WEBカンファレンス | 臨床の場で遭遇しうる架空の症例に対して、それぞれの先生方に治療方針をご提示いただき、日常診療における治療方針の選択にあたっての問題点等を議論していただいています。

CASE 17 大腸癌肝転移に対する化学療法(プレオペラティブケモセラピー)2009年4月開催

CASE17 写真

私が考える治療方針

大村先生

D3郭清後にsLV5FU2を実施し、手術創の治癒後に
L-OHPとbevacizumabを上乗せ

巨大な肝転移巣を有する症例と考えられます。貧血を認めることより、腫瘍から出血していると判断し、まず切除を選択します。原発巣の結腸右半切除(D3郭清)を行い、術後は完全に手術創が治癒するまでsLV5FU2を、その後L-OHPとbevacizumab(bev)を上乗せします。
第二の選択肢として、術前化学療法を実施後、原発巣と肝転移巣を同時に切除するという治療法も考えられます。術前化学療法としては、肝転移巣を切除可能にする率が高いmFOLFOX6+bevを選択します。ただし、bevは手術創の治癒を遅延させる可能性も考えられるため、手術可能と考えられた時点でbevを休止し、mFOLFOX6のみにした後に手術に臨みます。

大村先生 写真

瀧内先生

肝転移巣切除を目標に、術前化学療法としてmFOLFOX6+bevを選択

本症例はPS良好で、年齢も若いことから、遺残腫瘍なし(R0)の肝転移巣切除を目標に、術前化学療法を行います。その場合、生化学的検査の結果より、合併症の問題がないことから、現在我が国で使用できる治療法のなかでは、mFOLFOX6+bevがベストの選択といえます。実際、First BEAT試験では、L-OHPベースのレジメンにbevを加えた治療により、15%を超える肝切除率が得られています1)。また今後、cetuximabが1st-lineで使用できるようになった場合には、KRAS statusによっては、FOLFIRIあるいはFOLFOX+cetuximabもよい選択肢の1つになると思います。

瀧内先生  写真

佐藤先生

切除に持ち込めるか否かの判断が重要。増殖速度が速い場合は術前化学療法を実施

右側腹部に腫瘤が触知することから、かなり大きな腫瘍と予測されるため、まず切除に持ち込めるか否かの判断が重要です。狭窄や出血の有無、周囲の浸潤の広さをみて、その結果、「まず原発巣を切除し、術後化学療法を実施する」のか、または「術前化学療法後に、原発巣と肝転移巣を同時に切除する」のかを判断します。我々が最も注意するのは、腫瘍の増殖速度と広がりの2点です。特に、増殖速度が速い場合は、術前に化学療法を行います。その場合は、やはり肝切除率の高さから、FOLFOX+bevを選択します。

佐藤先生 写真

坂本先生

術前化学療法を考慮し、FOLFOX+bevを選択

CTで肝臓の両葉に9個の転移性病変を認めること、大腸の原発巣による閉塞症状がみられていないことから、進行大腸癌ではあるものの1st-choiceとしての手術適応ではないと考え、まず、術前化学療法を考慮します。年齢が若く、PSも良好なため、FOLFOX+bevを4-6コース行い、CTで病変に対する効果を判定した後、bevの影響が減少する1ヵ月後あたりに、原発巣の切除と、可能であれば残存肝転移巣の切除 and/or 腫瘍焼灼術を行います。
術後はRの如何にかかわらず、全身状態をチェックしながら、LV5FU2もしくはFOLFIRI(UGT1A1の*28, *6の異常がないことを確認した上で)を施行します。さらに、EGFR陽性でかつKRAS 野生型であれば、上記の術後補助化学療法にcetuximabを加えることを検討します。

坂本先生 写真
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