来発表が予定されているNCCTG N0147試験およびPETACC-8試験の結果を楽しみに待ちたい。

(コメント・監修:瀧内 比呂也)