慶應義塾大学病院では、2003年より包括先進医療センターを開設し、癌患者の外来化学療法、癌検診を中心とした上部・下部内視鏡検査、CT・MRI検査の遠隔画像診断などを集中して行っています。開設後3年目になる2005年11月までの受療患者総延べ人数はおよそ12,000名(抗癌剤投与のみ)になります。現在は消化器内科、一般・消化器外科(乳癌を含む)、血液内科、呼吸器内科・外科など全27診療科のうち9科を対象としていますが、将来的にはその他の科も参入を希望しており、外来化学療法の専門センターとしてさらに充実していくことが期待されます。患者のQOL向上はもちろんのこと、包括医療評価制度(DPC)の導入による病院経営の変化も後押しして、癌化学療法の外来化は今後さらに進展することが予想されます。今回はこれから外来化学療法専門施設を開設する場合のアドバイスを含め、センター長である久保田哲朗先生、運営に携わる医師、看護師の方々にお話を伺いました。
Q. 開設までの経緯をお教えください。
A: DPC導入をきっかけとして、医療経済上のメリットおよび各診療科の化学療法の統一を目的に、2003年4月、包括先進医療センターの中の1部門として、旧癌検診センターを改装して開設しました。包括先進医療センターには、ほかに内視鏡部門と遠隔画像部門がありますが、将来的には移転して外来化学療法部門として独立することがすでに決まっています。
Q. 患者数と、臓器別の比率などの患者構成はどのようになっていますか。
A: 現在、治療を受けている患者さんは月に500〜600名になります。開設して3年目になりますが、毎年、患者数は前年の約1.4倍に増加し、過去1年間の平均は6,000名、また、入院と外来の比率は、診療科により異なりますが、平均して入院:外来が2:3となっています。
グラフ1:臓器別延べ患者数比率
Q. 患者さんの受療の流れを説明していただけますか。
A: 各診療科の主治医から当センターに外来化学療法のオーダーが入ります。当日は、患者さんはまず採血を済ませ、その結果をもとに主治医の診察を受けます。投与に問題がないと判断されれば調剤の指示が出され、それに従って2名の専任薬剤師がセンター内で抗癌剤を調剤し、患者さんに投与されることになります。主治医のOKが出てからは、お待たせすることはほとんどないのですが、採血や診察などは癌治療以外の多くの患者さんと一緒に行われますから、その過程でどうしても待ち時間が長くなってしまうのが悩みの種です。
図1:受療・オーダーフローチャート
Q. 院内プロトコールとそのオーダー方法はどうなっていますか。
A: 現在、約200種類のプロトコールが登録されています。コンピュータによるオーダーシステムがありますので、各診療科の医師が身長・体重を入力すれば、体表面積から投与量が算出されます。投与量、投与スケジュールは、医師の判断による自由度の高い選択が可能となっていますが、致死的過剰投与量が入力された場合にはコンピュータチェックによりオーダーが停止されます。またプロトコール数をあまり緩和しすぎると、薬剤師・看護師の負担増やミスの発生などの問題も出てきます。そこで、プロトコールの調整は薬剤師や看護師とも相談して行っています。オーダーは基本的には前日までに出すことになっていますが、当日でも受け付けています。プロトコール外の治療を希望する場合は、新たにプロトコールを登録してから実施することになります。もちろん、その際は定期的に開催されているプロトコール委員会による審査が必要です。